「この間櫻井さんのお家に来た時に、ここの部屋で黒柴のワンコさんが眠っているのを見つけたんだ。」


と潤は嬉しそうに言った。



「待ってっ!!
潤くん、この間来た時にこの部屋に入ってたの?」


「うん、そうだよ。
…勝手に入っちゃったから言いづらくて…。」


「潤くんあの時、『忘れ物をした。』って言っていたよね…?」


「うん。
だって、この子を探して見つけたかったから…。
『忘れ物。』ではなくて『探しモノ。』って言えばよかったかな…?」

と潤がそう言うと和は複雑そうな顔をした。


そんな和と潤のやり取りを見ていた相葉さんが、


「潤ちゃん…。
そういう事じゃないような気がするんだけど…。」

と潤に言うと、


「そうなの?」

潤は何で?どうして?といった顔をして2人を見つめていた。


「いや…まあ…。」


和が言葉に困っていると、潤はマイペースに話しを続けて、


「この子、フッサフサッで気持ちがいいんだー。」


とオレをギューーーーーッと抱きしめてそう言った後、



「ねえ、かず、この子のお名前は?」


と俺の顔を両手でワサワサと撫でながら聞いた。




和がオレの名前を言いかけると、


「ああ、その子はしょ…「ゴホンッ!!」


智くんが咳払いをした。



和は何も考えずに犬の姿のオレの事を『翔』と言いそうになった事に気が付き、オレの名前を言うのを途中でやめたのだが潤が首を傾げて、



「しょ…?」



と和に聞き返すと、



「あ、えっとあの…「ショコラ、だ。
その子は、ショコラ、って名前だ。」」


とオレの名前をどう言おうかと困っている和に代わって智くんが、『ショコラ』と潤に言うと、



「ショコラかぁー。」

と潤はオレの名前(仮)を呼ぶと、


「おい、ショコラ。
お前、可愛いぞっ!!」


と潤はオレを抱きしめたままそう言った。





うん、犬の姿をしているオレを人前で『翔』と呼べないは分かる。


分かるけどよりによって『ショコラ』だなんて甘ったるい名前を仮の名前にするなんて…。



納得いかないっ!!



と思わず、


〝ちょっとっ、智くんっ!!
ショコラって何だよっ!?〟



と言うと、潤は不思議そうな顔をして、


「ねえ…この子…。
お名前、ショコラ、じゃないの…?」


と智くんと和の顔を交互に見ながらそう言った。



「いや、ショコラだぞ。」


「そうそう。
ショコラだよ。」



〝だから、何でショコラなんだよっ!!〟



と言うと、


「だってこの子、何でショコラなんだよ、って言ってるよ。」

と潤が言った。


「「えっ…。」」


「黒柴のワンコさんのお名前は、ショコラじゃないの?」


と潤が俺の瞳を見つめながらそう聞いてきた。


チラリと智くんと和を見ると、和は潤に見えないようにフルフルと顔を横に振り、智くんは無言でショコラと言えっ!!と圧をかけてきた。


智くんの眼差しはいつもは優しくてふんわりとしているのに、こういう時は何故か目力半端ないんだよな…。



〝ショ…ショコラだよっ!!〟



と言うと、潤は、


「なーんだ。
やっぱりショコラなんだー。」


と微笑みながらそう言った。




「潤くんは、ショコラが何と言っているのか分かるのかい?」


と智くんが潤に聞くと、


「うん。
分かるよ。」


と潤は嬉しそうな声でそう答えた。


「えっ!?
潤ちゃん、黒柴のワンコ探知の能力だけではなく、ワンコの喋る言葉も分かるのっ!?
潤ちゃん凄いねっ!!」


と相葉さんが驚いて潤に聞くと、


「ショコラ限定かな…?」


と潤は答えた。



「え…?
ショコラ限定なの?」


と和が聞くと、


「だって…。
他の子たちには俺、嫌われてばっかだったもん…。」

と潤は寂しそうな声でそう言った。



「確かに…。
潤ちゃん、動物好きなのに動物に嫌われるもんね…。」

と相葉さんがそう言うと潤は悲しそうな顔をして、


「うん。
いっつも撫でようとすると手を噛まれたり、引っ掻かれたり、唸られたり…。」


と俯きながらそう答えた。





ってか…。

潤って、どんだけ動物に嫌われてるんだよ…。






皆んなが潤を同情して見つめていると、潤は突然、


「俺、この子飼いたいっ!!」


と言い始めた。



オレを含めて4人(3人と1匹?)が同時に、


〝「「「はいっ!?」」」〟


と聞き返すと、



「俺、子供の頃からずぅーーーっと、黒柴のワンコを飼いたくて、ずっとずっとずーーーっと探してたんだ…。」


と言いながら、潤はオレを抱きしめる腕に力を込めた。





「ねぇ、まー、そうだよね?」


「う、うん。
潤ちゃんはずっと黒柴を探していたし、飼いたがっていたけど…この子は…。」


「ねぇー。かずお願いっ!!」


「えっ!?
いや…、それはダメかな…?」


「何でっ!?」


「何でって…。
だってこの子はこの家の子だから…。」


「どうしてっ!?」


「ショコラは櫻井家の家族同様だからダメなんだよ。」



と智くんが潤を諭すように優しい声でそう言った。











⭐to be continued⭐