「お先にいただきました~」

 

 

そう言って、ほっかほかの彼女がやってきた

 

 

髪はまだ濡れたまま

 

 

上気した頬が色っぽい

 

 

 

「ドライヤ-持っておいで」

 

 

「まだ暑いから・・・あとで自分で乾かすよ」

 

 

「じゃあ・・・・」

 

 

ここにおいで、というように俺は自分の広げた足の間のソファを叩く

 

 

一瞬悩んだ顔を浮かべたけど、おとなしくやってきて俺に背中を預けるようにちょこんと座った

 

 

俺は持っていたバスタオルで彼女の髪をゴシゴシと拭きだす

 

 

「じゅんく~んっ」

 

 

「ん?」

 

 

俺の手をとめるように、彼女の手が重なる

 

 

「こんがらがっちゃうよ~」

 

 

笑いながら抗議された

 

 

ああ

 

 

そういえば姉貴も俺が甥っ子の髪をがしがし拭いてたら、そんなこと言ってたな

 

 

「これならいい?」

 

 

タオルで優しく挟み、ポンポンと叩いていく

 

 

「うん・・・・ありがと」

 

 

濡れて艶やかに光る髪

 

 

まだ火照っている首筋

 

 

安心して俺に任せている彼女

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

よし

 

 

もう乾いた

 

 

寝よう

 

 

 

「乾いたよ」

 

 

「ありがとう」

 

 

首を曲げ、後ろの俺を見るようにお礼を言われる

 

 

「じゃあ、そろそろ寝よう」

 

 

「・・・・・・・・・・・あ、でも、歯磨きしてないよ」

 

 

 

歯磨き

 

 

 

CMしてたよな、俺

 

 

 

今ちょっとムカついた

 

 

歯磨きに

 

 

………

 

 

さっさとしよう