深い深い海の…  〜11〜
















暫く翔くんの綺麗な瞳をジッと見つめていると…。











「おーい…。
お前らアツアツなのはいいけど、俺も居るんだけどな…。」


と大野さんがボソッと呟いた。



その声で俺はハッとして慌てて翔くんの手を離すと、翔くんが何だか悲しそうな顔をした様な気がしたんだけど…。






だけど大野さんが余計な事を言うから…。






「な、な、な、何言ってんのっ!?」


と大野さんにそう言いながら自分が顔が熱くなるのを感じていた。





これ絶対に顔が赤くなってるよね…?




翔くんに自分の気持ちが気付かれそうな気がして…。


そんなの絶対に翔くんが迷惑だからバレてはいけない、と思い慌てて、



「お、大野さん、夕飯は食べてきたの?」


と極力翔くんの方を見ない様にして大野さんにそう聞くと、大野さんは、




「んにゃ、まだだ。」



と答えたので、




「今、夕飯作っていた所だから、大野さんの分も作るから食べて行ってよ。
今夜は泊まるでしょう?」



と言うと、



「そのつもりで来たんだけど…。
迷惑じゃないのか?」



なんてらしくない事を言ってくるもんだから、




「いいじゃんっ!!
泊まっていってよっ!!」




と言うと、



「じゃあ、そうするか。」




と大野さんはふんわりと笑った。








「じゃあ、俺は夕飯の支度をするね。」



と言うと翔くんとなるべく目が合わないようにして、キッチンへと向かったのだ。
















キッチンに戻るとキッチンの壁に背中から寄っ掛かると、





「ハァーーーッ。
危なかった…。」


と両手で顔を覆ってそう呟いた。








翔くんの事は好き。


だけど男の俺に好きだと言われてもきっと翔くんは困ってしまうと思うし、今後もずっと翔くんとは逢いたいから…。




明日は和也くんが翔くんを迎えに来ると言っていた日なんだ。



だから絶対に翔くんに俺の気持ちがバレないようにしなければいけない。




そうすれば翔くんが和也くんの所に戻った後も、いつも翔くんと逢っていた海の近くにあるあの場所で翔くんに逢う事が出来るんだ。




もしも翔くんに俺の好きだという気持ちがバレてしまって翔くんに逢えなくなるくらいなら、例え片想いだとしてもそれでも俺は構わない。



今後も翔くんに逢う事が出来るのなら…。



それでいいんだ…。






頑張れ俺っ!!



パンッと頬を両手で叩き気合いを入れてみた。




「さてと…。
続きを作りますか…。」


と呟き、料理の続きを作ることにした。


今夜は翔くんと過ごす最後の夜だから、翔くんの好きな料理を沢山作ってあげるんだ。



雑念を捨てて料理を作る事に専念をした。

























「出来たっ!!」



料理を作り終えてから、



「あ、和也くんが翔くんを迎えに来る時間が分からないよね…?
もしも朝早かったら…。」


と思い、和也くんがいつ翔くんを迎えに来てもいいように、朝ご飯に翔くんの好きなフレンチトーストを作っておこうと思いフレンチトーストを作り、出来上がったフレンチトーストをお皿の上に乗せるとラップをかけておいた。




これならもしもウチで朝食を食べる時間が無くても、翔くんに持たせてあげれるもんね。


「これでよしっ!!」



と呟き、それから夕飯をトレイに乗せてリビングに運んだ。













リビングでは相変わらず翔くんと大野さんが仲良くモバイルの写真を見ながら楽しそうに過ごしていたので、



「今日は何の写真?」



と聞きながらテーブルに料理を置いていると、



「そりゃあ、潤の写真に決まってるだろう。」


と大野さんが言うので、



「ちょっとっ!!
無断で俺の写真を撮らないでくださいっ!!
モデル料貰うからね。」


と言うと、翔くんが真剣な顔をして、



〝いくら?〟



と聞いてくるもんだから、思わず大野さんと笑ってしまった。



「ふふふふふ。
翔くん、冗談だからね。」



と言いながら翔くんの頭を撫でると、翔くんは目を細めて気持ちよさそうにしてくれるその可愛い顔を愛おしく思いながら見つめていると、






「潤、まだ運ぶ物あるのか?」


と大野さんに聞かれたので、



「あともう少しあるよ。
あと、大野さん今日も飲む?」



と聞くと、



「明日、船に乗らなくてもいいのなら少し飲もうかな?」



と言ったので、



「了解。
美味しいワインがあるから皆んなで飲もうか?」


と言うと大野さんが、


「ワインか。
いいな。」


と答えると、翔くんも目を輝かせてコクンと頷いたので、


「じゃあ持ってくるよ。」


と言い立ち上がると大野さんもソファーから立ち上がり、


「潤、俺も運ぶのを手伝う。」


と言ってくれたので2人でキッチンへと向かったのだ。















キッチンに戻ると俺はワインセラーからワインを取り出して、食器棚からワイングラスを取り出し、



「大野さん、そこにある料理全部運んで。
俺、ワインとチーズを用意して行くから。」



と言うと大野さんはのんびりとした声で、


「了解ー。」


と答えた。







チーズを切っていると、



「なあ、潤…。」


と大野さんに声を掛けられ、




「ん?なに?
大野さん?」


と言うと大野さんが、



「潤、翔くん明日帰っちゃうんだってな。」


と言ってきた。





「うん、そうだけど…。
翔くんに聞いたの?」



「ああ、そうだ。」



「そっか…。」



「いいのか?」


と大野さんが真剣な顔をして聞いてきた。


「いいって、何が…?
ってか、なによ?
大野さん急に真剣な顔になっちゃったりして。」



ふふふふふ。

と笑いながらそう言うと、



「潤の気持ちを、翔くんに伝えなくていいのか?」


と大野さんはそう聞いてきたのだ。





「えっ…?」


一瞬、ドキンとして心臓が止まるかと思うくらいビックリしてしまい、なかなか上手く言葉を発する事が出来ず、



「………。




つ、伝えるも何も…。


翔くんに伝えたところで迷惑だろうし…。
俺にはそんな勇気ないし…。
今後も翔くんには逢いたいから…。
だから…いいんだよ…。」



とやっとの思いでそう答えると大野さんは暫く黙っていたかと思うと、いつものふんわりとした顔になり、



「ふふ。
お前は相変わらず真面目に色んな事を考えるんだよな。
たまには自分の気持ちに正直になってみりゃあいいのになっ。」


優しく微笑みながらそう言った。




「……。」



「まあ、それが出来ないのが潤なんだよな。
俺は翔くんの気持ちを知らないが、お前に好意を持っていると思うんだけどなー。」


と言うと大野さんは俺の頭をワシャワシャッと撫でると、



「俺、コレ持って先に戻るわ。」


と言いと料理を乗せたトレイを持ってリビングへと戻っていった。



取り残された俺は、



ハァーーーーッ



と大きなため息をついて、



「うん。
これでいいんだよ…な…。」



と呟くと、切ったチーズやトマト、そして用意しておいた生ハムやクラッカーやアボカドディップをお皿に乗せ盛り付けると、トレイに乗せて翔くんと大野さんが待っているリビングへと向かったのだ。

















「お待たせーっ!!」



と言いリビングへと戻ると、翔くんが心配そうな顔をして俺を見つめてきたので、



「翔くん、どうしたの?
また眉間に皺が寄っているよ。」



と言い、翔くんの眉間の皺を右手の人差し指でそっと触れると、翔くんは笑顔になり俺の手を両手で握ってきた。


その手を翔くんの頬に持っていくと、甘える様に頬をすり寄せてきたのだ。



か、可愛い…。


と見惚れていると大野さんの、



「だから、お前らイチャイチャするなってっ!!
飯食うぞっ!!」



と言うと声で、


「ああ…。
大野さんが居たんだった。」


と思っていると、



「んふふふふふ。
潤、お前心の声ダダ漏れだからな。」


と大野さんが笑いながらそう言った。



「えっ!?
マジでっ!?」


「マジで。」


と大野さんが言うと翔くんも笑いながら頷いていた。








「さてと、飯食うかっ!!」


と大野さんが言い、




「「いただきまーす。」」



と3人で手を合わせたあと、


「「カンパーイッ!!」」


とワイングラスをカチンと合わせて、食事を始めたのだった。












大野さんが言っていた俺から電話があったという話が気になっていたので、




「そういえばさ、大野さん。
電話の俺とどんな会話をしたの?」


とワインを飲みながら聞くと、



「ああ…。
それか…。
今日の昼過ぎだったかな…?
突然電話をかけてきてさ。
何でも翔くんと海に行きたいという話になったらしく、だったら俺の船でついでに釣りもさせて貰おうって事になったから明日は一緒に有給を取って釣りに連れて行ってくれ、と言われたんだ。」



「えー。
それっておかしいよね…。
どちらかと言うと、翔くんは海に行きたくないんだよねー。
ねえ、翔くん。」




と翔くんに聞くと、翔くんはコクコクッと首を縦に振り、



〝海には行きたくない。
明日も行かない。〟



と白い縁取りのボードにそう書いて見せてくれた。



「そうなのか…。
あっ、そうそう。
明日の朝の5時過ぎくらいには潤の家を出れるように準備しておいてくれ、って言ってたわ。
日の出を船の上から見たいとか言ってたなー。」



「えーっ!!
そんなに朝早いのは俺は無理だし、日の出を見るのもいいけど寝ていたいかも。
ねー、翔くん。」


と言い、翔くんを見ると翔くんの顔が青ざめていて、オムライスを食べようとしていたスプーンを持った手がプルプルと震えていたのだった。




「翔くんっ!?
大丈夫っ!?
オムライスが美味しくなかった?
変な味がした?」



と言いながら、自分のオムライスを一口食べた後に翔くんのオムライスも一口食べて、どちらも同じ味がしたので、



「オムライス、大丈夫だと思うんだけど翔くんの口に合わなかったのかな…?」




と言うと翔くんが吹き出して笑い、


〝潤さん、大丈夫だから。
オムライスもとても美味しいよ♡〟


とボードに書いて見せてくれた。



「そう。
それならよかった。」



ホッとしながらそう言うと、大野さんが、



「この話はこれでお終いにしよう。」



とふんわりとした笑顔でそう言い、俺ではない俺からの不思議な電話の話は終了となったのだった。



















⭐to becontinued⭐















2月5日今日は翔潤の日ですねラブラブラブ




お話はあともう少し続きますので、あともう少しお付き合いくださいね照れキラキラ