暫く花浅葱と話をしていると、客間の襖がスッと開き、


「翔、待たせてすまなかったな。」


と言いながら、藍色の作務衣を着て頭に手拭いを巻いた智和が入ってきた。





「いや。花浅葱が相手をしてくれていたし、美味しいわらび餅もご馳走になっていたから大丈夫だよ。」



「ああ、潤のお気に入りだな。」

と言いながら智和は俺の向かい側に座った。





「あ、師匠、直ぐにお茶を持ってきますね。」


と花浅葱が立ち上がり客間から出て行き、直ぐに戻って来て、







「はい、師匠お待たせしました。」


と、智和の前に麦茶の入った硝子のコップとわらび餅の入った硝子の器を置き、俺の前にも麦茶の入った硝子のコップを置き、飲み干した硝子のコップを下げながら、



「翔様もおかわりどうぞ。

ごゆっくりしていってくださいね。」


とニッコリ微笑み、花浅葱は客間から出て行った。











花浅葱の用意してくれた麦茶をひと口飲み、



「ところで話って何だい?」


智和に問うと、


「…翔に頼みがあるんだ…。」

と答えた。



「頼み…?」


「ああ…。先日見せてもらった光の星の流れ星を、和也が二十歳になった時に二十歳のお祝いとして見せてやりたいんだが…。」


「あれは…。」

と言いかけると智和が、


「潤の為にやっている事は重々承知している。でも、和也にも見せてやりたいんだ。」


と言い、俺の近くにやって来て正座をし、


「翔、頼むっ!!」

と頭を下げてきた。



「智和、頭を上げてくれ。」


と言い、頭を下げている智和の肩に手を置き、身体を起こしてやった。


「…儂はもう先が長くない…。きっと生きている間には和也の二十歳のお祝いはしてやれないと思う…。

だから…せめて和也の思い出に残る二十歳のお祝いをしてやりたいんだ…。」



「智和…。」



智和自身も自分の命が長くない事に気付いていたか…。


大切な人を残してこの世を去る智和の事を考えると、胸が締め付けられる思いだった。








⭐to be continued⭐