暫く潤に抱きしめられて、潤の温もりとドクンドクンという心臓の音を心地よく聞いていると、




「あら、相葉くん、潤くん、いらっしゃい。
暑かったでしょう?」



と言う母さんの声が聞こえた。









「夏芽さん、こんにちは。
外はめちゃくちゃ暑かったですよーっ!!」
  


「夏芽さん、こんにちはーっ!!」




相葉くんと潤が母さんに挨拶をすると、



「相葉くんも潤くんも、そんな所にいないで早く上がってらっしゃいよ。
ショコラ、2人をリビングに案内してあげてね。」


と言うと、


「先に戻ってお茶の用意しておくわね。」



相葉くんと潤にヒラヒラっと手を振るとリビングの方へと消えて行った。




おいおい…。

母さんが案内しろよ。




何で犬のオレが案内しなきゃいけないんだよ…。


と思っていると、



「わーっ!!
夏芽さん、お茶の用意してくれるって、今日はどんなスイーツが食べれるんだろうね?」


潤がオレの顔をワシャワシャしながら嬉しそうにそう言うと、


「うん、楽しみだねーっ!!」


スイーツ好きの相葉くんも満面の笑みでそう言った。



「「おじゃましまーすっ!!」」


と言って上がり框で靴を脱いだ相葉くんと潤が用意されていたスリッパを履いたのを確認して、オレは2人をリビングへと案内をした。











リビングに繋がる廊下に行くために格子戸を鼻先と右の前足を使って開けようとすると、



「ショコラちゃん。
開けてあげるね。」


と相葉くんがスッと格子戸を開けてくれた。


 


相葉くんはいつもこうやって開けてくれるんだよなー。





尻尾を振って、



〝相葉くん、ありがとうっ!!〟


とお礼を言うと潤が、



「まーはそうやってショコラに気に入られようとする…。」


と言うので、




「そんな事ないよっ!!
ショコラちゃんが開けるのは大変かな…?と思ったからっ!!」


と相葉くんが慌てて潤にそう言った。






〝そうだよ。
相葉くんはいつもやってくれるじゃんっ!!〟


と言うと、



「ふーん…。
ショコラはそんなにまーが好きなんだぁ…。」



と言う潤の声がいつもより低くて様子が違ったので、ふと潤を見上げてみると…。










そこには口を尖らせて拗ねた顔の潤がいた。









その拗ねた顔がこれまた可愛くて…。



うわぁーーっ!!

潤、可愛いっ!!






不謹慎にもそんな事を思ってしまったのだ。






こんな顔をする潤は珍しいので、もっと見ていたい様な気もしたがやっぱり潤は笑顔でいるのが一番だよな…と思い…。





そんな拗ねて可愛い潤の足元に戯れつき、





〝潤っ!!
潤っ!!〟



 と潤の名前を呼んだ。



すると潤は珍しく返事をせずに拗ねた顔のままオレを見つめてきたので、潤の目を見つめながら、






〝潤。
オレ、潤の事大好きだよっ!!〟



と言うと、潤の尖っていた唇が少しずつ横に広がり、恥ずかしそうに目を伏せると、



「…嬉しい…。」


と呟き、



「ショコラ、ありがとう…。」



と言いながら、しゃがむとオレに抱きついてきた。



「俺もショコラの事大好きだよ…。」






ギューーーッと潤に抱きしめられてこの上ない幸せを噛みしめていると、



「あのー…。
潤ちゃん、ショコラちゃん、アツアツのところごめんね…。」


と言う相葉くんの声が聞こえた。






声の方に顔を上げると、そこには申し訳なさそうな顔をした相葉くんが立っていた。






「まー、なに?」


と潤が聞くと相葉くんは、


「えっと…。
僕、早く涼みたいから潤ちゃん、ショコラちゃん先に行くね。」




そう言うと、潤とオレを残して先にリビングへと向かった。








「ふふふふふ。
まー先に行っちゃったねー。」



と言いながら潤はオレの顔に自分の顔を擦り寄せてきて、スリスリとしながら、



「俺、ショコラに愛の告白して貰えると思っていなかったから嬉しいよ。」


と言った。




〝あ、愛の告白ーーーっ!?〟



驚いて潤の顔を見ると、潤はキョトンとした顔をして、



「えっ?
さっき〝潤の事大好きだよ〟って言ってくれたよね…?」



〝はい、おっしゃる通りです…。〟



「違ったの…?」


潤の声が一変して悲しそうな声になるのを感じ取り…。

  


愛の告白をしたつもりはなかったが、オレが潤の事が好きなのは多分…きっと…それは確かな事で…。






自分で自分の気持ちがまだよく分かっていなかった…というよりはずっと自分の気持ちを誤魔化していたんだけど…。





オレは潤が好き…だよな…?







〝潤、大好き好きだよ。〟


今度は気持ちを込めて潤にそう言うと、



「俺も…大好きだよ。」



と潤もオレを好きだと言ってくれた。






それがとてつもなく嬉しくて、幸せを感じていたのが…。







でもよくよく考えてみると、潤が好きと言っているのは犬のショコラの事なのに、オレなんでこんなに真剣に潤に言ってるんだよ。



ふと冷静になると自分で自分が可笑しく感じてしまい。




あーっ!!もうっ!!

潤が好きなのはショコラであって、翔ではないんだっ!!



と思うと自分自身でもあるショコラにも少し腹が立ってきて…。



グルグルとそんな事を頭の中で考えていると…。








 
「ねえ…。
知ってる?
新月の夜に願い事をすると叶うんだって…。」



と潤がオレの耳元で囁いた。







『ねえ。知ってる?
新月の夜に願い事をすると叶うんだって。』



そう言って微笑む誰かと潤が重なって見えて…。


でも、あれは誰だったっけ…?






頭がズキズキと痛くなり目を瞑り、思い出せない記憶の糸を手繰り寄せようとするが、その糸は途中でプツリと切れているかのように何も思い出す事が出来ない。






もどかしい気持ちでいっぱいになり、ふと目を開けると目の前には潤の綺麗な顔があった。







「『貴方が人間になりますように。
って願えば叶うのかな?』」


と言い潤は優しく微笑むと、チュッとオレの鼻にキスをした。









優しく優しくオレの頭や身体を撫でた後、





「さてと、ショコラ行きますかっ?」



と言うと立ち上がり、



「あ、ショコラ。
今日はフルーツゼリー作ってきたから、後で一緒に食べようねっ!!」


と言いながら手に持っている保冷バッグをオレに見せてくれると、リビングへと向かって歩き出した。





〝潤っ!!
待ってっ!!〟



言いながらオレは潤の後を追いかけたのだった。














⭐to be continued⭐