そうこうしていると細い道を抜け、ようやくおおみ屋工房到着した。
と言う声が聞こえて後ろ髪を引かれる気持ちだったが、
朝御飯を食べ終わった後縁側に移動して、仰向けになって暫くボーーーッと空を眺めていた。
青空に積雲が広がっており、この雲が現れるのは好天の証だがきっとこの後天候が乱れるんだろうな…。
流れて行く雲を目で追いながら、ずっと空を眺めていた。
暫くそうしていると、秋に雨が降る前に現れるうろこ雲が少しずつ空に浮かび広がり始めた。
「うろこ雲っ!?」
と言いながらガバッと起き上がり、空に浮かぶ雲を再度確認すると、やはりうろこ雲だっ!!
秋ではないのにうろこ雲が現れるという事は…。
潤が近づいて来ている証拠だ。
ここ最近はずっと潤が降らしている雨の結界に向かって行っていたので見る事がなかったが、今日は潤からやって来るので、潤の雨の結界を張る前に現れるうろこ雲が空に現れたようだ…。
千里眼で潤達の乗った車がどの辺りにいるのか見てみると、おおみ屋工房に向かって来ているが少し道に迷っているようだった…。
「そろそろ道先案内人をしてくるか…。」
と呟き、
「赤紅、薄紅、ちょっと出かけてくるからっ!!」
と、縁側から赤紅と薄紅がいるであろう土間に向かって叫び、鳥へと姿を変えた。
パタパタと廊下を走って赤紅と薄紅がやって来て、
「「翔様、行ってらっしゃいませっ!!」」
〈行ッテクル。〉
二人に見送られ、屋敷を後にした。
バサバサッと翼を羽ばたかせ、空を飛んでいると雨雲が増えてきた。
雨雲の間を飛んでいると、雨がポツリポツリと降り始めた。
濡れる事のない雨が…。
その雨空を翼を羽ばたかせ雨の強くなる方向に向かって飛びながら、地上を見渡していると、おおみ屋工房へと続く細くて整備のされていない道に一台の車を発見した。
運転しているのは和也で、慣れない山道と見える景色は山や川ばかりで変化のない景色が続いているし生憎の雨模様なのもあってか、どうやら不安そうに運転をしているようだ。
空から様子を見ていると、潤が俺の気配に気づいてくれたようで車の窓から俺を見てきたので潤に向けて、
〈此処カラノ道ハワカリニクイカラ、案内スルヨ。〉
と言うと、潤にはその声が聴こえたようで空を窓から見上げてコクリと頷いた。
〈次ノ道ハ右二行ッテ。〉
と言うと車は右に行き、
〈次ハソノママ真ッ直グ。〉
と言えば直進し潤が俺の声を聞きながら、和也の運転している車を誘導してくれた。
そうこうしていると細い道を抜け、ようやくおおみ屋工房到着した。
潤達を無事に案内する事が出来て安心し、その場を離れようとすると地上から潤の、
「鳥サーーン。待ッテーーっ!!」
「鳥サンーっ!!」
「鳥サンーっ!!」
と言う声が聞こえて後ろ髪を引かれる気持ちだったが、
潤…、ごめんな。
また後で会えるから。
と心の中で呟きその場を立ち去り、雨の中一旦屋敷屋敷へと戻った。
⭐to be continued⭐