忙しい



すごく



エベレストにいた時は


映画とだけ向き合えていた


今はいろいろな仕事がごっちゃになっていて


たまに頭が混乱する



三「岡田~っ。」


気づくと健君が膝に乗っていた



岡「あ、健君」


至近距離で見ても健君はやっぱりかわいい



三「何ぼんやりしてんだよ。お前、俺が乗っかったこと気付かなかっただろ」



岡「…気づいてたよ。でもいつものことだし」



本当は気づいてなかったけど



三「ふ~ん…」


あ~こりゃウソだってばれてるな


かわいい目なのに見透かすような鋭い光


岡「…その、忙しくてぼーっとしてた」


白状する


俺の言葉に



ふっくらとした唇を少し尖らせて


他にもあんだろ?

先を話せ、と目で促す


岡「…………元気がないような時に…さ。でも理由を聞かれたくなさそうな時ってどうしたらいいかなって…」


あの日以来、電話で話してる分にはいつもどおりなんだけど。



あの日の彼女の様子がずっとひっかかっていて


三「ははぁ~ん。携帯の写メの子だな」

携帯の写メの子って…


岡「健君⁈」


いつ⁈いつ見られた⁉︎


三「お前さーたまに携帯握りしめてボーッと画面見てるじゃん。」


そんなことしてるか⁈


三「そんで後ろ通ったときにチラって見たらかわいい子が笑ってたわけ」


無意識に○○の写メを見てたことがあったらしい


会いたいのに会えないときか…



岡「いや…あの…さ、」


焦って何を言っていいかわからなくなる


そんな俺をニヤニヤと眺めて


三「まぁ、俺たちいい年したおじさんだからな~、いいんじゃん」


彼女だ、なんて言ってないけど


なんかいろいろバレバレな気がする



三「それでぇ?その彼女が元気ないわけ?」


岡「…うん、まぁ。でもその時一瞬だけで…。」


あの電話のときに感じただけ


仕事が忙しくて疲れてるようなこと言ってたけど


三「お前さーにぶいじゃん。」


岡「………」


そうかもしれないけど


なんか認めたくはない



三「そんなお前がそう感じたってことはさぁ、なんかあったんじゃね?言えないようなことがさ」


俺に言えないようなこと



なんだよ、それ



三「おいおいおい、俺を睨むなって~。こえ~」


岡「ごめっ」


健君の目がふっと優しくなる


三「ちゃんと会って目見てきけよ、そういうことはさ。お前に真正面から見られてごまかせるやつなんかいないから」



いつまでも十代みたいにかわいいのに


いつだって俺が困ったり迷ったりしてると気がついてくれて


岡「健君って男前だよね」


三「はぁ⁈ばぁーかっ。ほら、もう取材はじまんぞっ!」



照れた健君はそう言い残すと控え室から出て行ってしまった