おおみ屋工房に到着すると先程まで降っていたJの降らす雨は止み、朝と同様お日様が出てきて空一面に青空が広がっていた。





「「「「ただいまーっ!!」」」」

と玄関を入り廊下を歩いて客間へと行くと、智さんと花浅葱さん、そして赤紅と紅藤がお茶飲みながらくつろいでいた。



「おう、帰ってきたか。」


「「おかえりなさいませっ!!」」



「おかえりなさいませ。

お茶の用意をしますね。」


と花浅葱さんが立ち上がろうとするので、


「あ、花浅葱さん。

俺たち帰る準備をするから大丈夫です。」


と言うと、


「そうですか…。

じゃあ、翔様と潤様のを用意してきますね。」


と言い、台所側の襖を開けて出て行った。





相葉さんが俺の方を見て、

 

「じゃあ、にのちゃん準備しようか。」

言うので、

 

「そうだね。」


と返事をし、客間を出て昨日寝るのに使わせて貰っていた部屋に荷物を取りに行くと、Jが俺の後をついて来ていた。

 

「J、いいよ。

客間でお茶を飲んでいなよ。」



と言うと、Jはフルフルフルと首を横に振り、



「かずといる。」

と言い、荷物をまとめている間も俺の隣にちょこんと座っていた。


あまりにも口数が少ないので、



「ふふっ。

J、どうしたのよ。」


と聞いてもフルフルッと首を横に振るだけだった。






そんなJの様子を見て、Jも俺と同じ気持ちなのかな…?

寂しくなる…よね…?

と思ったけど、〝寂しくなる〟を口に出すともっと寂しくなっちゃうと思うから、きっとJも俺と一緒で我慢してるんだろうな…。


 


少しでもJと一緒にいられるようにと、ゆっくりゆっくりと準備をしたけれど…。

 


「J、準備出来ちゃったよ…。」



「…ん。」



「行こっか…。」




「…ん。」


口を少し尖らせて子供になったようなJの手を引き、客間へと行くと既に準備が出来ていた相葉さんも〝鳥さん〟と一緒にお茶を飲みながら待っていてくれた。

  


「相葉さん、お待たせ。

準備出来たよ。」




「じゃあ、帰ろっか?

にのちゃん。」




「…うん。」


と言い、襖を開けて廊下に出てから玄関へと向かった。







皆んながお見送りに出てきてくれて、智さんと花浅葱さんが、


「気をつけて帰れよ。」


「またお2人で遊びに来てくださいね。」

と言ってくれたので、




「はい、また来ますね。」

  


「楽しかったですっ!!」

と返事をし、




「「お邪魔しました。

ありがとうございました。」」

と相葉さんと一緒に言うと、花浅葱さんが、



「あ、あとこれよかったら召し上がってください。」

と、青地にピンクの花の模様の風呂敷に包まれた物を渡された。



「これは?」



「お弁当です。

お口に合えばいいんですけど…。」




「うわぁーっ!!!

花浅葱さんのお料理はどれも美味しいから、食べるのが楽しみですっ!!」

と相葉さんが言うと、花浅葱さんは、




「ふふふ。それならよかった。」

と嬉しそうに微笑んだ。








「「和也様っ!!相葉様っ!!

お会い出来てよかったですっ!!」」

と赤紅と紅藤もお見送りに出てきてくれて、

「ありがとう。」

と言いながら、じゃれついてくる2人の頭を撫でてやっていると、






「かずっ!!」

と言いながらJが走ってきて、俺れに飛びついてきた。




「Jっ!!」

バランスを崩しそうになり、フラフラとしならJを支えて、


 
「「ありがとう。」」

と言い顔を上げるとお互いの目が合い、


んふふふふふ。

ふふふふふふ。

と笑った。




「またね、J。」

と言い、Jをギュウッと抱きしめると、



「またね、かず。」

と言い、Jもギュウッと抱きしめ返してくれた。





少し離れた所で俺たちを見守っていた〝鳥さん〟と目が合うと、〝鳥さん〟は右手をスッと上げて声を出さずに、


『またな。』


と口だけ動かしてそう言っていた。






車に乗り込むと、


「にのちゃん、出発するね。」

と言い、相葉さんが車を発進させた。




後ろを振り返ると手を振っているJの姿が見えたので、



「相葉さん、窓開けるね。」

と言い、窓を開けて手を振り返した。



Jの姿が小さくなり、見えなくなるまでずっとずっと手を振り続けた。

Jも同じようにずっとずっお手を振ってくれていた。

 



後ろに見える景色が山や川になり、ようやく窓を閉めると、窓の外を流れていく景色をぼんやりと眺めて過ごしていた…。








⭐to be continued⭐