五体投地 

チウゴンパの手前で、五体投地(キャンチャ)でカンリンポチェを回っている家族に出会う。
夫婦に6歳くらいの女の子が一人の三人家族。

 


夫婦は五体投地で。女の子は三人分の荷物を背負い、荷物を半分ひきずりながら先を歩く。50mほど歩いて両親が追いついて来るのをずっと待っている。
両親が追いついて来たら、少し休憩、また少女だけ先を歩き、また待っている。
その繰り返し。

 

 



果てしない、そう思う。
カンリンポチェのコルラ、一周約52キロ。歩くと一泊二日くらいだが、全行程を五体投地で行くと40日かかるらしい。その間はゴンパ(寺)がない所は寒い所で野宿。ヤクの糞(燃料になる)を拾い集めながらの旅。



しばらく彼ら家族に付き添う。
五体投地はできないので、彼女の荷物を半分持ってやり、先を歩く。
そして地面を尺取り虫のように進んで来る両親を待つ。

五体投地の話はもちろん知っていたし、写真でも見ていた。
実際に見ると彼らの宗教的情熱に心を打たれるのかなぁと想像していたが、実際にはそんなことはなかった。

幸せそうに満ち足りた表情を浮かべる彼らを見ていると、

なんだかとても当たり前の風景に映った。
カイラスの西面に溶け込んだ、当たり前の風景。

両親を待っている間、少女はカンリンポチェを仰ぐ事はなかった。
ずっと背を向けていた。なんだかそれが印象的だった。