おおみ屋工房に到着すると先程まで降っていた潤の雨の結界は消え、空には青空が広がり太陽が現れていた。







「「「「ただいまーっ!!」」」」

ガラガラガラッと玄関の引き戸を開けて中に入り廊下を歩いて客間へ行くと、智くんと花浅葱、そして赤紅と紅藤がお茶飲みながら待っていてくれた。





「おう、帰ってきたか。」


 
「「おかえりなさいませっ!!」」



「おかえりなさいませ。

お茶の用意をしますね。」


と花浅葱が立ち上がり、お茶の用意をしに行こうとすると和也が、




「あ、花浅葱さん。

俺たち帰る準備をするから大丈夫です。」


と言った。



「そうですか…。

じゃあ、翔様と潤様のを用意してきますね。」


と言い、花浅葱は勝手のある方へと消えて行った。


   

相葉くんが和也に、



「じゃあ、にのちゃん準備しようか。」


と言うと和也は



「そうだね。」


と返事をし、客間を出て荷物を置いている部屋へと向かった。






「ねぇ、しょおくん…。

かずの所に行ってもいい?」

潤が寂しそうな顔をして聞いてきたので、



「ああ、いいよ。潤。

行っておいで。」


と言うと、潤は和也と相葉くんの出て行った襖をスッと開け、和也を追いかけて客間から出て行った。







その様子を見ていた智くんが、



「翔くん、よかったのか?」

と聞いてきたので、



「ああ。智くん、大丈夫だよ。」


と答えると、赤紅と紅藤も少し不安そうな顔をして、


「潤様は館に戻ってきてくれますよね?」


「和也様と一緒に行かないですよね?」

と聞いてきた。



「ああ、大丈夫だから、赤紅も紅藤もそんな顔をしないでおくれ。」



と言い二人の頭を撫でてやっていると、花浅葱がお茶の用意をして戻ってきた。



「お待たせしました、翔様、潤様…。

あれ…?潤様は…?」




「花浅葱、すまない。

折角、潤の分も用意してくれたのに…。

潤は和也の所は行っているんだ。」



「そうでしたか…。」

と言い、花浅葱は潤の分のお茶を下げようとすると智くんが、



「花浅葱、俺、丁度おかわりが欲しかったから、潤の分のお茶を貰ってもいいか?」


と言い、潤の為に用意されたお茶の入っているコップを指差した。



「はい。大丈夫ですよ。」


と言い、花浅葱はコップを智くんの前にコトンッと置いた。







花浅葱の用意してくれたお茶を飲みながら話をしていると、和也達の出て行った襖がスッと開き、


「おじゃましまーす。」


と言いながら、荷物をまとめた相葉くんが入って来た。



「あれ?相葉くん一人だけ?

潤と和也は?」


と聞くと、



「あー、にのちゃんとJちゃんはまだ準備の途中だと思うので、俺だけ先に来ちゃいました。」


くふふふふ。


といつもの相葉くんの明るい笑顔でそう言った。



花浅葱が席を立ち相葉くんのお茶を用意して戻ってきて、




「相葉さん、どうぞ。」


コトンッと、相葉くんの前にお茶の入ったコップを置いた。




「花浅葱さん、ありがとうございます。」



と言うと相葉くんは、コップを手に取りゴクゴクゴクッとお茶を飲み、



「ふぅーー。

冷たいお茶が美味しいです。」


と言った。



その後、相葉くんに戯れつく赤紅と紅藤を相葉くんが相手してくれていると、襖がスッと開き和也と和也に手を引かれ子供のように口を尖らせて拗ねている潤が客間に戻って来た。



和也は、俺達と一緒にお茶を飲んでいる相葉くんの姿を見つけて、



「相葉さん、お待たせ。

準備出来たよ。」


と言った。



「じゃあ、帰ろっか?

にのちゃん。」


と相葉くんが言うと、



「…うん。」


と返事をし、二人は襖を開けて廊下に出てから玄関へと向かった。



皆んなで和也と相葉くんを見送る為に外へ出ると、潤は和也達から離れた所で智くんや花浅葱、そして赤紅、紅藤と話をしている和也をジッと見つめていた…。




そんな潤に、



「潤、和也に挨拶しなくてもいいのか?」


と問うと、



「…う…ん。」


今にも消え入りそうな小さな声でそう答えた。



「潤、後悔しても知らないぞ。」


潤の顔を覗き込みそう言うと、



「…しょおくん…。」

潤は、潤ませた瞳で俺を見つめてきた。



「ほら潤、行っておいで。」


潤の背中をポンと押すと、



「…うん。

行ってくる。」


と言い走り出した。









「かずっ!!」


と潤が和也の名前を呼ぶと、和也は潤の声のする方に振り返った。

潤はそのまま和也に飛びつくと、


「Jっ!!」

と言いながら、和也は飛びついてきた潤を受け止めた。


潤より小柄な和也はフラフラとしながら、バランスを崩しそうになるのを必死に堪えて潤を抱きしめた。




「「ありがとう。」」

二人同時にそう言い、


んふふふふふ。

ふふふふふふ。

と目わ合わせて微笑んでいた。




「またね、J。」

と言い、和也は潤をギュウッと抱きしめ、



「またね、かず。」

と言い、潤もギュウッと和也を抱きしめていた。





そんな二人の様子を少し離れた所から見ていると、此方を見た和也と目が合ったので、右手を上げ、


『またな。』


と口だけ動かしてそう言った。


また和也とは会うような気がするし、会える日がきっと遠くはない未来にあると思うので、別れの言葉ではなくまた会う言葉を選んだのだ…。







二人が車に乗り込み発進すると、潤は車がよく見えるように道路へと駆け出し、


「かずーっ!!」


「かずーっ!!

またねーっ!!」



と言いながら手を振り続けていた。


  

そんな潤に気付いた和也が、車の窓を開けて身を乗り出し潤に向かって大きく手を振り返してくた。






少しずつ遠のいていき小さくなっていく車を、潤は潤んだ瞳で見つめながら車が見えなくなるまでずっとずっと手を振り続けていた。









⭐to be continued⭐