智くんの持ってきてくれた美味い酒を堪能しながら、


「智くん、折角だから今日は泊まっていきなよ。」

と言うと、




「ふふふ。

そのつもりで、もう薄紅に床の用意して貰ってるんだ。」

と言い、


「今日は、とことん飲みたいしな。」

とお猪口をひょいっと顔の前に持ち上げて、



「翔くん、今夜は付き合ってくれよ。」

と言いながらクイッと酒を飲んだ。





「ああ。今夜は智くんに付き合うよ。」

と俺もお猪口を顔の前にひょいっと持ち上げて言うと、

  



「おう、頼むよ、翔くん。」

と言いながら智くんはお猪口を御膳の上に置き、穴子の天ぷらをパクリと一口食べて、


「あちっ!!でも美味いっ!!

潤は馬鹿だなー。

こんなに美味い穴子があるのに。」


あー、勿体ないっ!!


と智くんが手をおでこに当てて、戯けながら言った。



その様子が面白くて、


「ぷはっ。

本当に潤は勿体ない事したなー。」

ははははは。

と笑いながら言った。


そんな俺を見た智くんが、


「おっ、翔くん、いい笑顔だねー。

やっぱり美味しい料理と酒は笑顔になれるよなー。」


ウンウン、と頷きながら言った。





ああ、智くんはきっと潤がこっちに帰って来なかったので、俺や赤紅、紅藤が落ち込んでいると思って来てくれたんだろうなぁ…、と思い、




「智くん、ありがとう。」


と言うと、


「ん?何がだい?」


と智くんが聞いてきたので、




「今日は気を遣わせてしまったね。

潤がそっち(おおみ屋工房)に泊まると言ったから…。」


と言うと、



「ああ…。

でも、俺は翔くんと飲みたかったから来たんだよ。

最近翔くん忙しかったし、なかなか一緒に飲む機会もなかったしな。」




「潤の事で俺もいっぱいいっぱいだったからね…。」



「ふふふ。

にしても潤は相変わらず自由だよなー。」
 



「まあ、潤らしいけどね。」




「翔くんも大変だよなー。

潤に振り回されてー。」
  



と話していると赤紅がやって来て、






「智様ーっ!!

明日はこれよりも、もっと美味しい穴子を買って来てくださいよーっ!!」


と智くんに言うと、智くんはパンッと胸を叩いて、



「赤紅、大丈夫だ。

美味い穴子を花浅葱に頼んでおくから。

任せろっ!!」

と言うと赤紅は、




「智様ーっ!!お願いしますっ!!」

と頭をペコリと下げ、自分達の席へと戻って行った。








智くんは、ちゃぶ台を囲んで穴子を頬張り楽しそうに食事をしている赤紅や紅藤を見ながら、




「ふふ。赤紅のヤツ、俺達があんまりにも『穴子が美味しい、美味しい、』って言うもんだから潤に食べさせる穴子の味が心配になったんだろうな。」

と可笑しそうに言った。



「ぷはっ。そんな美味しい穴子を赤紅達も食べてしまっているから、潤の分はもっと美味しいのを用意しないといけないとでも思ったんだろうね。」


そういえば赤紅は今朝、潤の好物の穴子を用意する、と張り切っていたもんな…。







可笑しげに赤紅や紅藤を見つめていた智くんが俺の方を向き、




「紅藤も元気になって安心したし、ヘソ曲げていた赤紅もご機嫌になってよかったな。」


と言った後、





「…翔くんも元気そうでなりよりだ…。」
  


とポツリと呟き、いつものふんわりとした優しい笑顔で微笑んだ。





⭐to be continued⭐