リビングにやって来た時には既に朔くんと花樹ちゃんはゲーム部屋に行っており、リビングのソファーに伯父さんと伯母さんが座り、俺達が来るのを待っていた。









そうして、今に至るんだけど…。












「櫻井のおじさん、夏芽さんっ!!
お願いだからショコラを俺に譲ってくださいっ!!」


「僕からもお願いしますっ!!」

とテーブルを挟んでソファーに座る伯父さんと伯母さんに頭を下げる潤くんと相葉さん。


そんな4人を俺とさとちゃんはリビングの扉付近で、ひっそりと見守っている訳なんだけど…。







俺の隣で腕を組んで立っているさとちゃんが突然小声で、



「おいっ、小悪魔1号。」

と言った。

えっ!?

何っ!?それっ!?

と驚いてさとちゃんの顔を見て、


「さとちゃん、その呼び方なにっ?」


と聞くと、さとちゃんは真っ直ぐと前を見たまま珍しく不機嫌そうな声で、


「和、お前の事だよっ!!
お前、何で小悪魔2号連れて来たんだよっ!!
類友すぎるぞっ!?」

と言った。



まあ確かに俺は『小悪魔』と呼ばれる事はあるけど…。


で、小悪魔2号って誰よ?

と思い、



「小悪魔2号って…?」

とさとちゃんに聞くと、


「あの潤くんってヤツだよっ!!」

と答えた。


俺達の目線の先にいる潤くんは、ウルウルと瞳を潤ませて「ショコラを飼いたいっ!!」と伯父さんと伯母さんに訴えていて…。


あんなウルウルした瞳で見られると思わず、


「いいよ。」

って言いたくなってしまうよね…?





「あー、潤くんね…。
俺もビックリしてるんだから…。」



「良夜さんと夏芽さんの事だから、ちゃんと断ると思うけど…。」


「うん…。断ってくれないと困るし、潤くんに連れて行かれると翔ちゃんますます変態扱いだからね…。」


「何で翔ちゃんが変態なんだよっ?」

「えっ?だって犬から人間に戻った時って、真っ裸じゃん。」


「あ、ああ…。」


「潤くんを噛んで襲った挙句に、潤くん家(ち)に連れて行かれて人間の姿に戻った時に真っ裸でいたりした日には…。」





「「ど変態だな…。」」

と2人で言い、はぁーーーーっと深いため息をついた。






そんなおバカな話しをしている俺達とは反対に、伯父さんと伯母さん、そして潤くん(と一応相葉さんも?)は真剣に話しをしており…。


潤くんはどれだけショコラを飼いたいのかとか、

「ショコラは俺の運命の子なんですっ!!」

と言って、伯父さんと伯母さんに訴えていた。



暫く黙って潤くんの話しを聞いていた伯父さんと伯母さんだったが、潤くんが言いたい事を言い切った頃、口を開いた。





「潤くんの気持ちは分かったわ。」

と伯母さんが言うので、


まさかっ!?

翔ちゃんを潤くんにっ!?

と思い、息を呑んでさとちゃんと見守っていると、


「だけどね、ショコラは潤くんにあげる事は出来ないの。
ショコラは私達の大切な家族だから。」


と伯母さんは潤くんに優しい声で、それでもって絶対にショコラは譲れないという表情をして、潤くんにそう言うと、





「そう、大切に育てて来た子だから。
潤くん、相葉くん、すまないね。」


と伯父さんも伯母さんに続いてそう伝えた。



伯父さんと伯母さんは顔を見合わせてから、潤くんと相葉さんを見つめると、


「だけど、潤くんがショコラに逢いたい時に、いつでも逢いに来てくれていいから。
ただ、ショコラは気分屋さんなので、いつ来ても逢えるとは限らないんだけどな…。」


「潤くん。
それじゃあ、駄目かしら?」


と潤くんに提案をした。



ショコラこと翔ちゃんは気分屋さんではないんだけど、潤くんが来た時に人間の姿だと潤くんはショコラと逢えないもんね…。


何て思いながら潤くんを見ると、潤くんは悲しそうな顔をして俯いて何かを考えるかのようにジッと一点を見つめた後、ゆっくりと顔を上げると、



「あのー…。
本当にいつでも逢いに来てもいいんですか?」

と伯父さんと伯母さんに聞くと、

「ああ、勿論。」

「いつでも遊びにいらっしゃい。」


と伯父さんと伯母さんは潤くんにそう答えた。





「ショコラを連れて帰れないのは残念だけど、何時でも逢えるのなら…。」


と潤くんは嬉しそうに微笑んでそう言った。



その隣で相葉さんは、


「うっうう…。潤ちゃん…。
よかったね…。ぐすっ。」


なんて涙を流しているもんだから、


「ちょっとっ、まーっ!!
何泣いてんだよっ!?」


と潤くんは頬を膨らませて文句を言い、伯父さんと伯母さん、そして俺とさとちゃんは相葉さんには悪いけど、大笑いをしてしまった。










⭐to be continued⭐