札達の町からグゲ遺跡までは徒歩のみ。歩いて8時間とも4時間とも。
日の出と共に歩き出す。水と食料を少し持って。
時々振り返って、太陽の位置を確認する。
太陽が昇った分、僕は歩いたという事。

 



ランドクルーザー。ランクル。
チベット、特に西チベットを旅行する場合、その存在は大きい。
ハイスピードで、砂塵をまき散らし駆けてゆく四輪駆動。
通常西チベットを旅行する人は、ラサで旅行会社を通してランクルをチャーターする。ラサー西チベットーラサで15日間ほど、一人3000~4000元らしい。
もちろん旅行許可証を取ってくれるので、公安に怯える事も、次の移動の心配をする必要もない。運転手とガイドつきの快適な旅。

僕のようなヒッチ派から見れば遠い存在でもある。
トラックやトラクターはヒッチできても、ランクルはなかなか止まってくれない。どんどん追い越されて、すぐに見えなくなる。コーラの空き缶を窓から放り投げながら。

歩き始めて2時間。ヒッチハイク成功、しかもランクル。
中国のテレビ局のクルー達。今回の旅行で初めてのランクル乗車。

速い。岩を踏み越えて川を突き抜けて、進んでゆく。
ソファが柔らかい。エアコン付き。
服が汚れる事もない。靴が汚れる事もない。

そんな便利さを享受しながら、なんだか少し寂しかった。
ランクルの窓から見ると、あの雄大な西チベットの自然が、
なんだかただの荒野に田舎に見える。
ヤクの群れを鞭一本で追い回す、あのかっこいい遊牧民までもが、なんだかピエロに見える。
ついさっき5分前まであの自然の中を歩いていて、一体となっていたのに。

きっと決して、あんな小さな窓からのぞけるものではないのだ。
なんだか檻の中から、外の世界をのぞいているような、
そんな寂しさを感じていた。

西チベットの広大な自然と一体となるには、体でちゃんと感じるには、
ランクルの窓は小さすぎて、
そしてあのスピードは速すぎる。

 

 

 

For Tourist 

札達への道。
ナムルルートとバルルートがあるが、主に使われているのはナムルルート。しかし現在、ダワを通って、メンシ、カイラス方面に抜ける車道が開通している。(昔はトレッキングのみだった)ただし、交通量は少ない。ダワでは軍が強烈な検問を張っている。(旅行許可は個人では下りない様子)