食べ終わって食器も片付けると彼が
「シーツ洗うよ」
って言ってきた
わざわざ言ってくるなんて絶対私の反応をみたいんだってわかったから、普通に「うん」って答えておいた
でも本当は彼にいじられるのも好き
恥ずかしかったり照れくさかったりもするけど、彼が私をかまいたいって思ってくれてることに嬉しくなる
洗濯が終わったらしいシ-ツを洗濯機から取り出し、外に干すというそれだけの一連の動作が美しすぎて見惚れてしまう
夏の日差しが葉影から差し込んでいるところで、洗いたてのシ-ツをパンパンと広げ干している
半袖からのぞくしなやかで逞しい腕
小さな風に吹かれて端が揺れてるシ-ツをバックに、こちらに戻ってくる彼を見てたら胸がギウギウになってしまって
「ははっ、なぁんだよ」
飛びつくように抱きついた
「旅行に連れてきてくれてありがとうね」
「どぉ~いたしまして」
そのまま彼の腕が背中に緩く回り、私は彼の匂いを胸いっぱいに吸い込む
夏の日の彼の匂い
それから二人で昨日歩いた方とは逆の方を散策したりとのんびり過ごして、帰路についた
「ごめん、途中で」
行きに待ち合わせた駅で私は降りることになっていた
「全然。私がそうしたいんだもん」
万が一にもばれるようなリスクはおかしたくないから
あと五分もしたら別れなければならない
だけど大丈夫
二日間で抱えきれないぐらいの彼の想いをもらったから
あの寂れているけどとても暖かい雰囲気の駅の近くで車が止まった
「ありがとう。じゃあ」
そう言って降りようとしたら彼の指先から何かがカチャッと落ちた
「ごめん、拾ってもらえる?」
それは私が座っている助手席の下へと落ちたから、屈みこんで拾おうと探る
「えっと・・・・小銭?ないみたいだけど」
そう言って彼の方を見上げたら
ちゅっ
いつの間にか私の方へと屈みこんでいた彼に唇をふさがれた
「准君っ」
慌てて唇を押え、周囲を見回す
誰もいないみたいだけど
「んふふ。誰もいないから」
甘く見つめられ、彼も名残惜しいって思てくれてるのが感じられる
「・・・・・・じゃあ、また」
「ん・・・・・・また連絡する」
惜しむようにキュって指先を握られ、私は車を降りた
無人の改札を入り、後ろを振り返ったら彼の車が発進したのが見えた
夢のような二日間
誰の目も気にしないで彼と普通にお日様の下で変装もせずに散歩したり
観光も少しだけど一緒に出来たり
素敵なプレゼントまで用意されていて、彼の想いがいっぱいすぎて
私の胸もいっぱいいっぱいになってしまった
ホ-ムにゆっくりとやってきた電車に乗り込む
がらがらの車内の窓際に座って流れていく景色を眺めながら
次に彼に会えるのがいつかはわからないけど、胸にかかったネックレスを柔らかく握りしめ、また会える日を楽しみに待てるって思った
終わり