「どう?」

 

 

「・・・・・・・カレ-だな」

 

 

今日は剛君の39歳の誕生日

 

 

当日に会えるといいなって思ってたら、夕飯食わせてってメ-ルがきた

 

 

私はなんでかわからないけど、剛君の誕生日だからカレ-を作って食べたい!って思ってて、

 

 

気が付いたらお鍋いっぱい作ってしまっていた

 

 

「辛い?」

 

 

「ちょぉ-どいい」

 

 

剛君が大きく口を開けて、スプ-ンを頬張る姿に、キュンとしてしまう

 

 

パクパクじゃなくて、バクバク



カレー用の大きめスプーンが、セクシーな口に咥えられ…じゃなくて、入っていく

 

 

そんな食べ方

 

 

でも口の周りは汚れない

 

 

口の端にカレ-がついたら、こうやって私が指で拭ってあげて・・・

 

 

「なんだよ?」

 

 

あ、無意識に指先が剛君に向かっていた

 

 

「へへへ」

 

 

笑ってごまかした私を、ちらって見てからまた食べだす

 

 

あっという間に全部きれいに食べてくれた

 

 

私はそれからお皿を片付け、雑誌をペラペラとめくっている彼の隣に座る

 

 

私が横に座っていても、くつろいでくれるようになったのは、いつからだろう

 

 

「あ、今日のお月様、見た?」

 

 

会社帰りの薄暗い空に、くっきりと浮かんでいたお月様

 

 

三日月かな

 

 

「見てねぇ」

 

 

「剛君みたいだったよ~」

 

 

は?みたいな顔して、何も言わない

 

 

だって細身で弓のようにしなやかで

 

 

手が届きそうで届かない

 

 

痛い位澄み切った夜空に一人、誰にも触れられない光を放っている

 

 

「おまえは、満月だな」

 

 

私の方を見ずに、急にそんなこと言ってくる

 

 

「それって・・・まるまるしてるから?」

 

 

太目じゃないけど、細くもない

 

 

平均的だと思うんだけど、剛君の隣にいると、太目に見えちゃうよねぇ

 

 

「・・・・・・・・欠けてねぇから」

 

 

え?!

 

 

それってどういう意味?



もしかして

 

 

「完璧な人間ってこと?!」

 

 

「ばぁ-かっ」

 

 

あ、やっぱり違った

 

 

「・・・・・・・俺にとってだけな」

 

 

剛君の言葉が、頭の中でぐるぐるまわる

 

 

俺にとっては欠けてるところがないってこと?

 

 

つまり剛君にとって、私は・・・

 

 

「パーフェクト彼女?!」

 

 

思わず声がうわずる

 

 

ぶふぉっ

 

 

って剛君が吹き出して、それから体を折り曲げて笑い出した

 

 

ひゃっひゃっひゃって、特徴的な笑い方

 

 

細い体が折れそうなほど、笑ってる

 

 

また意味が違ってたのかな

 

 

なんとなくいい意味みたいだから、いいけど

 



「剛君、39歳のお誕生日おめでとう」



ありがとうって言う代わりのように、肩を引き寄せられる




サンキューって言われたら、39歳だからサンキューだねって突っ込むつもりだったのになぁと思ってたら





カレーの味のするキスをくれた





三十代最後の一年




剛君にとって、また幸せな一年になりますように








終わり







剛君、39歳のお誕生日、おめでとうございます(^∇^)