その数日後、おおみ屋工房から帰ってきた子供の姿をした潤が、



「しょおくん…。

智和が今度しょおくんと話がしたいと言ってるんだけど、無理かな…?」

と言ってきた。



「智和が俺に話がある…?」



「うん。そうみたい。」



「内容は?」



「んー。分からない。」







何となく嫌な予感しかしなかったが智和と会う事を承諾し、後日おおみ屋工房へと向かった。










おおみ屋工房に到着し、玄関に取り付けてある呼び鈴を、


♫ピーンポーン♫

と鳴らすと、



「はーい。少々お待ち下さいー。」

という声がして、花浅葱が出てきた。




数年前から俺の従兄弟の智くんとその使い魔の花浅葱は智和の弟子入りをしていて、智くんは智和から時計作りを教わっており、花浅葱はその手伝いと大宮家の家事全般をしていた。


 

「あ、翔様、こんにちは。」



「花浅葱、こんにちは。」



「あれ?今日は翔様お一人なんですか?」



俺の後ろをキョロキョロと見ながら、花浅葱が聞いてきたので、



「ああ。智和が俺と二人で話がしたいと言ってるみたいで、今日は俺一人なんだよ。」

と、答えた。




「そうでしたか。

師匠は今、智様と一緒に作業中なので、どうぞ中でお待ち下さい。」


と、花浅葱に客間へと案内をされた。






「どうぞ此処でお待ちください。

すぐにお茶の用意をしてきますね。」



「花浅葱、お構いなく…。」


と言うと、




「外は暑いので、冷たい麦茶でも飲んでいってくださいよ。」


花浅葱はニッコリと微笑み客間から出て行った。








暫くするとコンコンと襖を叩く音がして襖の扉がスッと開くと、お盆を手にした花浅葱が客間に戻って来た。



「翔様、お待たせしました。」


ちゃぶ台の上に硝子のコップに入った麦茶と硝子の器に入ったわらび餅がコトンと置かれ、


「宜しけれ召上がってくださいね。」



「ではお言葉に甘えていただくよ。

いただきます。」


麦茶を一口飲んだ後にわらび餅を頬張り、


「んまっ!!」


と言いながら次々とわらび餅を口に運ぶと、花浅葱がクスクスと笑いながら、



「翔様は本当に美味しそうに召し上がりますよね。

そのわらび餅は潤様のお気に入りなんですよ。」


と言った。




「潤の?

そういえば潤はここの所ところずっと此方にお邪魔してるんじゃ…。」



「はい、潤様は毎日此方に通って来ていますよ。

でも、潤様のお陰で師匠も毎日楽しそうなので助かっているんですよ。」


ふふふふふ。

と花浅葱は俺の方を見て微笑んだ。










⭐to be continued⭐