梅里雪山へ。

雲南地方の最高峰。
神々が棲まう山。

打たれた。
それはあまりに神々しかったから。
美しすぎて。
震えが、止まらなかった。
怖かった。
何かが、確実に僕の体内に入って、
突き上げてきた。竜のように。


中学の時、1991年の冬休み、日中友好登山隊の遭難。
京都大学登山隊の日本人11名、
中国人6名が全員死亡という、山岳史上最悪のニュース。

当時の僕にとって、とてつもなく遠くから舞い込んできた話。
そんな山がどこにあるのか?
なぜ、そんな危険を冒してまで山に登るのか?
氷河って、C1って何?
答えは出なかったが、
その時、感じた恐怖、
それは本当は、「いつか僕もそれらがわかるようになるだろう」とそんな恐怖。
「いつか僕もあの山に赴くのではないか」という、そんな予感。

彼らの死体は1998年に発見されるまで、8年間かけて、氷河を3000メートル下ったという。
寝袋に包まったままのものが多く、おそらく夜だったのだろうと。

「秀峰大地静相照
 高潔精神在其間」

「大地あり
 美しき峰ありて
 気高き人がいて」

(遭難慰霊碑より)


梅里雪山、主峰カワカルポ6776m。
いまだ未踏峰。