「さて、中に入るか。」

と智くんが言うと、花浅葱、そして赤紅と紅藤は、智くんと一緒に家の中に入って行った。





「潤、どうする?」


と言うと潤は


「かずがアパートに着くまで見届けてもいい?」

と聞いてきた。




「ああ、いいよ。」


と答えると、



「しょおくん、ありがとう。」


とギュッと抱きついてきた。

そんな潤を抱きしめ返して、



「此処から少し行った所にある、楠の木の所でいいか?」

と聞くと、



「うん、そこで大丈夫だよ。」

と答えたので、背中に翼を生やすと翼をバサバサッと羽ばたかせ、


「潤はどうする?」

潤を抱き抱えて飛べるように両手を広げて、聞いてみると、



「ふふふ。

久しぶりに自分で飛んでみるよ。」

と言い、潤も白と銀の翼を背中に生やし翼をバサバサッと羽ばたかせた。



「じゃあ行こうか。」



「うん。」


潤の手を握り、翼を羽ばたかせたながら飛び立った。






暫く空を飛んでいると、大きな楠の木が見えてきて、二人が腰掛けれる木の枝を見つけ、腰を下ろした。


「よいしょっ。」

と言って座った潤が和也と相葉くんの車の進んで行った方向を、


「んーーーっ。」

と言いながら見ていた。



「潤、見えるか?」

と声をかけると、千里眼で和也と相葉くんの乗った車を探していた潤が、


「あっ!!しょおくん、かずとまーを見つけたよ。」




と言い、潤がスッと手を空へとかざすと、先ほどまで晴れ渡っていた空にはうろこ雲が現れ、少しずつ雨雲が空一面に広がった。


すると、ポツリポツリと雨が降り始めてきた。




ああ…、潤の〝結界〟の雨だな…。









千里眼で和也達の乗った車を追うと、和也達のいる所にも潤の雨が降り注いでいた。





和也が車の窓を開けて手を窓の外に出し、雨を確認していたのできっと潤が降らせた雨だと気付いているだろう…。



そう思いながら和也達を見守っていると、




「あ、そうだ、しょおくん。

団子屋さんを怒らないであげてね。」

と急に潤が言ってきた。



「えっ?団子屋…?」



「〝松竹梅堂〟の…」



「〝松竹梅堂〟…?松竹梅…堂…?」

〝松竹梅堂〟とは天狗の住む村にある潤のお気に入りの和菓子屋だが、何故今その店の話が出てくるのか考えていると…。



「うん。〝忘却の水〟の時の…。」

と潤が言うので、



「あっ!!ああ…。」

〝松竹梅〟とは、あの潤を目の敵にする三つ子の事が…?

と思い、



「松太郎、竹次郎、梅三郎、の事か…?」

と聞くと、



「そうそう。」


と潤は答えたが…。



潤さん…。

アイツら…、団子屋の息子ではなくて、代々〝守(かみ)〟の官僚一族だった筈なんだけど…?

何故、団子屋なんだ…?



と考えていると潤が、




「あのね…。

実は…団子屋さんにね…、〝忘却の水〟を飲むの協力して貰っていたんだ…。」

と気まずそうに言ってきた。



「えっ!?アイツらに協力して貰っていたのかっ!?」

と驚いて聞くと、潤はコクンと頷いた。





道理で母上が松竹梅について何も言ってこないと思ったら、潤が絡んでいたからか…。

そうじゃなければアイツら、今頃母上に…。




考えるだけでもゾッとする…。




「えっ?ってか何で?

何であいつらと、仲良くなってるんだよ?」



「別に仲良しさんな訳ではないよ…。」



「えっ!?でも…。」

と潤に色々聞こうとしたが、



「今はかずのお見送り中だから、もうこの話はおしまいっ!!」

と話を切られてしまった。




「はぁっ!?」

納得いかないんだけど…。



「それよりも…。」



「ん?」




「かずとまーを、お家までちゃんと送り届けてあげたいんだ。

かずが心配だから…。」

と、千里眼で遠くにいる和也達に目をやっていた潤がふいに俺の顔を見て、ニッコリと微笑んだ。



「…何だか和也に焼けるな…。」

ぼそりと言うと、潤は慌てて、



「ボクが愛してるのは、しょおくんだけだからっ!!」


と言った後、赤くなって俯いた。


「ぷはっ。」

そんな照れている潤が可愛くなり思わず吐き出してしまうと、


「しょおくん、笑わないでよ…。」

しゅんとしながら言う潤に、


「ごめん、ごめん。」

と言い潤の手をギュッと握りしめながら、

「俺もだよ。」

と言うと、潤は花が咲いたように微笑んだ。






⭐to be continued⭐