その後もニヤつきながら和也を見ていると、ますます不機嫌そうな顔になってしまった…。


これは流石にマズイな…。


と思い、潤の手を引いて和也と相葉くんの所へと行くと、和也が潤んだ琥珀色の瞳で睨みながら、




「何よ。」

と少しイラついた声で言ってきた。



「ぷはっ。そんなに怒るなよ。」




「そっちがやな感じなんじゃない。」


と和也が返してきたので、



「お互い様だろ。

お前だってわざと潤に抱きついたりしてたろ?」


と言うと、和也は、



「わざとじゃないし。」

と開き直って言う。



「お前は本当に可愛くないよな。」



と俺が言うと、相葉くんがにこやかに、



「にのちゃんは可愛いよっ!!

ねっ!!」


と和也の顔を覗き込みながら言った。



相葉くん…それは反則だろ…。

そんなキラキラした笑顔で和也の顔を覗き込むと、和也がまた照れるぞ…。


と思っていると潤が、



「ふふふ。

うん、かず可愛いもんねー。」


と言い、和也の手を取り握りしめると、和也を潤の方に引き寄せた。





潤と和也がまた二人でコソコソと話をしているのを腕を組んで眺めていると、カサッと懐から音がした。

ふと懐目をやり、そういえば和也に渡さなければいけないモノがあった事を思い出した。






「あ、そうだ和也。

これを渡しておこう。」

と言い懐に手を入れ、



「手を出して。」


と言うと、和也が左手を差し出してきたので、その手のひらの上に懐から取り出した鳥の形をした黄色の紙をそっと乗せた。




首を傾げながら和也が、



「これは…?」

と尋ねてきたので、


「〝式〟だ。」

と答えると、



「〝式〟…?」

と和也が聞き返してきた。



「ああ…。

この鳥の形をした紙に伝言を伝えて、息を吹きかけると小鳥になる。」

と説明すると、



「あっ!?

昨晩、じいちゃんの伝言を伝えてくれた小鳥っ!?」

  

昨晩の智和の〝式〟を覚えていたようで、その事を言ってきた。




「そうだ。

あれは智和用で、コイツは和也用だから。

何か困った事があればそれを使って知らせてくれればいい。」




「へぇー。」


不思議そうな顔をして和也は〝式〟を見つめていた。



すると、相葉くんが和也の手のひらの上にある、〝式〟に顔を近づけてジッと見ながら、




「何だか面白そうだね。」


と興味を持った相葉くんが目を輝かせてそう言うと、和也が慌てて、



「ちょっと、相葉さんっ!!勝手に使っちゃダメだからねっ!!」

と言っていた。




和也に渡した〝式〟は和也の魂の色で作ってあるので、和也以外の人間には使用する事が出来ないようになっているので、




「和也、大丈夫だ。

そいつは和也専用だから、相葉くんには使う事が出来ないから。」

と和也と相葉くんにその事を伝えると、



「えーっ!?俺は使えないの…?」

と相葉くんは肩を落としてガッカリとしていた。



「何でこれを俺に?」

と和也が聞いてきた。




何でと言われても…。


暫く〝式〟をお守り代わりに持っておいて欲しいんだよな…。




「何でって…。

まあ、お前は潤の親友だからかな…?」


と言葉を濁しながら答えると、



「ちょっと、何で疑問形なのよ?」


和也は冗談っぽくは言っているが、どうやら何かを警戒してようで…。



相葉くん以外の事では冷静な和也が何となく可愛く思えてしまい、思わず、


ぷはっ。

と吐き出してしまった。



「それに、和也に何かあると潤が悲しい想いをするからな。」


と和也を怯えさせようと思い、意味深な言い方をすると、



「えっ!?何かあるの前提なのっ!?」


とビクビクしながら和也が聞いてきた。



「例えば、かな…?」


言葉を濁しながら言うと、俺達の会話を聞いてた潤が、



「…かず、あのね…。

暫くはそれを身につけておいてくれる?」

と曇った表情で言った。



「その方がいいの?」

と和也が言うと潤はコクンと頷いた。




「持っていればお守り代わりにもなるからな。」

と俺が言うと、






「えっ!?これ持っていないとマズイ事があるの…?」


和也が恐る恐る聞いてきた。




そんな和也に、申し訳なさそうに、


「かず、ごめんね…。」

と謝っていた。



「ボクがここ数日ずっとかずの傍にいたから…。」


と潤が言ったので続けて、



「潤が無意識に結界も張っていたので大丈夫だとは思うのだが、潤の天狗の気配がほんの少しでも残っていた場合、たちの悪い妖族が和也の元へ行ってしまう可能性があるあるんだ。
だから、念のためそれを持っておいたほうがよいと思って…。」


と説明をしてやると、潤の気持ちを汲み取ってくれた和也が、



「でも、これがあれば大丈夫なんでしょ?」


と先程まで怯えていた様子を一転させ、右手で〝式〟の尾の部分を摘み、ヒラヒラとさせながら声のトーンも上げて潤に聞いていた。



「うん。しょおくんが特別な術をかけてくれているから、大丈夫だよ。」

潤が答え、



「だけど…「だったら安心さ。心配しなくても大丈夫だよ、J。」」


続けて喋ろうとしていた潤の言葉に被せて和也が喋り、ニッコリと微笑みながら潤の頭を撫でてやると、潤は安心した表情となった。




そんな二人のやり取りを見ていた相葉くんが、



「えー。でもJちゃんと〝鳥さん〟の所に小鳥を飛ばせてみたいよね。」


と楽しそうに言い、それに対して和也が〝式〟を相葉くんから隠しながら、



「相葉さんのじゃないからね。」

と怒っている風に言ってはいるが、顔は笑っていて、そんな二人のやり取りが、より一層潤の不安を取り除いてくれている様に思えた。













「さてと、おおみ屋工房に戻りましょうか?」


と和也が言うと、相葉くんが、


「そうだね。

今からおおみ屋工房に戻ると、丁度良い時間になるね。」


と答え、四人で元来た山道を通り、智くん達の待っているおおみ屋工房へと向かった。





⭐to be continued⭐