ドイツではまだ大晦日です。

一年を振り返って、今年読んだなかでおすすめの本2冊と、おすすめの論文3本を紹介したいと思います。

 

『時間・愛・記憶の遺伝子を求めてー生物学者シーモア・ベンザーの軌跡』 ジョナサン・ワイナー著

 

 

行動遺伝学のパイオニア、Seymour Benzerの研究人生の伝記を通して、「第一線の研究はどういうものか」「本当に価値のあるクエスチョンとはどういうものなのか」ということを考えさせられました。

2017年のノーベル生理医学賞が Jeffrey Hall, Michael Rosbash, Michael Youngの3氏の概日リズムの分子基盤に関する研究に与えられましたが、Benzerの学生だったKonopkaが時間に関する突然変異のハエを単離したところから時間生物学を含む行動遺伝学が分子生物学的な手法を用いてどう展開していったかが描かれています。

 

 

『調理場という戦場』 斉須政雄著

 


身一つでフランスに渡った若者がいくつかのレストランを渡りながら料理人として何を考え何をしどう成長していったか、フレンチシェフの斉須がエッセイ形式で振り返りながら語っていく本。

「プロとは」について考えさせられました。

研究者は料理人に似ていると思います。

見習い、○○担当、料理長、オーナーシェフといった仕事の移り方が、博士課程、ポスドク、プロジェクトリーダー、PIという研究者のキャリアと重なります。

 

 

論文

Ataman, et al., 2016, Evolution of osteocrin as an activity-regulated factor in the primate brain. Nature 539: 242-247

https://www.nature.com/articles/nature20111

著者らは霊長類特異的に神経活動依存的な発現をする遺伝子としてosteocrin(OSTN)に注目し、この霊長類特異的な発現制御がどう進化したかについて研究しました。霊長類ではOSTN遺伝子のプロモータ領域に活動依存転写因子のMEF2が結合する配列が進化し、OSTNのrepurposingが起きたことを明らかにしています。

 

 

Mery and Kawacki, 2004, The effect of learning on experimental evolution of resource preference in Drosophila melanogaster. Evolution 58: 757-767

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.0014-3820.2004.tb00409.x/abstract
10年以上の前のものですが、とても興味深い論文です。著者らはハエを用いて恒常的な環境でも学習能力は進化することを実験的に示し、さらに何を学習するかよって学習が進化を促進することも阻害することもあることを明らかにしています。

 

Stryjewski and Sorenson, 2017, Mosaic genome evolution in a recent and rapid avian radiation. Nat. Ecol. Evol. 1: 1912-1922

https://www.nature.com/articles/s41559-017-0364-7

キンパラと呼ばれる鳴禽類はごく最近に種分化し、多様な模様の種が存在します。Hybridisationが頻繁に起こり種間の遺伝的な距離が近いことから、admixture mappingと呼ばれる手法を用いて種ごとの遺伝的な違いが大きいゲノム領域をピックアップし模様の進化の遺伝的基盤を明らかにしようとした研究です。University of British ColumbiaのIrwin研究室が同じような原理を用いて羽の模様の遺伝子をマッピングした論文を2016年にCurrent Biology、2017年にPriceedings Bから出しています。ぼくはこの手法で種特異的行動の進化の遺伝子候補を狭めることができるのではないかと考えています。

 

 

2017年、振り返ると、

1月にそのまま院進するのをやめることを決めて、

2月に卒研発表、3月に卒業、

4月からニート、

5、6月治験

6、7月ドイツの大学院2つに出願して両方合格、

8月バイト、

9月の終わりに渡欧、

10月から修士、

 

と、結構場当たり的な要素が多かった年でした。

来年は今いる環境を100%活かせるように努力を惜しまないように心がけます。

では