上手いなあ、よく出来てるなあ、という印象。
普通、こんな突拍子もない話しを書いたら、「おいおい、この登場人物、なに言っちゃってんの」っていう無理やり感が漂うものだと思うが、何故か、「ああ成るほど、そういう考え方か」と納得させられてしまう。説得力がある。
まあ、多少、つっ込み入れたくなる部分もあるが、概ね過去の物語との矛盾が無いように考えられてて、よく出来た構成になってると感心した。さすがですね。
この作品を単品で読んでたら、どう感じたか判らないけど、シリーズ通して読んでる者としては楽しめた。
以下、気になったこと・判明したこと・どうでもいいこと等、まとめ。
1.時系列
「後日談というか、今回のオチ」まで読むと、時系列的に、3月13日(暦の受験本番当日)の早朝に暦の部屋で暦が扇ちゃん相手に8月23日の夜から8月24日の夜までの出来事を話すという体裁になっていることが判る。
2.8月23日夜9時
暦と神原は学習塾後で会っていた。
これは、猫物語(白)の中で羽川が、
『「そう、私は知っている――その火事が、阿良々木くんや神原さんとは何の関係もなく起きたものであることを」
知っている。
私は知らないけれど。
私じゃない私が、知っている。
多分昨夜――私がブラック羽川となったときに、見て、知っている。彼ら二人の無事を知っている。
阿良々木くんと神原さんは、きっと合流したあとで、場所を他に移したのであろうことを知っている――それと火事とは、ほぼ別問題であることを知っている。』
と言っていたので、学習塾後炎上時に暦と神原は既に場所を他に移していたと思っていたのだが、違ってた。
『「もしも羽川翼ちゃんと生きて再会できたら、ちゃんとお礼を言っておきなさい──ん? これも何を言っているかわからないかい? だったらまだ気にしなくていい──きみの友人は、意図せずともきみを守ってしまう、悲しい女の子だというだけのことだ。」』
3.臥煙駿河
『「旧姓臥煙駿河。臥煙さんのお姉さんが籍を入れてからは神原駿河──」』
駿河の母は、臥煙伊豆湖の姉、臥煙遠江だけど、血縁上の父は? 子供が生まれたから籍を入れたっていうのともちょっとニュアンスが違うような? この言い回しだと臥煙駿河で生活してた時間があるみたいに聞こえるけど……
4.8月24日朝
猫物語(白)の中で羽川とエピソードが出くわしたところに伊豆湖が現れて
『「やあ、ソード――いつまで経っても待ち合わせ場所に来てくれないからこちらから迎えに来たよ。するとどうやらナンパの最中だったようで、お邪魔をしてしまったのだったら悪かった」』
『「その思い出話とやらが終わったのなら、行こうじゃないか――ことは刻一刻と一刻を争うんだ。追っ付け余接も来るだろうが、それを待ってもいられない」』
このシーンで斧乃木ちゃんが伊豆湖と一緒に居なかった理由が判明した。伊豆湖に頼まれてお札を入手するために遠出していたとのこと。暦が伊豆湖からあずかっていて千石に食われた例のアレだ。
5.暦と忍のペアリング
伊豆湖の仕事を手伝う前にペアリング戻してもらってるはずだと思っていたが実際は、ペアリングを戻さずに伊豆湖の仕事を手伝っていた。
6.初代怪異殺し(キスショットの最初の眷属)の名前
死屍累 生死郎(ししるい せいしろう)
7.生死郎が脱いだ甲冑
『「だって──その鎧もまた、初代怪異殺しの『血肉』であり『骨身』でしょう? だったら、その鎧をどろどろに溶かして、そしてその上で鍛造すれば、更にもう一振り、作れるかもしれないじゃあないですか──妖刀『心渡』が」
どころか、あわよくば。
小太刀『夢渡』も──と、扇ちゃん。』
どうなんでしょうね。暦物語の「こよみデッド」で伊豆湖がオリジナルの「心渡」を持っていたことになってたみたいだけど、そういうことなんですかねえ?
暦は甲冑も忍が食べたんだと思うって言ってたから、ミスリードっぽい気もするし。忍が持ってるのがレプリカなら初代怪異殺しの『血肉』であり『骨身』である鎧から作ってもレプリカでしょう? オリジナルとは言えないと思うのだが……
8.あとがき
『次巻で物語シリーズは完結するのですが、その後、『続・終物語』が出るのはかねてからの予告通りですので、そこでは驚かないでくださいね。扇ちゃんは悪くない。』
どゆこと? 次巻の『終物語(下)』で完結ってことは、『続・終物語』は何の話しなんだろ。怪異が出てこない話しとかなのかな? 「扇ちゃんは悪くない」って何だ? 文脈通りに受け取れば、扇ちゃんのせいで巻数が増えたんじゃないよって意味だけど、そんなこと感じる読者がいるのかなあ。扇ちゃんは悪者じゃないよっていうミスリードにもとれるけど。
『「構いませんとも。そのために私が、上巻と下巻の中間に、こうしてわざわざ中巻をねじ込ん──もとい、ご用意したのですから」』
単純にコレのフォローだったのかなあ。