新蔵行路をゆく。

世界地図でカシュガルを見つけたら、そう中国の一番西端、
そこから南東、タクラマカン砂漠沿いに200キロほど。
そこが叶城。中国名イエチョン、ウイグル名カールギリック。
さらに東に四キロほど行くと、そこが零公里(リンゴンリー)。
新蔵行路、「新」橿(ウイグル自治区)から西「蔵」(チベット自治区)のスタート地点となる。
ここから西チベットの阿里(アリ)まで1067キロの旅。

このルートにはいくつか難問がある。
1、高度
スタートの零公里が標高1300m、最高度地点の界山大坂付近で5300m。
怖いのは520キロ地点の奇台大坂から、500キロほど延々標高5000m地帯が続く。
途中で重度の高山病になっても、エスケープルートがない。

2、寒さ
高所ゆえの寒さ。真夏でも大雪が降る事もあるという。

3、外国人非開放地域
スタート地点の零公里を出ると、ゴールのアリまで、一切の街が外国人に非開放。
常に公安(中国の警察)の目を意識し、隠れる必要がある。

4、国境問題
正確にこの地域の地図を描くなら、何色でも塗れない、空白の地域が含まれる。
アクサイチン、(阿克賽欽)、ここは1962年の中国インドの国境紛争の舞台。
インドが気づかない内に中国が無理矢理道路を通してしまい、実効支配した。
インドは現在も領有を主張している。中国の対インド最前線地域。

5、悪路
舗装路は全長1067キロの内、僅か80キロ程度。
あとは砂利道、ダート道の悪路。

6、長時間
今までのバス最長乗車時間はイランのテヘランからトルコ、イスタンブールまでの37時間だが、
余裕でそれを越える。3泊4日、70時間とも。座り続けられるか。

7、ヒッチハイク
最近まで公共の交通機関はなく、トラックのヒッチハイクのみだった。
現在はバスが走っているが、後述するが値段が高い。
そうすると自然、ヒッチハイクすることになる。
しかし中国ではヒッチハイク自体が違法、つまりドライバーも法律違反者、
こちらも違反者。そのドライバーとの交渉が必要となる。警察などの後ろ盾はない。

つまり、
高山病に怯え、寒さに震え、公安の目を逃れ、いつ攻めて来るかしれないインド軍、、、(これは妄想)、海千山千のドライバーと交渉しながら、とんでもない悪路に70時間揺られ続ける、というルート。

チベット入りには他にもルートがあるがなぜあまり一般的でないこの新蔵行路をとるかという問題は、、、、次へ。