バサバサバサッと翼を羽ばたかせ、雨でぬかるんだ地面に降り立った。



鳥の姿のままでは流石に光の星を飛ばすのは無理なので、本来の姿に戻ろうと翼をフワリと広げて、全身を集中させていると、



「鳥サンっ!!」


と、潤の声がして、俺に近付いてくるのが見えた。






ああ…、潤…。

俺の姿を見て、俺が〝鳥サン〟だと気付いてくれるのかな…?


俺が〝翔〟だと思い出してくれるのかな…?


と思いながら、目を瞑り少しずつ、少しずつ、ゆっくりと姿を戻していった。






そっと目を開けると、そこには澄んだ綺麗な瞳で俺をジッと見つめる潤の姿があり、首を傾げながら、





「鳥サン…ナの…?」

と問いかけてきた。








ああ…。

俺が〝鳥さん〟だと気付いてくれたんだね、潤…。

ありがとう…。




潤が気付いてくれた事が嬉しくて、思わず顔がほころぶのが自分でもわかった。






「そうだよ。じゅ…じゃなかった、J。」

と答えると、潤がニッコリと微笑んでくれた。






「それよりもJ。雨を止めてもらってもいいかな?」

と、潤に言うと、潤は、



「雨?止メル…?」

と不思議そうに俺に聞いてきた。




「そう。この雨はJが降らせているんだよ。

無意識だったのかな…?」


と言うと、何の事だかわからない様子の潤が、


「ンー?」

と、考えながら首を傾げた。



「J、手を貸して。」


と言うと、潤が右手をゆっくりと俺に差し出してくれた。




久しぶりに触れる潤に緊張して自分の手が震えるのを必死に抑えながら、潤の白くて綺麗な手をそっと取り、



「こっちもいい?」

と言い、潤の反対側の手も取り、向かい合って両手を繋いだ状態で、





「大丈夫だからね、J。怖くないよ。

俺の全ての愛を込めて守ってあげるから。

だから安心して。」




と潤を怖がらせないようにゆっくりと、そして俺を思い出して欲しいと言う気持ちを込めて、指輪に刻まれた言葉を口にした。






潤と繋いだ手に光の妖力を送り込むと、繋がれた手が光り輝き始めた。



潤と繋いだ手に流れるその光を空高く舞い上がらせ、光の星が空で弾け光の雨となって地上に舞い降りてきた。



潤の雨の結界の代わりに俺の光の星を降らせて光の結界を張ると、先程まで降っていた雨はピタッと止み、キラキラとした星の光たちが大地を覆い尽くしながら雨を含んでぬかるんでいた足元を乾かしていった。






「これで傘をささなくても大丈夫だよ。」

と潤の手を握ったままニッコリと微笑み、俺と潤を見守っていた和也とイケメンくんに声をかけた。




「あ、はい…。」


と返事をして傘をたたみながら和也とイケメンくんは周りをキョロキョロと見渡していた。









「さてと…。」


と言いながら、和也を見つめて、



「和也、智和からの贈り物は持ってきている?」

と言うと、和也は、



「持ってきてるよ。」


と言って、腕時計を俺の方に向けて見せてくれた。



時計を確認し、

「よし。」

と言い、両手を繋いでいる潤に、



「J、手を離してもいいかな?」


と聞いた。





本当はこのままずっと潤と手を繋いでいたいのだが…。





潤がコクリと頷くのを確認してから、そっと潤から手を離し和也に近づいた。


和也の腕にはめられている時計の文字盤をのぞき込み、時間を確認をし、




「そろそろだな。」

と言った。



時計の針は十時少し前を指していて、智和の謎解きの手紙に書いてあった〝二十二時〟まであともう少しだ。





さあ、これから智和からの和也への贈り物、〝和也の二十歳のお祝い〟の始まりだ。






⭐to be continued⭐