⭐to be continued⭐
潤と2人で夏の暑い日差しの中、庭を歩いて池のある所まで行くと潤が、
「ここのお庭の池にも鯉がいるんだね。」
と言いながら楽しそうに池の中を見つめていた。
「鯉といえば…。
月見ヶ丘公園の池にはハートの模様の鯉がいて、見つけると願い事が叶うんだって。
ショコラ知っていた?」
潤がオレにそう聞いてきたので、確か子供の頃に和と一緒に見に行ったような気がするな…?
ただ、願い事が叶うかどうかは思い出せなくて…。
でも知っているのは確かなので、
〝知ってるよ。〟
と答えると、
「ショコラ、見た事があるの?」
と聞かれたので、見た事があると思うけど記憶が曖昧なので、
〝いる、って聞いた事があるだけかな…?〟
と答えておいた。
「そっかー。
ショコラー。
今度、一緒に見に行かない?」
と潤に誘われたが…。
今のオレは不安定で、いつ犬の姿になっていつ翔の姿になるのか分からないので、なるべく出歩かない様にしているんだよな…。
だから潤と一緒に出かけるのは嬉しいけど、それは無理かな…?と思い、
〝うーん…。
考えておくよ…。〟
そう答えると、
「そっか…。」
と潤は言う一瞬寂しそうな顔になったが、次の瞬間には笑顔で
「ショコラ、ゼリー食べる?」
と聞いてきた。
〝うん、食べるっ!!〟
と答えると、潤は保冷バッグの中からタッパーを取り出すと、中から冷蔵庫で作る氷の様な形をしたゼリーを取り出し、
「ショコラ。
はい、どうぞーっ!!」
と言いオレの口の中に入れてくれた。
潤が凍らせてくれていたので、シャリシャリとした食感のゼリーは冷たくてこの暑い夏にはうってつけだった。
それでいてフルーツの味もして美味しくて、
〝潤、コレ美味しいっ!!
もっと食べたいっ!!〟
と言うと、
「はいはい。
ショコラ沢山食べてねーっ!!」
と言いながらゼリーを食べさせてくれた。
〝潤、美味しいよーっ!!
フルーツ美味しいーっ!!〟
潤の作ってくれたゼリーをシャリシャリと食べていると、
「ねえ。
ショコラ。」
と潤が声をかけてきた。
〝ん?〟
と答えると、
「翔くんってどんな人?」
と聞いてきた。
〝えっ?〟
驚いて一瞬固まっていると、
「あ、いや…。
俺、結局翔くんに逢えていないし、さとちゃん先生とかずの話しだけでしか知らないから、どんな人なのかなー?と思って…。」
と潤が恥ずかしそうに俯きながらそう言った。
まさか潤に翔の事を聞かれるなんて思ってもいなかったので、心臓がドキドキするのを抑えながら、
〝なんで気になるの?〟
と聞くと、
「んー。
翔くんって子供の頃に新月の夜にお願い事をしていたって、さとちゃん先生とかずにこの間聞いたんだ…。」
と潤は答えた。
オレ、そんな事していたっけ…?
記憶にないので首を傾げて考えていると、
「俺も子供の頃から新月の夜には願い事をしているだ。
月の神様が願い事を聞いてくれたから、こうしてショコラと出逢う事が出来たんだと思うんだよね。」
潤は綺麗な瞳でオレを見つめながらそう言って微笑んだ。
その笑顔が…。
マタ、誰カト重ナッテ見エテ…。
〝ひ……さ…ま…。〟
思わず口から言葉が出たが、自分でもなんて言ったのか分からず…。
潤は、
「ん?
どうした?ショコラ。」
と優しく微笑んでオレの頭を撫でてくれた。
「もう少ししたらね、新月の夜が来るんだよ。」
潤は青空を見つめながらそう言い、オレはそんな綺麗な潤の横顔を見つめていたんだ。
それから数日後の新月の夜…。
オレは自分の部屋の窓から月のない暗い暗い空を見つめていた。
この間の潤が言った、
『貴方が人間になりますように。
って願えば叶うのかな?』
と言う声が耳から離れず…。
だったらオレが翔の姿で潤に逢えれば潤のその願いは叶えてあげれるよね…?
そう思う反面…。
何故だか翔の姿で潤に逢いたくない、というもう1人の自分もいて…。
考えれば考えるほど自分の気持ちがよく分からなくなってしまった。
「あーーっ!!
もうっ!!
オレどうしたいんだよっ!!」
と頭をガシガシと掻きそう叫んだ。
オレの心の中にはまるで別の人格の自分がもう1人いるかのように、考えがまとまらないのだ…。
「よしっ!!
決めたっ!!」
と言うと、月のない暗い暗い夜空に向かって意を決して願い事をする事にした。
「隠れてしまっているお月様お願いがあります……。」
柄にもなく夜空に手を合わせて願い事を呟いたのだった…。
どうかこのオレの願いが叶いますように…。
暗い、暗い…。
お月様が隠れてしまい寂しい夜空に、願いを込めて…。
それは暑い暑い夏の日の夜の出来事だった…。
⭐to be continued⭐