おおみ屋工房を後にしてのどかな景色の中、車を走らせていると雨がポツポツと降ってきた。
「あれー?
今日も天気予報は晴れだったのにおかしいねー?」
と相葉さんが言った。
「ふーん。
天気予報は晴れ…」
…だったんだ?
と言おうとして、ハッとして車の窓の外に降る雨を見た。
まさかね…?
車の窓をスーーっと下ろして開け、窓の外に手を出してみた。
すると雨は俺の手を避けて降っていた。
「んふふふ…。
相葉さん、Jの雨だよ。」
と言うと、
「ああ…。
Jちゃんが、俺たちをお見送りしてくれているんだね。」
くふふふふふ、と相葉さんが目を細めて楽しそうに笑った。
雨を見つめながら、
「相葉さん、来年のJと〝鳥さん〟の記念日もお邪魔しようか?」
と言うと、
「えっ!?
翔ちゃん、嫌がるんじゃないの…?」
相葉さんが心配そうな顔をした。
「いいのよ。
だって俺たちの記念日でもあるんだから。」
と言うと相葉さんが急に、
「あーーーーっ!!!」
と大声を出すのでビックリした。
「あーーーーっ!!!」
と大声を出すのでビックリした。
「何よ。急に大きな声を出して。」
「にのちゃん、あったまいいー!!
そうだよ!!そうだよねっ!?」
「くふふふふふ。
楽しみだねー、にのちゃんっ!!」
と言いながらこちらを見る相葉さんは、顔と一緒にハンドルも左に切っていた。
「ちょっとっ!!相葉さんっ!!危ないっ!!
前見てっ!!前っ!!」
「ああーっ!!にのちゃん、ごめん、ごめん。」
と言いながらこちらを向くので、またハンドルを左に切りるので車が左にグインと揺れるので、
「ああーっ!!にのちゃん、ごめん、ごめん。」
と言いながらこちらを向くので、またハンドルを左に切りるので車が左にグインと揺れるので、
「相葉さん、いいからっ!!
前見て運転してっ!!」
と相葉さんの顔をグイッと持って前に向かせた。
「んふふふふふ。」
「笑ってる場合じゃないからっ!!
危ないからっ!!」
「はーーーいっ!!」
「絶対に反省してないよねっ!?」
こんなやり取りをしていると、相葉さんのお陰でほんの少し寂しかった気持ちが、楽になるんだよね。
来年、Jと〝鳥さん〟のもとに訪れて、喜んでくれるJとムスッとして面白くなさそうな顔をしてふてくされる〝鳥さん〟を想像すると、今から笑えてしまうよね。
こうして、Jの降らしてくれる雨に見守られながら、俺たちは長い長い道のりを交代しながら車の運転をして家路に着いた。
「到着ーっ!!
にのちゃん、一旦車を家に置いてからまた来るね。」
「うん、わかった。
待ってるね。」
と言い相葉さんの運転する車を見送った。
「さてと。」
アパートの自分の部屋へと向かい、玄関の鍵を開けて中に入り、
「ただいまー。」
と言いながら部屋に入るといつものクセで、
「Jー、帰った…よ…。」
と言ってしまった自分に、
「って、Jはいないんじゃん…。
はは、俺何言ってるんだろうねー。」
1人でツッコミを入れていた…。
今朝まで当たり前のようにこの部屋にいたJがいない事が、急にまた寂しく感じてしまい、荷物を置くとすぐにベランダへ出て降り注ぐ雨に手を伸ばして、
「J、ありがとう。
俺、もうアパートに着いたよ。」
そう言い、俺の手を避けて降る雨をジッと眺めていた。
なかなか止まない雨に、
「ふふ。
そっか、相葉さん待ちかな?」
と呟き目を閉じると、遠い昔に出会った着物姿の天狗の潤くんの姿が浮かんできた。
「…忘れてたのがウソみたいだね…。」
《この雨はかずを守る為に降らしてるんだよ。
君に降らす雨だよ…。》
幼き日にJ、君は微笑みながら俺にそう言ったよね…?
J、君の降らす雨は優しい雨。
君の降らす雨は俺を守ってくれる雨。
そして、君の大切な人たちを守るための雨…。
君の事を思い出させてくれてありがとう、J。
今度はもう君と過ごした大切な時間(とき)を、忘れないよ…。
《かず、君に降らす雨だよ。》
うん、また俺の為に降らしてくれる雨の中で会おうね、J。
君にまた会える日を楽しみにしているよ。
「にのちゃん…。」
気がつくといつの間にか相葉さんが俺の横に立っていた。
相葉さんはそっと俺の手を取り、ギュッと握りしめると、
「にのちゃん、またJちゃんに会えるから、大丈夫だよ。」
いつものお日様のようなキラキラとした笑顔で、そう言いながら長くて綺麗な指で、俺の目からこぼれ落ちる雫をそっと拭ってくれた。
「…うん…。
相葉さんがそう言うなら、きっと会えるね。」
と言いながら空を見上げると、もう降り注ぐ雨はなく…。
その代わりに空には、綺麗な虹がかかっていた。
⭐君に降らす雨⭐
〜end〜
次回は、〝君に降らす雨〜流星の雫〜〟の続きに戻ります。
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次回は、〝君に降らす雨〜流星の雫〜〟の続きに戻ります。
あともう少しだけお付き合いいただけると、嬉しいです♫(^人^)