小さなかわいらしいラッピングをなるべく丁寧にあけると、中から手のひらにのるぐらいのふわふわとしたクマが出てきた。


黄緑色の小さなクマは首に黄色のスカ-フをしている。


「かわいい」


後ろにボ-ルチェ-ンがついていてどこかにぶらさげたりもできるよう。


そこに指を通してゆらゆらと揺らしてみる。

つぶらな瞳で微笑んでいるところがなんとも癒される顔でいいな。


「あ、これ座ることもできるんだね。」


そうしてボ-ルチェ-ンを通しているのとは反対の手のひらに座らせてみた。


ちょこんと手のひらに座っている姿もまたかわいくて。


「ありがとう。大事にするね・・・あれ?」


座らせた両足の裏に何か文字が刺繍されている。


岡「・・・・・・・・・・」


右足の裏には<18 November >


左足の裏には<J O>


「これって・・・准君?」


彼は黙ったまま顎をしきりと撫でまわしている。


「准君だよね?」


再度の私の問いかけに観念したかのようにクマを見て


岡「・・・ん。」


と小さくつぶやいた。


びっくりして黙ったままの私に照れ隠しなのかいつにない早口で彼が話し出した。


岡「かわいいものって具体的に何がいいのか悩んでて・・・。そんな時に書店のレジ横にこのシリ-ズのクマがいっぱい並んで売られてて。」


「あ、見たことあるかも。」


岡「・・・それで家に帰ってきて調べたら誕生日とか名前とかも入れられるって書かれてて、その時これだ!って思って勢いで注文したんだけど・・」


「わざわざ注文してくれたんだね」


PCの前でクマを選んで注文している姿を想像したら・・・かわいくて。


岡「・・・・・・気持ち悪くない?」


心配そうに尋ねる彼。


なんで気持ち悪いんだろう?


そんな私の心を読み取ったように彼が話を続ける。


岡「・・・いい年したおじさんが自分の誕生日とか刺繍したクマをプレゼントするとかって・・・」


不安と恥ずかしさが混じって複雑な表情を浮かべている。

また。

彼はすぐ自分のことをおじさんって言う。


「そんなこと全然ないよ。・・・もうすぐ・・・撮影だよね?待っている間、この子を准君だと思って大事にするから」


3~4か月にわたっての海外撮影。

やっぱりその日が近づいてくるとさみしいなって思うことも増えてきてたから。


岡「・・・・・・・よかった・・・」


大きく息を吐いて肩から力が抜けたような彼は私をギュッと抱きしめなおした。


「ふふっ。准君、そんなこと心配してたの?」


照れくさそうに気まずそうに視線をそらした彼。


自分でネット注文してくれたんだな~とほっこりした気持ちになる。


「私、毎日この准君に話しかけちゃうかも(笑)。へへへっ。変な人だね」


その日あった小さな出来事とか。

たぶんくだらないようなでも彼に聞いてもらいたいようなこと。


岡「・・・・・・俺も・・・。」


「?・・・私がするんだよ?」


かわいい黄緑色のクマ。


岡「・・・・・・俺も○○に話したいこととかあると思うから」


ん?電話もメ-ルも撮影中はお互い控えようって暗黙の了解だと思ってたんだけど。


「・・・・・・?」


?マ-クが浮かんでいる私の顔をちらっと見てなんだか悩んでいるような・・・。


岡「・・・・・・その・・・俺のクマが一人じゃさみしそうだし・・・」


そう言って彼はサイドボ-ドに手を伸ばしごそごそしてたかと思うと

そのきれいな手のひらに黄色のクマを乗せてきた。


「あ・・・」


私の手のひらに座っている黄緑色のクマの横にちょこんと座らされた黄色のクマの足裏には


「これ・・・私?」


岡「・・・ん。」


私の誕生日とイニシャルが刺繍されていた。