「准くんもそろそろ準備しないと〜」



俺の腕をポンポンと叩く



幼稚園生にでも言い聞かせるような態度



「じゃあさ、最後に教えてよ」



昨日、何度聞いても答えてくれなかったこと



「なに?私がわかること?」



「ん…0.01と0.02、どっちがよかった?」



「じゅんくんっ!!!」



俺の腕の中、すごい勢いで彼女の体がまわった


至近距離


あと10cmで唇が触れる位置に、茹で蛸ちゃん



「〇〇が教えてくれないから、気になって仕事にならないかも…」



前もこんなこと言ったよな



おでこをコツンと合わせて、彼女が弱いという上目遣いで視線を合わせる



「…そ、んなの…」



「ね、どっちか教えて」


知らない、と言おうとしている口を封じるかのように被せて聞く



「……」



「ん?」



「どっちもっ!!!」



「っ⁈」



どっちも!と叫ぶように言ったあと、俺の唇に自分の唇を勢いよくくっつけて


(それはキスと言えるようなものではなかった(笑))



びっくりして力が抜けていた俺の胸を、トンッと押し



いってきますっ!という言葉と同時に俺の腕から飛び出し、ドアを開け行ってしまった



恥ずかしい



顔をみられたくない



でもいってきますとまたねの意味のキスはしたい



そんな彼女の気持ちのかけらが、閉まったドアの内側にこぼれ落ちている



俺はそのかけらを拾って、一人声を出して笑ってしまった



いつか



こんなかわいくて面白くて、いつも俺を笑顔にしてくれる彼女を



俺が枚方に連れて行こう


すっげぇ照れ臭いけど、家族にもちゃんと紹介したい




いつか




何にもないけど


大好きな俺の地元へ



二人で。











終わり