自分でも何が言いたいのかわからない
舞台挨拶が終わったあと、私の前では映画本編を観ないで帰っていくという信じられない行動をしている人たちがいっぱいいた
何かどうしてもという事情があるというならまだわかる
だけどみんなニヤニヤしながら帰っていってた
観たいんだけど観れなくて帰るのが申し訳ないとか残念とかそういう表情はまったくなかった
なんで観ないの?!
頭がフリ-ズする
彼が、キャストのみなさんが、監督さんが、スタッフさんが、命がけで撮った映画
どれだけの準備をして覚悟をしてのぞんだか、番宣をみてるだけだってわかる
そしてこの初日を同じ空間で一緒に迎えたい、舞台挨拶を見たいっていう人がどれだけ多くいるのか・・・
そんな貴重なチケットを手にした人が、なんで本編を観ないなんていう失礼なことをするのか
まったく理解できなかった
そして悲しくてむかついてしょうがなかった
「○○・・・・・・舞台挨拶だけ観て帰った人のこと怒ってるの?」
そう
そうだよ
「だって・・・・・・みんな命がけで撮ったすっごい作品なのにっ」
それを彼に言ってどうするの?と思うけど
彼に言っても彼が悲しい想いをするだけだって思うけど
怒りの感情があふれ出して止められない
黙ろうと唇を引き結んだけど、体の中で怒りが出口を求めて暴れ出す
「そういう人・・・・・・・・毎回いるからね」
「准君ッ!」
彼のシャツを掴む
「ひどいじゃんっ、ひどいよっ!!本編を純粋に観たいって人がいっぱいいるんだよ?それで舞台挨拶ももしかしたら当たるかもって、キャストのみんなを一目でもって、初日をお祝いする気持ちを一緒に共有したいって!!!そういう思いの人が観られないでなんでそんな人たちが?!」
冷静な彼の言葉になぜか怒りが倍増して口から溢れだす
「○○」
少し強い声で名前を呼ばれて胸に抱きしめられる
「だって、だって、みんな、会いたいって、本当に会いたいって、一緒に、同じ空間でっ、初日を迎えたいって、お祝いしたいって、それだけなのにっ」
何が言いたいのか、何を言ってるのかもうぐちゃぐちゃ
「・・・・・・・泣かなくていいから」
彼の困った様な声がしてからそっと頬を拭われ、自分が泣いてることに気が付いた