札幌へ帰ってきてすぐ、息子のGF(ガールフレンド)から電話がかかってきました。

いつもはLINEで連絡を取り合っているので、「電話なんて何かあったのでは…」と嫌な予感がしました。

息子のアルバイト先から、「息子さんが救急車で病院に搬送されたので来てください」というメールが届いたというのです。

以前、息子は学費を狙った詐欺メール(スキャム)に遭いかけたことがありました。

そのため彼女は、「今回のメールも詐欺なのか、それとも本当なのか判断できない」と思い、すぐに私へ電話をしてきてくれたのでした。

まずは病院へ向かう前に、息子のアルバイト先へ連絡し、そのメールが本当に勤務先から送られたものなのか確認してもらうよう彼女に伝えました。

しかし、アルバイト先からは「個人情報保護のため、お答えすることはできません」と言われてしまったそうです。

そこで私は、彼女にはひとまず自宅で待機してもらい、今度は私自身がアルバイト先へ直接電話をかけました。

まずは、オーナーにつないでいただきました。

(私は、大切な問題が起きたときは、マネージャーやオーナーなど、責任のある立場の方と直接お話しするのが一番早いと思っています。)

オーナーも、「カナダには個人情報保護法があるため、ご家族であっても簡単には情報をお伝えすることはできません」とおっしゃいました。

それでも、どうしても息子の無事だけは確認したかった私は、必死にこう伝えました。

「私は今、日本から電話をしています。息子とは約8,000キロも離れています。

息子が救急車で病院へ運ばれたと聞き、心配でいても立ってもいられません。

もし、これがあなたのお母さんだったら…。

同じ状況で、何も分からずに待つしかないとしたら、どんなお気持ちになるか想像していただけませんか。」

電話の向こうで、オーナーはしばらく黙っていました。

そして、静かに一言だけ伝えてくれました。

“He’s fine.That’s all I can say. For anything else, please ask his girlfriend.”
(彼は大丈夫です。それ以上のことはお話しできません。詳しいことは彼女に聞いてください。)

その一言を聞いた瞬間、張りつめていた気持ちが少しだけほどけました。

「本当にありがとうございます。貴方のお母さまも、貴方のような息子を育て本当に誇りに思ってみえると思います。ご無理を言い本当に申し訳ありませんでした。」

そうお礼を伝えて電話を切り、すぐに彼女へ連絡しました。


【息子は大丈夫なようなので気をつけて病院に向かってね。】

しばらくして、GFちゃんの電話から、息子の声が聞こえました。

「心配をおかけして申し訳ありませんでした。」っと息子。

彼の声を聞いた瞬間、安心した気持ちで半泣きになりました。

でも同時に……怒りも込み上げてきました💢💢💢

このところ息子は、Commercial License(事業用操縦士免許)の試験直前で、1日に何回もフライト訓練をしていました。

その忙しさに加え、暑さによる熱中症、貧血、そして睡眠不足。

いくつもの疲労が重なり、アルバイト中に倒れてしまい、そのまま病院へ運ばれたそうです。

遠く日本にいる母親としては、無事だった安心感と、「どうしてもっと自分の体を大切にしなかったの」という心配と怒りが入り混じった瞬間でした。

留学6年目。

こんなに怖い思いをしたのは、初めてでした。

遠く日本から、離れた場所で暮らす息子。
何かあった時に、すぐ駆けつけることもできない距離の怖さを、改めて感じました。

でも、心のどこかでは「カナディアンなら、きっと私の気持ちを理解してくれる」と信じていました。

もちろん、ルールを守ることは大切です。

個人情報保護の法律があり、勝手に情報を伝えることができない。それは守らなければいけないルールです。

でも、人の命や安全に関わるような緊急時には、状況に応じた対応(exception)が必要になることもあります。

それが、私がカナダで6年間暮らして感じた「カナダらしさ」でもありました。

ルールを大切にしながらも、目の前の人の気持ちに寄り添う。

今回、オーナーが最後に「He’s fine.」と伝えてくれた一言は、単なる情報ではなく、遠く離れた母親への思いやりだったのだと思います。

そして今回、改めて感じたことがあります。

私が子どもたちに伝えなければならないのは、英語だけではありません。

異文化を理解することだけでもありません。

相手を思いやり、**respect(敬意)**の気持ちを持って話すこと。

自分の思いを相手に伝え、相手の思いにも耳を傾けること。

そんな「人と人とのコミュニケーション」の大切さです。

オンライン学習やデジタル教材は、とても便利です。

でも、それだけでは本当のコミュニケーションは育ちません。

人の表情を見て、声の温度を感じ、相手の気持ちを想像しながら言葉を選ぶ。

そんな経験こそが、人を育てるのだと思います。

だから私は、英語を教える講師である前に、子どもたちが安心して自分の夢や願い、悩みを話せる存在でありたい。

そして、保護者の皆さまとも信頼関係を築きながら、一人ひとりの成長を一緒に見守っていける教室でありたい。

今回の出来事を通して、それこそが私に与えられた使命なのだと、改めて実感しました。

これからも、英語の先にある「人を育てる教育」を大切にしながら、子どもたちと歩んでいきたいと思います。

7月は、本当にいろいろなことが重なり、心の整理をするのが難しい1か月でした。

それでも、おかげさまで父は退院することができました。まだ通院は続きますが、家で過ごせるようになったことに感謝しています。

息子も、日々40℃を超える暑さの中で訓練を続けています。山火事(Bush Fire)の影響で突然フライトが中止になる日もあるようですが、Commercial Licenseの試験に向けて、一歩ずつ前に進んでいます。

子どもと離れて暮らすことの不安や心配。

そして、親が病気になったことで改めて気づいた、離れて暮らすことの切なさ。

家族が離れて暮らすということは、お互いを信じるしかない場面がたくさんあるのだと、改めて感じた1か月でした。


熊本で発生した地震。

被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りするとともに、一日も早く穏やかな日常が戻りますよう、心から願っています。

毎日を当たり前と思わず、大切な人が元気でいてくれることに感謝しながら、一日一日を過ごしていきたいと思います。