深い深い海の… 〜19〜
目が覚めた時…。
ここは…どこだろう…?
ここは天国…?
それとも…?
ボーーッとした頭で考えていた…。
でも上に見えのは、何だか見覚えの天井で…。
顔を横に向けると何だか見覚えのある部屋で…。
ああ…此処は…。
此処は…俺の…家のベッドの上だ…。
って…。
嘘っ!?
夢っ!?
俺生きてるのっ!?
俺、翔くんに翔くんの心臓の半分を返した後、海の魔物に食べられちゃったんじゃないのっ!?
ほっぺをつねってみると…。
「いたっ!!」
確かに痛かったのだ…。
夢にしてはやけにリアルな夢だったな…。
と思いながら、いつも眠る時と起きた時には俺の隣にある筈の温もりを手を動かして探すが…。
見つからない…。
翔くんも…夢だったのかな…?
と思った瞬間、伸ばした指先には柔らかい感触があり、グイッと握り引き寄せるとそれは可愛らしい顔をしたリスの抱き枕だった。
この子…翔くんの為に買ってあげた子だっ!!
翔くんは居るの…?
夢じゃないの…?
ベッドから起きあがろうと身体を起こすと、ズキンッと左胸に痛みが走り、
「いったぁー…。」
と呟くと、誰かが部屋のドアを開けたかと思うと、ガシャンッ!!とグラスを落とすような音がし、その人は俺の元へと駆け寄ってきたのだ。
「潤…。
やっと…目が覚めたんだね…。」
その人は痛む俺の左胸をそっと優しくさすってくれながら、
「痛い…?
大丈夫?」
と俺の顔を覗き込んできたのだ…。
二重でクルリとした大きな目で、ぷっくりとした唇の可愛くて綺麗な人…の顔が俺の目の前にあり…。
其処に居たのは…。
「翔…く…ん…?」
翔くん、その人だった…。
「うん…?
どうした?」
と翔くんは、大きくて綺麗な瞳で優しく俺を見つめてきた。
「翔くん…。
無事だったんだね…。」
よくよく見ると翔くんの足はお魚の足ではなく人間の足になっており、しかも車椅子ではなく自分の足で立っていたのだ。
「また和也くんの薬で、人間の足に見えるの?」
と聞くと、翔くんはフルフルと顔を横に振り、
「俺。
潤さんの愛の力で人間になる事が出来たんだよ。
これは本物の人間の足なんだ。」
と嬉しそうに微笑みながら、足を持ち上げて俺に見せてくれたのだった。
「俺の…愛の…力…?」
「そうだよ…。
あの時の潤さん俺の事を、『愛してるよ。』って言ってくれたよね?」
翔くんにそう言われて…。
そういえば俺、そんなこと言ったよ…ね…。
思い出すと恥ずかしくなってしまい…。
「うん…言ったけど…。」
思わず小声になってしまった。
すると、
「えっ…。
あれは嘘だったの…。」
悲しそうな顔をする翔くんに、
「嘘なんかしゃないよ。
俺…本当に翔くんの事を…愛してるから…。」
と言うと翔くんは満足そうな顔をして、
「俺も潤さんの事を愛しているよ。」
そう言うと翔くんは俺にチュッと唇を重ねたのだった。
そっと翔くんの唇が離れていき…。
は、恥ずかしい…。
両手で顔を覆っていると、
「ちょっと、翔ちゃんっ!!
病み上がりの人を襲ってるんじゃないよっ!!」
と和也くんの声が聞こえた。
「うるさい和っ!!
大体、誰のせいで潤さんが病み上がりになってると思ってんだよっ!!」
「そりゃあ、翔ちゃんのせいでしょう?
翔ちゃんを助ける為だったんだから。」
戯けてそう言う和也くんに、翔くんが眉間に皺を寄せて、
「和、お前ふざけるなっ!!」
そう言いながら和也くんに詰め寄ると、和也くんの後ろに居た雅紀くんが、
「まあ、まあ、まあ。
翔ちゃんも和くんも喧嘩しないでよー。
潤ちゃん、目を覚ましたばっかりなのに。
ビックリしちゃってるよー。
ほらー。」
と雅紀くんが俺を指さすと、それまで揉めていた翔くんと和也くんが、
「「あ…。
煩くして……ごめんなさい…。」」
と気まずそうに謝ってきたのだ。
「ふふふふふ。
大丈夫だよ。
ただちょっと夢と現実がごっちゃになってるけど…。」
と言うと翔くんが、
「潤さん、夢じゃないよ。
全部現実だったんだよ。」
と言うのを聞いた俺は翔くんと和也くんのやり取りを微笑ましく見ていたのだが…。
夢だと思っていた和也くんのあの冷たい瞳を思い出して、
「ひっ!!」
と和也くんから隠れるように布団を被ると、雅紀くんが、
「ほら、和くん。
潤ちゃんにちゃんと謝らないとっ!!」
と言い和也くんの背中をバンッ!!と押した。
すると和也くんが俺居るベッドの近くまで来て、
「潤くん…本当にごめんなさい…。」
と言いながら頭を下げてきたのだ。
「俺…本気で潤くんの命を奪うつもりはなかったんですよ…。
でも本当にごめんなさい…。」
いつも自信満々の和也くんがしゅんとしながらそう言った。
和也くんの顔を恐る恐る見上げると、
「潤くん…少しだけ俺の話しを聞いてもらえますか?」
色素の薄い茶色の綺麗な瞳を不安そうに揺らしながら、和也くんはそう言った。
その和也くんの姿を見ていると…。
怖がらずにちゃんと和也くんの話しを聞かなくては…と思い、俺はコクンと頷いたのだ。
和也くんは床に跪くと俺の目を見ながら、
「あのままだと翔ちゃんが海の泡になって消えてしまうのは本当の話で…。」
と話し始めたのだった。
25年前、潤くんを助ける為にハートの鱗をあげてしまった翔ちゃんは深い深い海の底に閉じ込められてしまったんた。
禁を犯した翔ちゃんは5年間…人間の世界では25年間深くて暗い海の底に閉じ込められて、その25年後の自分の誕生日には禁を犯した罰として海の泡となって消えてしまうんだったんだ…。
だけども翔ちゃんの場合は人助けをしていて悪い事をしている訳ではないので、自分の誕生日の前の100日間猶予を貰ってその間に翔ちゃんが自分の心臓を取り戻せば海の泡となり消え去るのを逃れる事が出来たんだ…。
自分の心臓の半分を人間にあげてしまっているので…。
その為には翔ちゃんの心臓の半分を与えてあげた人間の…潤くんの心臓をあの短剣で刺さなければいけなくて、それが出来なければ翔ちゃんは海の泡となり消えていく運命だったんです…。
翔ちゃんの気持ちはもう決まっていて、翔ちゃんは海の泡となりそのまま消え去る事を選んでいたんだけど…。
「…だけど…もう一つだけ翔ちゃんが助かる方法が本当はあったんですよ。」
と和也くんがチラッと翔くんを見ると翔くんは、
「和、お前…。
知ってたのかよっ!?」
と此方へ来ようとしたのだが雅紀くんに、
「翔ちゃん。
和くんの話しをちゃんと聞いてあげてよ。」
と肩を掴まれてその場に留ったが…。
翔くんは、眉間に皺を寄せて和也くんを睨みつけていたのだった。
⭐to becontinued⭐
深い深い海の… 〜19〜
目が覚めた時…。
ここは…どこだろう…?
ここは天国…?
それとも…?
ボーーッとした頭で考えていた…。
でも上に見えのは、何だか見覚えの天井で…。
顔を横に向けると何だか見覚えのある部屋で…。
ああ…此処は…。
此処は…俺の…家のベッドの上だ…。
って…。
嘘っ!?
夢っ!?
俺生きてるのっ!?
俺、翔くんに翔くんの心臓の半分を返した後、海の魔物に食べられちゃったんじゃないのっ!?
ほっぺをつねってみると…。
「いたっ!!」
確かに痛かったのだ…。
夢にしてはやけにリアルな夢だったな…。
と思いながら、いつも眠る時と起きた時には俺の隣にある筈の温もりを手を動かして探すが…。
見つからない…。
翔くんも…夢だったのかな…?
と思った瞬間、伸ばした指先には柔らかい感触があり、グイッと握り引き寄せるとそれは可愛らしい顔をしたリスの抱き枕だった。
この子…翔くんの為に買ってあげた子だっ!!
翔くんは居るの…?
夢じゃないの…?
ベッドから起きあがろうと身体を起こすと、ズキンッと左胸に痛みが走り、
「いったぁー…。」
と呟くと、誰かが部屋のドアを開けたかと思うと、ガシャンッ!!とグラスを落とすような音がし、その人は俺の元へと駆け寄ってきたのだ。
「潤…。
やっと…目が覚めたんだね…。」
その人は痛む俺の左胸をそっと優しくさすってくれながら、
「痛い…?
大丈夫?」
と俺の顔を覗き込んできたのだ…。
二重でクルリとした大きな目で、ぷっくりとした唇の可愛くて綺麗な人…の顔が俺の目の前にあり…。
其処に居たのは…。
「翔…く…ん…?」
翔くん、その人だった…。
「うん…?
どうした?」
と翔くんは、大きくて綺麗な瞳で優しく俺を見つめてきた。
「翔くん…。
無事だったんだね…。」
よくよく見ると翔くんの足はお魚の足ではなく人間の足になっており、しかも車椅子ではなく自分の足で立っていたのだ。
「また和也くんの薬で、人間の足に見えるの?」
と聞くと、翔くんはフルフルと顔を横に振り、
「俺。
潤さんの愛の力で人間になる事が出来たんだよ。
これは本物の人間の足なんだ。」
と嬉しそうに微笑みながら、足を持ち上げて俺に見せてくれたのだった。
「俺の…愛の…力…?」
「そうだよ…。
あの時の潤さん俺の事を、『愛してるよ。』って言ってくれたよね?」
翔くんにそう言われて…。
そういえば俺、そんなこと言ったよ…ね…。
思い出すと恥ずかしくなってしまい…。
「うん…言ったけど…。」
思わず小声になってしまった。
すると、
「えっ…。
あれは嘘だったの…。」
悲しそうな顔をする翔くんに、
「嘘なんかしゃないよ。
俺…本当に翔くんの事を…愛してるから…。」
と言うと翔くんは満足そうな顔をして、
「俺も潤さんの事を愛しているよ。」
そう言うと翔くんは俺にチュッと唇を重ねたのだった。
そっと翔くんの唇が離れていき…。
は、恥ずかしい…。
両手で顔を覆っていると、
「ちょっと、翔ちゃんっ!!
病み上がりの人を襲ってるんじゃないよっ!!」
と和也くんの声が聞こえた。
「うるさい和っ!!
大体、誰のせいで潤さんが病み上がりになってると思ってんだよっ!!」
「そりゃあ、翔ちゃんのせいでしょう?
翔ちゃんを助ける為だったんだから。」
戯けてそう言う和也くんに、翔くんが眉間に皺を寄せて、
「和、お前ふざけるなっ!!」
そう言いながら和也くんに詰め寄ると、和也くんの後ろに居た雅紀くんが、
「まあ、まあ、まあ。
翔ちゃんも和くんも喧嘩しないでよー。
潤ちゃん、目を覚ましたばっかりなのに。
ビックリしちゃってるよー。
ほらー。」
と雅紀くんが俺を指さすと、それまで揉めていた翔くんと和也くんが、
「「あ…。
煩くして……ごめんなさい…。」」
と気まずそうに謝ってきたのだ。
「ふふふふふ。
大丈夫だよ。
ただちょっと夢と現実がごっちゃになってるけど…。」
と言うと翔くんが、
「潤さん、夢じゃないよ。
全部現実だったんだよ。」
と言うのを聞いた俺は翔くんと和也くんのやり取りを微笑ましく見ていたのだが…。
夢だと思っていた和也くんのあの冷たい瞳を思い出して、
「ひっ!!」
と和也くんから隠れるように布団を被ると、雅紀くんが、
「ほら、和くん。
潤ちゃんにちゃんと謝らないとっ!!」
と言い和也くんの背中をバンッ!!と押した。
すると和也くんが俺居るベッドの近くまで来て、
「潤くん…本当にごめんなさい…。」
と言いながら頭を下げてきたのだ。
「俺…本気で潤くんの命を奪うつもりはなかったんですよ…。
でも本当にごめんなさい…。」
いつも自信満々の和也くんがしゅんとしながらそう言った。
和也くんの顔を恐る恐る見上げると、
「潤くん…少しだけ俺の話しを聞いてもらえますか?」
色素の薄い茶色の綺麗な瞳を不安そうに揺らしながら、和也くんはそう言った。
その和也くんの姿を見ていると…。
怖がらずにちゃんと和也くんの話しを聞かなくては…と思い、俺はコクンと頷いたのだ。
和也くんは床に跪くと俺の目を見ながら、
「あのままだと翔ちゃんが海の泡になって消えてしまうのは本当の話で…。」
と話し始めたのだった。
25年前、潤くんを助ける為にハートの鱗をあげてしまった翔ちゃんは深い深い海の底に閉じ込められてしまったんた。
禁を犯した翔ちゃんは5年間…人間の世界では25年間深くて暗い海の底に閉じ込められて、その25年後の自分の誕生日には禁を犯した罰として海の泡となって消えてしまうんだったんだ…。
だけども翔ちゃんの場合は人助けをしていて悪い事をしている訳ではないので、自分の誕生日の前の100日間猶予を貰ってその間に翔ちゃんが自分の心臓を取り戻せば海の泡となり消え去るのを逃れる事が出来たんだ…。
自分の心臓の半分を人間にあげてしまっているので…。
その為には翔ちゃんの心臓の半分を与えてあげた人間の…潤くんの心臓をあの短剣で刺さなければいけなくて、それが出来なければ翔ちゃんは海の泡となり消えていく運命だったんです…。
翔ちゃんの気持ちはもう決まっていて、翔ちゃんは海の泡となりそのまま消え去る事を選んでいたんだけど…。
「…だけど…もう一つだけ翔ちゃんが助かる方法が本当はあったんですよ。」
と和也くんがチラッと翔くんを見ると翔くんは、
「和、お前…。
知ってたのかよっ!?」
と此方へ来ようとしたのだが雅紀くんに、
「翔ちゃん。
和くんの話しをちゃんと聞いてあげてよ。」
と肩を掴まれてその場に留ったが…。
翔くんは、眉間に皺を寄せて和也くんを睨みつけていたのだった。
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