「うん・・・・准君にしか話せないから」
俺だけにしか話せないって・・・なんか嬉しくなってしまうけど、あんまりよくない内容なんだろうな
右肩にかかる彼女の頭の重みが愛おしくて、俺もコテンと寄りかかってみる
頬から伝わる彼女のサラサラの髪、愛おしすぎる熱
話すと言ったわりに言葉を出しあぐねているかのような彼女
そっと手を握り、指と指をきゅうっと絡ませる
待つから自分のペ-スでいいよという気持ちを込めて
「初夢に准君が出てきたの。」
夢の中で俺は○○に会ってたってことか。現実の俺より先に。
バカだとわかっているけど、ちょっとむかついた
「でも准君は普通に芸能人なの。私はただのファン。コンサ-トとか行ったり映画を観たりするだけの。仕事場が一緒になって会う、なんてことはないの」
つまり俺は夢の中で彼女と会ったはないってことか。
それならまぁいいか・・・いや、それも嫌なもんだな
夢の中でも彼女と付き合っていたい
「それで・・・・あの、ね、ファンだから。すっごくファンなの。」
「ん」
ファン
V6の?俺の?
でも口を挟まずに耳をかたむけ続ける
「ファンは・・・そのね、す、好きでしょ?そういう気持ちで応援してるでしょ」
好きって言葉を口にするときに、握った指にきゅっと力が入った
「それで・・・・・・・・そしたら准君がね、あ、夢の中の准君がだよ。その・・・週刊誌に写真を撮られて載っちゃったの」
「・・・・何を?」
この流れで言ったらやばい写真なんだろうな。
薬をやってたとか飲酒運転とか、警察沙汰なことか?
それとも・・・・・・・
「・・・・・・・女優さんと付き合ってるって思える写真」
そっちか
まぁ過去にも撮られたことはあるから今だって検索したら出てきてしまうだろう
「それは過去のでしょ」
「違う、違うの。今って。准君が昔付き合ってたとかじゃなくて、今36歳の准君が女優さんと・・・って」
声が彼女の感情のまま震えるかのように、小さくなったり大きくなったりしている
「それで私はそれを見たくないのに見ちゃうの、その週刊誌を。我慢できなくて。それで・・・・・・」
「で?」
彼女がふうっと息を吸い込む音が聞こえた
「切なくて・・・悲しくて。[岡田准一]さんの幸せを願ってはいるのに。どうしても胸がキリキリギリギリ音を立てて・・・・・・張り裂けるってこんな時に使う言葉だよってってぐらいで・・・」
全部言わせず彼女を強く抱きしめた