科学の前には、教員も生徒も「平等」と言える。何しろ答えを知らないのだから。そんな時は探りを入れるため、何はともかく「実験」をする。今回は、並行して進めている2つの実験経過を紹介してみよう:

1)微粒子(PM)モデルとしてのカビ胞子の選定
 空中浮遊する微粒子(particulate matter)モデルとして3種類のカビの胞子からコロニーの色、形、菌糸拡散、胞子形成など、胞子密度を培養法で計数するのに適した菌株を選定することにした。当初、胞子の粒径や形状で選定しようかと考えていたが、明確にコロニー(集落)形成する菌株を選んだ方が実験しやすいという結論に今日、至った。担当している西田くんも同意してくれた。
 生物学の分野では、しばしば実験操作の利便性の点から生物材料(教育目的では生物教材)を選定することがある。ショウジョウバエ、ゾウリムシ、センチュウなどはその例である。


↑ ブドウ由来カビ(中)は独立した集落形成

2)プラム果実から酵母分離時の糖質の添加効果
 果実の持つ糖度が低い場合、酵母が優占して発酵が進みにくい懸念があった。そのような場合、糖質を外部から添加してやれば甘みの乏しい果実でも酵母の生育が支援されるのではないかと考えた。
 酵母を含む菌類は栄養要求として高いC/N比を好み、糖質が多めであっても生育阻害を引き起こすとは考えにくかった。ところが、予想に反する結果が出た。糖質の無添加系で酵母が生育し、添加系で生育した寒天平板では全く酵母が生育しなかった。当ては、大きく外れたことになる。今回の結果には、提案した河脇祐奈さんも驚いていた。そうなった理由の解明は、いずれまた。


   ↑ 左:糖無添加、右:糖添加

いずれにしても何らかの予測を立てて実験していくものの、的中することもあれば、大きく的を外すこともある。実験は、文字通り「手探りでも、試してみる」行為なのだ。そして実験を通じて何かを学び取ることができる。これが、実験科学における「探究活動」の醍醐味と言えよう(竹内)。