DJバトルへの道 vol.3
前回のvol.2は、弟のゆーじとDJユニットを組んで、チーム部門でDJバトルの日本一を目指した歴史を振り返りました。
今回は、僕が初めてソロでDJバトルに出場した時のことを書きたいと思います。
IDA JAPAN ショーカテゴリーがなくなった2年間
vol.2でも書いたのですが、2021年以降、僕たち兄弟が出場していた大会「IDA JAPAN」の主催者が変わり、ショーカテゴリーというチーム部門は、大会から外されてしまいました。
2018年から4年連続で出場しており、日本一まであと一歩というところまで結果を残したので、日本一を目指す機会がなくなったことはとても残念でした😔
そこからの2年間、変わらずDJスクールには通ってレッスンを受けていたし、毎月やっているクラブイベントの主催とDJプレイは続けていました🎧
ただ、目標とする大会がないことで、DJとしてはダラダラと惰性で無為な日々を送っていたような気がします。
(その分、オタ活は充実していたけど🙄)
僕はスクラッチが苦手なので、右手が腱鞘炎になるくらい練習したり、習得した二枚使いのパターンも増えて、総合的なスキルは上達したと思うのですが、DJバトルに出るか出ないかでは、自宅での練習やレッスンへの気合の入りようが全然違います。
また、この頃はちょうどコロナ過ということもあり、各大会が現場開催ではなくオンライン開催だったので、バトルDJ界隈は全体的にテンションが下がっていた時期でもありました。
新しいDJバトルが生まれたとな?
2023年のある時、いつものようにSDCの教室でレッスンを受けていると、師匠が
「今年から名古屋で新しいDJバトルの大会が始まるんでですよ。SDCの生徒のP君が今回出場します」
と教えてくれました。
どんな大会か聞いてみると、15分のプレイ時間で、どれだけ審査員とお客さんを盛り上げたか、選曲やスキルを競う大会とのこと。
それが「J-SPOT GRAND PRIX」です
2019年まで開催されていた、Red Bull 3Styleのような大会だなと思いました🧐
Red Bull 3Styleは、いわゆるクラブDJがスキルより選曲、独創性やパフォーマンス、観客の盛り上がりを競う大会。
僕たちが出ていたIDAや、DMCとは同じバトルでもかなり方向性が異なります。
誤解を恐れずに言うと、チャラ箱(=ナンパ目的のクラブ)のクラブDJが、どれだけ客を盛り上げたかを競う大会です。
【Red Bull 3Styleの様子。vol.2に載せたDMCやIDAとは全く雰囲気が違うのがお分かりいただけるだろうか(チャラい)(しかし上手い)】
その大会名の通り、スポンサーがあのRed bullなので、日本大会だけでなく世界大会もかなり盛り上がるし、世界チャンピオンになれば得られるプロップス(尊敬の念)はかなり高いバトルではありました🏆
「俺はクラブDJではないし、凝った選曲とか盛り上げとかは得意ではないんだよな~」
と、その時は思っていました。
J-SPOT、なかなか面白いじゃねえか
このJ-SPOT、他のDJバトルとは根本的に違う点があって、
動画エントリーで日本中からベスト16に選ばれたDJが、毎月1対1でバトルを行い、勝ち残ったDJ8人が決勝へ進めるというタイマン方式🤜💥
ベスト16からベスト8へ絞られるサバイバルバトルが、毎月名古屋のクラブで開催されるのです。
DMCやIDAなど他の大会は、地方予選などはあるものの、基本的には年に一回の一発勝負。
毎月同じ大会が、しかも1対1のタイマンバトルのみで行われるというのは、かなり贅沢な興行✨
しかも、毎月のバトルの様子が、後日YouTubeで公開されるのです📺
さらには、大会当日の様子だけでなく、出場したDJが送った5分間のエントリー動画を主催者の人達が見て、講評する動画もアップされたり、大会前には出場DJへのインタビューも撮影されるという、かなり凝った演出も興味を引きました。
【予選バトルはこんな感じ。2023年のチャンピオンkidとFreshNess-Cutのバトルの様子。二人ともレベルが高い】
相当に気合の入った、今までにない新しいDJバトルの運営方法だなと思いました。
とにかく手間をかけているし、大会を盛り上げようという本気度が伝わってくる。
「ふーん、おもしれーバトルじゃん」
同じDJスクール「SDC」のP君が出場するということもあり、毎月のバトルをYouTubeでチェックするようになります。
「なんだか、俺でも行けそうな気がする〜」
そうだ、J-SPOTに出てやろう
チーム部門で出れるDJバトルがない以上、ソロで勝負するしかない。
僕はこのJ-SPOTに出場することを決意しました🔥
J-SPOTは2023年に始まったばかりの大会ということもあり、まだ世間の認知度が低いため、有名なバトルDJは出場していませんでした。
俺はソロのバトルDJとしてまだレベルが低いけど、IDAやDMCなどのハイレベルな大会に出るよりは、J-SPOTならいける可能性があるのではないか?
そう考えて、2024年のJ-SPOTにエントリーすることにしました!
とはいえ、2023年に出場していだDJたちの動画を見ると、曲のつなぎはかなり凝っているし、スクラッチが上手いクラブDJが集まっている印象でした。
J-SPOT GRAND PRIX 2023が12月に終了し、すぐに2024大会のエントリーが開始。
エントリー期間は、12月末から1月末までと、わずか1か月しかありません。
エントリー方法は、5分間のDJルーティン動画を自分で撮影。
動画をYouTubeにアップして大会運営に送り、選考期間を経て、大会に出場する16人が発表されるという方式です。
1か月間、師匠と一緒に5分間のルーティンを必死で作り上げ、締切の1月末ギリギリまで練習しまくり、なんとか仕上げてエントリー動画を送りました。
選考の結果、なんとかベスト16に残り、J-SPOT2024に出場することが決まりました👏
SDCからも数名エントリーしましたが、16人に残った人もいれば、落ちた人もいました。
主催者によると、エントリーしたDJの数は、去年の倍以上だったらしいです。
ソロでの初めての大会出場、決まったときは本当に嬉しかった💪💪
【ジョンと対戦相手のrusk the DJのエントリー動画解説。
YouTubeで講評される機会はなかなかないので、ぜひ見てみてください👀】
バトルの準備が一番しんどい💦
J-SPOT GRAND PRIX 2024への出場が決定。
4月から11月まで毎月トーナメント方式で1対1のバトルが行われ、ファーストラウンドを勝ち上がった8人と去年のチャンピオンkidの合計9名が、12月のファイナルで戦うという方式。
【J-SPOT2024のトーナメント表】
僕のファーストラウンドは10/12に決まりました。
対戦相手は、去年のJ-SPOTにも出場し、決勝戦まで残った実力者rusk the DJ。
相手にとって不足なし。ていうか間違いなく強い。
3月に出場が決まり、10月がバトル本番ということで、準備期間は7か月ほどありましたが、なんせ初めて出るソロのバトル。
今まで出ていたIDAのように、好きな曲を崩してルーティンを作ることよりも、よりクラブプレイ(曲のつなぎ、選曲、客の盛り上げ、もちろんスキルも求められる)に特化した15分間を作るのは、並大抵の難しさではない。
IDAのショーカテゴリーはチームで6分間。
今回のJ-SPOTは、1人で15分間。
チームの時は2人でのプレイなので、ゆーじのターンに休む時間もあったし、2人で一緒に選曲やルーティンを考える事ができたけど、今回は全て1人で考えるしかない。
プレイ中も休む暇は一瞬もありません。
「選曲と曲のつなぎがキモ」
僕は歩いて職場まで通勤しているのですが、毎日通勤時間にイヤホンを耳にさし、ルーティンで使う曲の候補探しを始めました。
Spotifyで様々なプレイリストを検索し、自分が知っている曲、知らない曲も含め、短期間でいうと一生で一番音楽を聴きまくりました🎧
音楽のジャンル的には「HIPHOP」がメインの大会なので、とにかく洋楽のHIPHOPを聴きまくりました。
一緒にイベントをやっている若いDJ仲間に、
「今どんな曲がうけとるん?」
と教えてもらったりもしました。
HIPHOPのDJは、歌詞と歌詞に関連性を持たせて曲をつなぐ「ワードつなぎ」が重要と言われているので、決して得意ではない英語の歌詞の聞き取りも必死に頑張りました。
ワードつなぎというのは、例えばA→Bに曲をつなぐ時、Aの曲の印象に残る箇所が「Yeah」であれば、Bの曲が「Yeah」という歌詞から始まるよう、関連性を持って工夫してつなぐという方法です。
曲を聴きながら耳を研ぎ澄ませて「これは使える」というフレーズがあれば、歩きながらスマホのメモにその場で書き込んで、ルーティンに使う候補曲をせっせとため込みました✍️
SDCのレッスンの時、師匠に
「この曲とこの曲で、こうつなげたらいいと思うんですけど、どうですかね?」
とプレゼンすると、アイデア10個のうち8~9個は
「うーん、イマイチですね」
「定番すぎますね。他のDJと被るし、やっても仕方ないです」
と却下されました👎
我が師匠は、DJバトルの経験も実績も豊富な大ベテラン。
彼を納得させるには、そしてなにより相手に勝つためには、他のDJと差別化できる、そんなアイデアが必要なのです。
「これはバトルですから、有名な曲をつなぐだけではダメなんです。
とにかく工夫しないと勝てないです」
毎回心が折れそうになるほど、厳しいレッスンが続きました。
15分間のルーティンがなかなか完成せず、そのストレスで精神的に潰れそうにもなりました。
でも、せっかく出場するなら勝ちたいので、とにかく毎日音楽を聴き、選曲とつなぎを考える日々が続きました。
毎日こんなことをしていると頭が狂いそうになるので、時にはストレス発散ということで虹コンのライブやFCツアー、アーオの生誕やソロイベなど、大事なイベントには参加していました🌈
虹コンのライブを楽しみ、仲のいいオタク仲間とバカ話で笑い合い、推しのアーオに癒されないとマジでやっとられん(力説)
ただ、、、
「俺がこうやって遊んでいる間に、ライバルたちは練習に励んでいるんだろうな」
そう思うと、心の底からオタ活を楽しむこともできず、しんどい道を選んでしまったな…と思うこともしばしばありました😩
DJバトルへの挑戦。
自分がやりたい事とはいえ、単純に自分が楽しいことや、オタ活に勤しむ人生でもいいのに…
でも、対戦相手に負ける前に自分に負けたくはない🔥🔥🔥
そう自分を奮い立たせて、練習と思索の日々を過ごしました。
そして、迎えた9月も半ば。
ようやく師匠から
「いい構成だと思います。SDCから出場するDJの中でも、ジョンさんが一番頑張っていた。それは僕が一番わかってます。ミスなく普通にプレイできれば勝てると思います!」
そう言ってもらい、15分間のルーティンがついに完成しました(涙)
さらには師匠から
「やれることは全部やり切った方がいいです。自宅での練習と本番のクラブでは音の出方や機材の動き具合、すべてが違う。本番同様、クラブで練習した方がいいです」
そうアドバイスをもらったので、毎月イベントをやらせてもらっているクラブの店長にお願いし、お客さんが誰もいない早い時間帯を貸し切って、クラブのサウンドシステムで最後の追い込み練習もやりました。
今まで4回バトルに出てきたので、本番前の追い込みのしんどさは嫌というほど経験してきたけど、選曲からつなぎまで考え、その練習も含めると
「間違いなく歴代出場したバトルで今回が一番頑張ったな」
そう思えるほど、自分を追い込んで準備をしたという自負はありました。
すべてをやり切って迎えた10/12当日。
広島から新幹線に乗り、会場である名古屋のCLUB ORCAに乗り込みます🚄
~vol.4へ続く~