「翔様ー!!おはようございますーっ!!

朝ですよ、起きてくださーい!!」


と言う赤紅の声で目が覚めた。


障子から差し込む光が朝を迎えた事を告げており、


「ん…もう朝か…。」

と、布団の中で微睡んでいると、
 


「翔様ーっ!!

今日は潤様をお迎えに行かなければいけないんですー!!」

と赤紅に身体をユサユサと揺らされたので、酒の少し残った気怠い身体をゆっくりと起こし、



「赤紅、おはよう。」

と言うと赤紅が、



「翔様、おはようございます。

大丈夫ですか?湯殿に入って目を覚ましてきますか?」


と聞かれたので、


「いや、大丈夫だ。

支度をする。」


と答えると、



「はいっ!!かしこまりました。」

と言い赤紅が着物の持ってきてくれ、出かける為の身支度をした。








茶の間へ行くと、既に智くんがいて、



「おう。翔くん、おはよう。」



「智くん、おはよう。」


と朝の挨拶をすると、



「あ、翔くん、今朝はウチで朝飯食う事になってるから。」

と智くんが言ってきた。



「えっ?

智くんの所で?」



「ああ。花浅葱が『今朝は折角なので皆さんで朝御飯を食べに来てください』って言ってたんだ。

昨晩薄紅と紅藤には伝えておいたんだけど、翔くんに伝えるのは忘れていたよ。」

ははは、ごめん、

と言う智くんの横で、赤紅と紅藤が嬉しそうな顔をきてそわそわとしていた。



「えっ?

でも、赤紅と紅藤は…。」


と言うと、赤紅と紅藤が悲しそうな顔で俺を見つめてきたので智くんが、



「コイツらも昨晩潤にお預け喰らったんだらから、今朝会いに行ったって構わないだろう。

それに花浅葱が、『皆さんで』って言ってるし。」


と言うと二人はコクコクコクッと頷いて、〝おおみ屋工房へ行きたいですっ!!〟、と目で訴えてきた。



「それなら仕方がないよな…。」


と言うと、


「「翔様、ありがとうございますっ!!」」

と飛び跳ねて喜んでその姿を見た智くんが、



「赤紅、紅藤、よかったな。」

とふんわりとした笑顔で言うと、

  


「「智様っ!!ありがとうございますっ!!」」

と二人は智くんにお礼を言っていた。









おおみ屋工房へと向かう途中、長の館の近くで薄紅が、



「それじゃあ、私は此処で失礼いたします。」


と言ってきたので智くんが、



「薄紅、お前本当に帰るのか?

折角なので一緒に来ればいいのに。」

と言うと、
 


「智様、ありがとうございます。

でも、紅藤が元気になった事を蘭様に一刻も早くお伝えしたいので、またの機会にお願いします。」

とペコリと頭を下げた。



「そっか。

じゃあ、また今度な。」

と智くんが言うと薄紅が、



「はい。是非ともお願いします。」


と智くんに言った後、

 


「翔様、それではお世話になりましたーっ!!」


と俺にお辞儀をしてきた。



「薄紅、こちらこそありがとう。本当に助かったよ。

母上にも宜しく伝えておいてくれ。」





「そう言っていただけてよかったですっ!!

蘭様にお伝えしておきますね。」


と薄紅はにこやかな笑顔で言った。






「薄紅ー。」

「帰っちゃうのー?」

赤紅と紅藤が薄紅に駆け寄り、別れを惜しんでいると、



「うふふふ。

そんな顔しないのっ。私は蘭様の使い魔だから、いつまでも翔様の所ででお世話になる訳にはいかないのよねー。」

と言うと、赤紅と紅藤が



「「薄紅ーっ!!」」

薄紅に抱きついていたが、


「赤紅、紅藤、別れを惜しんでくれるのは嬉しいんだけど…。

潤様が戻って来られたら、いつでも蘭様の華道や踊りの教室で会えるでしょ?」
 


「あ、そうだった。」
  


「そういえばそうだねー。」

あははははは、


と三人が顔を見合わせて笑っていた。





そうなんだよな。

潤が戻って来ると長の家にはほぼ毎日通うので、必然的に赤紅と紅藤も一緒に行くので、母上の使い魔の薄紅とはほぼ毎日顔を合わせるんだよな。







薄紅と別れた後、俺と智くん、赤紅、紅藤でおおみ屋工房へと向かった。





おおみ屋工房へと到着すると、花浅葱がいるであろう勝手を覗いてみると、花浅葱が朝御飯とお弁当の用意をしていた。




「おはよう、花浅葱。

今朝は皆んなで押しかけてすまないね。」


と声を掛けると、花浅葱は包丁を持った手を止めてそっと包丁をまな板の置いて振り返ると、




「翔様、おはようございます。

いえいえ、こちらこそ昨晩は智様がお世話になりました。」


と頭を下げてきた。



「いやいや、こちらこそ潤がお世話になったので。」

と言うと、


「ふふふ。

じゃあ、お互い様ですね。」


と花浅葱がニッコリと微笑んだ。





「智様、ずっと翔様と飲みたいと言っていたので、深酒をしてご迷惑をおかけしていなければいいのですが…。」

と花浅葱は申し訳なさそうな顔して言うが、心優しい智くんと花浅葱の事だから、俺や赤紅、紅藤が落ち込んでいると思って、智くんがウチに来てくれたんだよな…。




「大丈夫だよ。

智くんと楽しい酒が飲めたよ。」


と答えると花浅葱が、



「それならよかったです。」

とにこやかな笑顔で言った後、



「あ、翔様、今日はお昼御飯ウチで食べて行ってください。

昨日、潤様が翔様の為に打ったお蕎麦があるので。」


と言ってきた。




「えっ!?

潤が蕎麦打ってくれたの?」


「はい、昨日、和也さん達と一緒に。

潤様、楽しそうでしたよ。」


「潤は不器用だけど、物作りは好きだからなー。

今から昼御飯が楽しみだなー。」



と話していると、後から入ってきた赤紅と紅藤が、パタパタパタッと廊下を走り、


「「花浅葱、おはようございますーっ!!」」

とやって来た。





⭐to be continued⭐