かつて『バウンダリー』という材料開発ジャーナルがあった（コンパス社）。もともとは東北大学金属材料研究所など由緒正しい工学系の学術雑誌としてスタートしたらしい。刊行していた小林文武編集長（社長）の度量が広く深いもので、途中から何でもアリの様相を呈してきたのではないかと思う。私が小林文武氏からJICA専門家派遣中に私の携帯にイキナリ電話が掛かってきたのは、察するにタイで生活し始めた編集長が水道の水質が酷いので「糞尿でも飲んでいるんだろ！」と投稿者仲間にからかわれ、当時、バンコクに常駐していた唯一の水質問題の専門家であった私の携帯番号をJICAタイ事務所から教わったのだろうと推察する。あにはからずやタイの下水に糞尿は混ざらず「糞尿を飲んでいる」というなど絶対、あり得ない*1。

*1，タイの下水がグレイウォータだという学術的な指摘をしたのは、私たちが世界で最初であり、今でも古典的な業績として引用されている。キチンと学術的な活動をしてきた事実はご理解戴けると嬉しい：

・Biodegradation of domestic wastewater under the simulated conditions of Thailand
R. R. Giri, J. Takeuchi, H. Ozaki（2006）

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1747-6593.2005.00014.x

・Influence of night soil contamination on activated sludge microbial communities in Bangkok, Thailand
Rabindra Raj Giri , Junichi Takeuchi , Hiroaki Ozaki （2005）

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0925857405001461

※2006年の論文は一度、Water Research誌（英国）に投稿したが、日本からの投稿は日本国内の編集者が採択を決定する制度だったため却下されたため、同じ英国の雑誌に再投稿して掲載されたため同時期の投稿で掲載年が遅れたのである。

　
↑在りし日の『バウンダリー』誌の表紙（中本信忠先生が投稿した号）

日本の学術界では、科学的な観点とは全く異なる採択を決定者の所属業界との利権が絡んでいることに留意しておいて欲しい。このおぞましい体質が今でもなお存続しており、日本の随所で汚物が一斉に吹き出している状態と理解して下さい。残念です。

2001年10月号に『下水道の栄光と翳り』と言うエッセイを寄稿したのが、私と『バウンダリー』誌との馴れ初めであった。当時、現場主義の私から見たら研究者や技術者は、自分たちの持つ知識や経験に基づいて”自己完結”させてしまう欺瞞性が根強く、私としては、その風潮を何とかして打破させたいとの想い（野望）が強く芽生えていた。それは今の、マスクして手指を消毒してさえいたらコロナ禍は防げると信じ込んでいる今の日本社会の欺瞞性と瓜二つであった。日本には自然科学は不在であるかに見えてしまう。感染症は感染源から逃げている限り、未来永劫に自然免疫は獲得できないのが道理（イロハのイ）なのである。

私は頭だけの勉強をしてきても人間は育たないと捉え、あえて人間は知性だけではなく霊性も育む必要があると主張したいため、敢えてスピリチュアル系の話題を10回の連載の技術論エッセイに意図的に盛り込んだ意図である。私の目論見は成功したと思っている。ただ日本へ帰国する予定は全くなかったので、今にして想うと恥ずべき記述もないではない。が、関係者は皆、既に他界してしまっているので、恥を掻くのは私だけだから公開も厭わない（どのみち献本制度で国会図書館に永久保存だし*２）。

*２，JSTで抄録を作っている方は私の原稿を目にして「👀が・（テン）になった」であろうこと想像に難くない（笑）：

国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online国立国会図書館検索・申込オンラインサービス（略称：国立国会図書館オンライン）は、国立国会図書館の所蔵資料及び国立国会図書館で利用可能なデジタルコンテンツを検索し、各種の申込みができるサービスです。

ndlonline.ndl.go.jp

※上記のリンクが切れていたのでURLを貼り直します：
海外生活道つれづれ(1)不思議体験のはじまり | NDLサーチ | 国立国会図書館

以下から『道つれづれ』連載記事は全文が無償ダウンロード可能です：
（１）不思議体験のはじまり

道つれづれ（１）.pdf

drive.google.com

（２）ハリー・ポッターの生まれた国

（３）食べ物が与える不思議な力

残りの７編は次に続く記事の中で公開します。

「霊性を伴う知性」が求められる時代（１）