ベッドのヘッドボ-ドに枕を立て掛け、ゆったりと寄りかかって本を読みつづけている
私はその横で、彼の腿に左半身がくっつくようにして布団にもぐり込んで仰向けに寝ている
彼の体温が触れた腿から私の腕へと移ってくる
ギリシャ彫刻を下から眺めているよう
長いまつげがくるんと上を向いてるのが見える
形のいい唇
クッて少し力が入ってるみたい
盛り上がったところを読んでるのかな
私の視線を感じたのか本に指を挟み
「・・・・・・・つまんない?」
と聞いてきた。だから
「つまる」
って答えた
「つまるって、はははっ」
聞かれたからそのまま答えただけなのに。彼はたまに私の返答に大笑いする
「本読んでていいよ」
「そう?」
「うん」
「退屈じゃない?」
「全然」
「んふふ」
上から彼の甘い視線が降り注ぐ
きっと仕事関係の本
読まなくてもいいのかもしれないけど、読めるものは全部読んでおこうという仕事に関する貪欲な姿勢
そういう彼を見ていられるんだもん
退屈なんてまったくないよ
「寝てていいよ」
「うん」
「・・・・・・・目、つぶらないと眠れないでしょ」
目をつぶったら彼が見えなくなる
もったいない
「いいの」
「眠くない?」
「・・・・・・・そのうち眠くなるから」
私のことは気にしないでほしい
一人で心ゆくまで見てから寝たいんだもん
そうしたら今夜こそ夢の中でも会えるかもしれない