優しすぎるバドミントン

旅行を初めて、ひとり旅が寂しいと思った事はない。
ひとりで在るのが寂しい事はあっても、旅行はやっぱりひとりだと。

上海、外灘。
ここは公園、遊歩道になっていて、
早朝から上海の人々が、太極拳や気功、ダンスの練習にやって来る。

ホテルが見つからず、足が痛くなり、
重い荷物を放り出してベンチにへたり込んで。
アジア一高いテレビ塔と、朝日と、そして水を一口。

ある老夫婦のバドミントンを見ていた。
それは優しい優しいバドミントンだった。
できるだけ相手が動かなくていいように、
手の近くだけに羽を放る、ラリー目的のバドミントン。

いつまでも続く羽の往復を眺めていて、
一人旅が寂しいと、旅行に出て初めて感じた。
誰かの傍にずっといて、優しく羽を放り合う幸せ。
「ひとりになって、いったいどこまで」
どうしてこんなに寂しい事を、
僕はいつまでもしているんだろう。

「生まれたところを遠く離れて」
9ヶ月目の朝に見た、それはやさしいやさしいバドミントン。