僕は本当の怖がりで。
身を縮ませて、穴に隠れて震えている。
ずっと。
子供の頃から、そしてそれは今だって。

ある日、「恐怖に克つには、そこに飛び込むしかない」と、オレンジのメモ帳に書いた。

だからたとえば。
ホームレスになるのが怖くて、次の一歩が踏み出せなかった僕は、
山谷に飛び込んで、ホームレスの人達に紛れて一週間を過ごした。
ブルーテントに泊めてもらい、朝からワンカップをあおっては吐いた。

死ぬのが怖かった。
タイのエイズホスピスでワークした。
これから死んでゆく人、死んだ人をたくさん見た。
エイズ患者とご飯を分け合って、彼らの大便を処理した。

影に怯えるよりも、その恐怖の正体を捕まえる事。
それが僕のやり方だった。
恐怖のど真ん中に飛び込んでそこで見る風景、
その分だけ強くなれると信じた。

でも。
本当は違う。
本当はきっと違う。

怖れ、震え、怯える自分も受け入れる事。
克たなくていいから、ただ逃げない事。
強くなくていい。弱くてもいい。
ただ逃げない事。
受け入れる事。

だから僕には怖いものがたくさんある。