コーヒー豆を手に戻ってきた彼は

コーヒーミルに豆を入れて私に渡してきた。

いつもなら彼がそのまま挽くのになーと思いつつもハンドルをゆっくり回し出す。

と…なぜかまたもや背後に彼が。

そしてさっきと同じように私に覆いかぶさるかのように

ハンドルをまわす私の手に

手を重ねてきた。

「じ、准君⁈」

わからない

わからなすぎる

今日の彼の行動の数々。

岡「一緒にね」

大好きなきれいな手を重ねられて

そんな甘い低音で囁かれたら

もうわからなくてもいいって思っちゃうよ。

ゴリゴリゴリっと豆が挽き終わった音がする。

それでもそのままの手…

「…挽き終わったよ?」

彼の手にむかってそうつぶやくと

岡「じゃあ…」

とドリップしはじめてくれた。

挽きたてのコーヒーのいい香りが部屋に漂う。

いつからかコーヒーの香りを嗅ぐと

彼を思い出すようになったんだよね。

挽きたてのいれたてのコーヒーを2人で味わう。

「やっぱり美味しいね」

岡「ん。」

隣に座って飲むのも

向かい合って飲むのも

どちらも好き。

だって

横顔も

正面からの顔も


大好きだから。


ふふっ。

今日は正面から。

ふんわり湯気のむこうに見える彼は

今日もきれいでうっとりだよ。

岡「あ、そうだ。」

そう言い、彼は紙袋を私に差し出してきた。

「あ…ありがとう。今開けてもいいかな?」

岡「ん。」

テストでいつもより少しいい点を取って

その答案を親に見せる時って

こんな顔?

みたいな顔で私を見つめる彼。

「あ…これ…」

岡「前に食べて美味しいって言ってたから」

それは以前彼に口移しで食べさせられて

美味しかったクッキーだった。

覚えていてくれたんだ…

と同時に

口移し

そんなことを思い出しちゃったから

頬が火照りだす。

それを誤魔化すように話し出す。

「これ、限定のだよね?すごく嬉しい!ありがとう。大事に食べるよ!」

岡「大事にって…くくっ。賞味期限前に食べてね?」

「箱もすごくかわいいから食べ終わったら何か入れて使うね」

はじめてのホワイトデーのお返し

だから

箱はずっと大事にとっておきたい。

そうしたら

この箱を見るたびに今日を思い出せるから

何回も幸せになれるよね。