数日後のNY市警刑事部屋に大人数の警官が押し寄せていた、その中心にボブがいた。
どうやらハリーから連絡があったようだ、
「カズ遅かったな、奴らの居所が分かったよ郊外の廃工場をアジトにしているらしい20分後に出発する、ハリーはスワット隊と現地で合流する」
警官40名とスワット27名が、廃工場を取り囲むボブと俺は正面からハリーは裏にまわる応援のヘリが飛んでくる、それを合図に突入する。
工場から銃弾の雨が降りそそぐ、警官隊も負けじと応戦する激しい銃撃戦が始まった、正面入口をバズーカで突破する。
傭兵達の抵抗は激しく何名かの犠牲者が出た、それでも数名の警官と工場内に入る、中は廃棄された鉄くずが山ずみされていて身を隠すのに好都合だが相手にも同じ事が言えるこの場合ライフルよりハンドガンが扱いやすい、グロック19自動拳銃良い銃だがグリップが馴染まない、正確な射撃はグリップで決まる、いかに反動を抑え腕と一体化する事が命を守る事に繋がる。薬室に送り込まれた初弾が相手の眉間にヒットするゆっくりと仰向けに倒れていく標的、硝煙と発火弾の中を銃火を避けながら相手を撃ち抜いていく俺の動体視力は常人よりは優れているので撃たれる前に撃つ事ができる。
俺は小さい時から眼が良かった、よく親父から「それは祖父の遺伝だな、爺さんは戦争中は戦闘機乗りで伝説の撃墜王ゼロと呼ばれていた」と、なんども聞かされた。
硝煙の中にボブ達の姿が目の端に入る、2階に視線を移すと傭兵の1人がボブを狙い撃ちしていた、危険だが物陰から離れ上に向かって引金を絞ると数発傭兵の身体を貫いた、ボブも気づいて此方に合図して前進する、更に裏手からハリー率いるSWAT隊員も駆けつけ傭兵どもに容赦なく銃火を浴びせる、たまらず次々と倒れていく傭兵。
1時間後には廃工場を制圧した、此方の被害は少なく傭兵軍団は数人が生き残っただけ。激しい銃撃戦は敵味方30を超える死体で工場内を埋めた。数台の救急車が怪我人を乗せ走り去る、ボブがタバコをくわえ。
「終わったなカズ、あとは露タンの狙撃手だあな」
ボブはタバコの煙をため息とともに吐き出す。そこへ防弾チョッキを着たままのハリーがやって来た腕に小銃を抱えていた、彼もまた元軍人と思われる。
「ボブ、作戦は成功に終わったがボスからの指令で私はCIAに戻る事になった短い間でしたが世話になった、あとの事はよろしく」
ボブは唖然とした!
「CIAはここで手を引くのか、ハリー俺は引かないぞ黒幕を始末するまでボブも同じ思いでいる。ハリー捜査官殿、狙撃手の捜査は何処まで進んでいる」
「すまないカズ、狙撃手の情報は少ないが市内に潜伏しているとの未確認だが有力な情報があるだけだ、ただ局内のアリスという分析官が協力してくれるはずだ、優秀な局員で君たちの事は知らせてある」
ボブは吸い殻を踏み潰すと、ハリーの肩に手を置くと無言でパトカーに向かう。
ニューヨークの冬は冷える車のドアを掴む手に水滴が付く、そんな午後市警の刑事部ではボブの怒鳴り声が響き渡る、電話の相手は慌てて耳を塞いだろう暫くすると乱暴に受話器を置くと、俺に向かって何か言いかけたが口を閉じる。
俺は手に持っていた紙袋をボブの机に置くと、向かいに座りタバコを取り出すボブは無造作に紙袋の中からドーナツを取り出し口に頬張ると、気の利く新人の刑事がコーヒーを持って来る。
「巡査部長殿熱いうちにどうぞ」
ボブは新人をジロリと見て、ニヤリと頷く。
「カズ、どうだったアリス姫は」
「収穫はありましたよ、狙撃手の名はアミール・テレノスキノフ、女性年齢不詳生まれは露タン北部、父親はKGB特殊捜査課数年前に死亡、母親も翌年死亡、FSB時代は主に実働部隊所属、射撃技術は天才的、結婚歴無し」
「それだけか、潜伏先の見当はついたのか」
「3ヶ所マン島北部7キロ圏内、今地図を作成して携帯に送ります」
数分後、市警地下駐車場にて。
パトカー2台に分かれて3地区を捜査する事にボブはS地区俺はE地区へと、人手が効率的に捜査する。昼には何も手掛りもなくボブと合流する残るF地区は高級住宅街で1時間程かかる。
30分も走った頃緊急無線が入る、
「F地区で銃撃事件が起き市民が撃たれ犯人は西地区へ逃走中」
「ボブ、俺達も急行するか、時間はかかるけど」
「急げば15分で追い付ける、カズ、アミールは後だ」
「了解」
数分後、F地区に着くが事件現場にはパトカーが数台停まっていた、被害者らしい女性が救急車へと運ばれて行く、年嵩の警官が俺達に気付き、
「逃走した犯人は先程取り押さえて署に連行している、被害者も軽傷で済んだので我々は引き揚げます」
残された野次馬も引き揚げたらしく、高級住宅街は元の静かさを取り戻したようだ。
「流石に警官の対応も素早いですね、ボブ俺達も引き揚げますか?」
「まあ待て、折角正体晒したんだ近所の聴き込みをして行こうじゃないか邪魔する奴もいない事だし」
確かにボブの言うとうりだ。数件目の邸で若い奥さんが最近越してきた外国人の行動が変だと言う、夜明け近くにランニングしているのを偶然何度か見たという、おそらく1時間ほど行くと大きな公園と森があるので、そこまで行っているらしい、たまにゴルフバックを背負ってランニングしている。
俺達は奥さんに礼を言うと、この事は誰にも言わない様にと口止めをする。
その外国人の家はすぐわかった、サクラの木が庭に1本植えてあった大きな家ではないが通りから見える窓は少ない、俺達は市警に戻り監視するための家を探す事にする。
1週間後の夜明け前、俺は大型望遠カメラを覗き住人の紗奈・マクドナルドを何日か目で外へ出るのを捉えた、無線でボブに伝えると紗奈の家の陰で待機していた特殊工作員2名がボブと沙奈の家に侵入する、彼らは特殊なカメラと盗聴器を仕掛ける為、数日間夜明け前には、張り込んでいた。
謎の外国人は日系3世で紗奈と云う事が分かったがアミール本人なのかはまだ不明だった写真はぼやけていてアリスの方でも確認出来ないでいた。
寝不足気味のボブが戻って来た、完璧に設置したらしいモニターのスイッチを入れると4分割された画面に各部屋の様子が鮮明に映し出された。
数日間モニターと盗聴器で沙奈を監視していたが特に変わった事は無かった。