彼に愛されて当然



だなんて思えるわけないでしょ~





今までにお付き合いした男性も年相応にはいたから



ありえないほどここがひどい



とかはないと思う…



けれど



彼のいる華やかな世界の人たちに比べたら



その辺の雑草と同じなわけで



ただ



彼はきっと雑草でも同じ草花として見てくれて



雑草の良さを知って大切にしてくれるってことで



そんなことを考えていたら


何もかも見透かしたような彼の目に捕えられたから


「だけど…そんなこと言われたら嬉しいから…いい気になっちゃうかもよ?」



ごまかそうとしたら

岡「いい気になって…」



彼のきれいな指が顎にかかり



そのまま少し強引に唇をふさがれた




隅々まで味わうかのように



彼の熱い舌がうごめく



「んンっ」



やっと離れた唇が



少しさみしくて



岡「フフッ。いい気になった?」



甘く細められた目に



クラクラとしてしまう


岡「ん?」



「………」



自分に自信がないわけじゃない


何年も同じ仕事を続けてきて


自分なりに目標にしていたステップアップもできている


人間関係も



全部が全部うまくはいかないけれど



こりゃまずいって状態にはならないように


自分なりの小さな気配りや努力をしている



いい距離感で付き合える友達も



悩みを打ち明けることができる友達も


ただただ一緒にいて楽しい友達も



いろんな友達にも恵まれている


だけど



[彼に愛されて当然]



とは思えない



彼に愛されて恥ずかしくないような自分でいたいし努力しようと思う



だけど


岡「うまく…伝えられるかわからないけど」



膝の上に抱き上げられたまま



私の目を真剣に見据えて話し出す



岡「中身が…○○の考え方とか物の捉え方とか…いろんな対応とか、そういうなんていうか…」


ゆっくりと私に伝わるように考えながら言葉を選んでくれている



岡「○○のそのままの性格が…俺にとってはエベレストの雪の中で米粒を見つけたぐらいすごいことなんだ」



エベレストの雪の中で米粒…


それは最近の撮影がすごく大変だった名残りが出たみたいで



岡「だから…俺に愛されて当然って思ってよ」



甘く切ない光が漆黒の瞳の中に揺らめいていて



思わず頷きそうになる


けど


「…………無理…だよ。」



だってそんな突然無理だよー


無理ー


岡「…なんで…」


「あの………ぁぃされてるってことは…ちゃんと…わかってるよ。でもそれが当然とは思えないよ………准君が…大きすぎるから…」



存在感が



全てのことに対する努力が



大きすぎて



私は



私なりにがんばってるけど



やっぱり



彼に愛されて当然、とは思えないから


岡「……わかった。痩せる。引き締める。」


「な、なんでそうなるの⁈」


岡「少しでも小さくなって、○○が俺に愛されて当然って思ってくれるように」


准君の思考回路がたまにわからないよ



岡「撮影もひと段落したしね。ん。決めた。引き締める」