「准君」
いつの間にか出てきていた彼女が、俺に歯ブラシを差し出す
「ん、ありがとう」
歯磨きをするシャコシャコという音がか重なり合って響く
シャコシャコシャコシャコ
欲望も隠れるような平和な時間
いいよな、こういう時間って
彼女もそんな風に感じくれてたらいいなって思う
うちにあるソファとは違う座り心地
だけど彼女が隣にいるってだけで落ち着く場所になる
彼女がいる、それが俺にとっては落ち着く場所の条件になってきているのかもしれない
磨き終わったらしい彼女が立ち上がり、洗面所へと向かう後ろ姿が・・・
いつでも見られるような日常の一部になればいい・・・と思ってしまう
そんな俺の気持ちなんか知らないで、すっきりとした表情で彼女が戻ってきた
「准君はやっぱりすっごく磨くんだね」
「?」
「歯磨き。仕事柄だよね。虫歯なんてあったらダメだもんね」
まぁそうだけど。
例えば侍を演じるのに銀の詰め物とか見えたらまずい
あっても白くはできるけど、ないほうがいいに決まってる
「きれいな歯だよね。だから歯磨きのCMもくるんだね」
泡だらけの口元をじっと見られるとなんとなくこそばゆいから、立ち上がってうがいをしに行く
次にこんな風に過ごせるのはいつなんだろう
うがいをし終わり、鏡に映った自分に問いかける