テーブルの上にはおせち料理


2人にしても少ないかな、という量



だって剛君きっとおせちなんか食べないと思ったから。口つけたとしても美味しいとは思わないだろうなって。



ムグムグ


モグモグ




小さくて個性的で色気のあるきれいな顔



テレビからはお正月恒例番組なのかな。楽しそうな笑い声が聞こえてくる



そんな中、無言でおせちを食べ進める剛君の表情からは美味しいと思ってるのか



それともやっぱりいまいちだと思っているのか



お箸は止まらないけど



まったくわからない





「…剛君、おせち…」



「?」



私の言葉に目線だけ上げて、何?と聞いてくる



目は口ほどに物を言う、だけど、その目が色っぽすぎるのは困りものだよ



「あんまり好きじゃない?」



世間の印象と真逆で実は気遣いで優しい剛君だから



例えばあんまり美味しいと思わなくてもそうは言わないだろうなって思うけど




「…んまいけど」



「本当に?」



疑うような私の視線を真正面から受けてニヤって笑う



「このシワのよった黒豆とか、不揃いのなますとか、特に味わい深いね」



あ…バレてる



私が作ったものがデパ地下おせちに混じってるって



やっぱり全部デパ地下おせち様に任せておけばよかった



でもさ、剛君と新年に初めて会って食べるものだから



少しでも「私」を入れておきたかったんだ




「長野君がさ、意味教えてくれたんだよね」



お箸で器用に黒豆を一つ摘まんで私の目線にあげる



「元気に働けるように、だったかな」



まさか、まさかのおせち知識



いっつもいろいろ忘れるっていうのに、なんでそんなことは覚えているの




「これは平安とかだったかな」



見事なまでの不揃いななますを一口食べる




「出世・・・・・・」




ブリの照り焼きを口に入れる前につぶやく




「お前、俺のこと、すっげ-好きなのな」



ひゃひゃひゃって笑いながら



ちゃかすように私を見るけどその目がすっごく優しく細められてるから




「そうだよ。だって大好きなんだもん」




ふんって鼻息荒く言い切った




「また作れよ」




それって来年のお正月もってことだよね?



照れやな彼はそれっきりもう私の方なんか見てなくて



テレビ観ながらおせちをつまんでるけど



ほんのり赤くなってるたれ目の目元にキュンキュンキュン



やっぱろ今年も彼が大好き



よし!来年はもっとうまくつくるぞ~!








そんなわけで剛君おせち編でした。


なかなか〆が難しいですね~。