仁阿弥道八(にんなみどうはち Dohachi Ninnami)
天明3年―安政2年
江戸時代後期に活躍した陶工の巨匠です。
青木木米・永樂保全とともに「京焼の幕末三名人」と称されている名陶工です。
本名は二代・高橋道八。
「仁阿弥」とは号であり「にんなみ」または「にんあみ」と読み、
本名である二代・高橋道八より、仁阿弥道八の名が一般的に知られています。
仁阿弥とは、野々村仁清ゆかりの仁和寺から「仁」の一字を、
そして醍醐寺三宝院から「阿弥」の二字を賜り、号として称したとされています。
父である初代・高橋道八と、巨匠・奥田穎川に作陶を学び、
現代まで続く陶芸家の名門・高橋道八家の中でも突出した才能を発揮した人物なのです。
そんな天才陶工・仁阿弥道八が作ったとされる「獅子香炉」です。
高さはおよそ21センチ。
最大径はおよそ15センチです。
真正面です。
三つ足の香炉であり、胴の側面には前後に大きな花弁、
左右にはそれぞれ蕾が彫り込まれてます。
蓋には見事な造形の獅子が乗っています。
もう一方の蕾となります。
長年に渡り、よほど大事に愛用されてきたのか、
経年による汚れもかなり目立ちます。
ま、骨董品としては、その方が味わいが深くなると言うものですけどね。
獅子とはライオンの事でもありますが、
そのライオンを元にした空想上の生物でもあります。
いわゆる幻獣ですね。
今にも飛びかからんとする、この躍動感あふれる造形が素晴らしい!
蓋を取った状態で、本体を上から見ています。
やはり、そうとう愛用されていたのでしょう。
内部にはまだかすかに灰が残ってます。
三つ足を下から見ています。
底には銘「道八」印が押されています。
銘の拡大です。
少し擦れていますが、「道八」という印が押されているのがわかります。
左側は参考資料。
先日、サントリー美術館で開催された「天才陶工 仁阿弥道八」展の図録から
逸翁美術館 所蔵の仁阿弥道八作品の落款部分画像です。
参考資料と当作品の印自体は別のものですが、
同じ図録に載っている二代・高橋道八の銘・印と比べてみても
「道」と「八」の漢字のバランスなど
この銘は仁阿弥道八のものであると考えます。
この獅子や花弁といった見事なる素晴らしい造形、
そして本物だからこそ長い間大事に愛用されてきたという痕跡、
底に記された仁阿弥道八のものと思しき銘などから
この香炉は仁阿弥道八の手による本物であると考えます。
しかし、残念ながら入手当初から箱がありません。
保管のことも考えたら箱を用意しなければいけません。