朝、ロシアのサンクトペテルブルグからラトビアのリガへ到着。

到着してすぐその日の夜行バスチケット、

ポーランド、ワルシャワ行きを求める。

ちょっと訳あって急ぐのです。

ドイツの西部かオランダまでは。

 

荷物を預けリガの街を散歩。

とにかく美しい。

明るく開放感があるなと思っていたら、

街に軍服を来た人や警官がいないからか。

看板もキリル文字じゃなく、普通のアルファベットだ!

もう「P」をピーと、「H」をハ行で読んでいいのね。

最高!

しかも英語が通じる!

女性もキレイ!

子供もかわいい!

花と緑もいっぱい。

ホットドッグを食べていたら、教会の鐘が鳴って、まだお昼前かと。

 

はしゃぎすぎたのか。

今回の旅行、というよりは今までの旅行でも初めての。

盗難。

インターネットカフェに入っているほんの1時間ほどの間に、

自転車のサイクリングメーターの、ディスプレイ部分だけを盗まれた。

ショック。

悪意というもののざらざらとした手触り。

しかもあのメーターはディスプレイ部分だけを持っていっても、

全く何の役にも立たないのだ。

前輪の発信器、マグネット部分も盗まれていれば敵もアッパレと思うけれど。

しっかり前輪に残ってるし。

価値の分からない人間に持って行かれたのね。

確かに油断してた。

北京とかウランバートルなら外してネットしてたかも。

美しい街に嫌な記憶を残してしまった事を後悔する。

 

夜、バスに乗り込む際にまたモメる。

リガからポーランドのワルシャワへ。。

Euro Linesというヨーロッパ各地を結ぶバスを買った。

バックパックをバスに積み込んで、さらに自転車を乗せようとした時、

突然車掌に止められたのだ。

整理券を運転手に貼ってもらえという。

運転手がちょうど降りて来たので、シールを頼む。

「ファイブ、ユーロ」、ゆっくりそう言われる。

 

「ちょっと待ってくれ」と。

5ユーロって700円も!馬鹿げている。

サンクトペテルブルグからリガまでも同じEuro Linesのバスだったが、

荷物なんて無料だった。

その旨説明するも、

「ワンビレット、ワンラゲッジ(一つの切符に一つの荷物)」だと。

 

おいおい、こっちはわざわざEuroLinesのホームページまで見て、

「一人につき荷物は2つまで

さらにバスに余分のスペースがあれば、それ以上でも乗せる事ができる」と、

サイズまで測って調べて来ているんだ。

そう言うも所詮それは英語。

ラトビア語でもポーランンド語でもない。通じない。意味がない。

 

ラトビアラットで払えるかと交渉を始める。

それならまだ財布に残ってる。

「NO」だと。

USドルでも駄目かと。

「オンリー、ユーロ」だと。

なんでユーロだけなんだと。

ここはラトビア、目的地はポーランド、両方ユーロ国でもない。

それならそうとチケットにでも注意書きで書くべきだろうと。

やはり首をかしげられるだけ。

さらに喰らいつく。

もう夜の10時前、銀行も両替カウンターも閉まっている。

ATMでおろしてもラトビアラットで出て来てしまう。

ユーロを手に入れる手段はない。

僕はどうしたらいいと詰め寄る。

返って来たのは、荷物を置いていけとのジェスチャー。

カチンと来た。

 

オーケー。

ポーランドに着くまでこの自転車はずっと膝の上に置いておく、

そう宣言してバスに乗り込もうとする。

駄目だと掴まれ怒鳴られる。

 

既に乗り込んでいる乗客が早くしてよと呆れ顔。

仕方ない。

5ユーロくれてやろう。

 

本当はユーロの現金も持っていたのだが、

家族に特別に貰ったものだったので使いたくなかったのだ。

それに貴重品袋に入っているので、人前で広げたくなかった。

5ユーロ払い、自転車にシールを貼ってもらう。

サンキューとソーリーを笑顔で言ってバスに乗り込む。

チケットに貼ってもらった控えタグをぎちぎちに握りつぶしながら。

 

国境を越えるバスだけは、運転手や車掌と揉めてはいけない。

イミグレで何が起こるか分からない。

特にここはヨーロッパ。アジア人は目立つ。

ロシアの出国のように難癖つけられた時、

その時力になってくれるのはバスの人間だけなのだ。

 

むかつく奴もいる。

むかつく事もある。

それでもいい旅行をしよう。

 

バスが発車。

車内はガラガラ。

体がまだ、熱い。

 

こんな時は反町隆史のポイズンを歌ってみる。

「言いたい事も言えないこんな世の中は、ポイズゥン」

ついでにフォーエバーも。

「あ~、フォエバヨラァブ」

 

反町さんの歌は役に立つ。

その似非っぷりが。

何も本気な事なんてないのだ。

そのフォーエバーは夏休みくらいの永遠だろうし、

ポイズンだって5リットルくらい飲んでちょっとお腹がゴロゴロ鳴る程度の毒。

そう。

5ユーロ払っただけで、

僕は何を失った訳でも

何かが変わってしまった訳でもない。

 

深刻に考えすぎない事。

ざわめきに共鳴しない事。

大事な事は。

こんな世の中は、どうもポイズゥンらしいのだから。