【音楽雑感】コンクール考(3) | Jung Brass Collectionのブログ

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トランペットを始めて早ウン十年。お蔭様で今も充実したラッパ活動を楽しんでいます。これまで経験した所感や、今振り返る考察など、トランペットや音楽にまつわる話と、趣味のブラスアンサンブルアレンジの活動の記録です。

先日来、僕の周りでも時々取り上げられている話題がある。オペラ歌手であり、かつて学校の吹奏楽部の顧問をされていた車田和寿氏のYouTubeで提起されている、中高生のコンクールのあり方について。


要約すると、中高生は勝つために技術ばかり追い求め音楽をする喜びを感じていないのでは、ということ。言いたい事は分かるが、何だかな〜という感想。


そもそも技術が伴っていないと、本当の音楽は楽しめないというのが僕の考え方。


例えば野球。投げても5mも届かない、振ってもボールに当たらない、飛んで来た球を取れない。そんな初心者が試合をやって、本当に楽しめるのだろうか。僕は楽しめるとは思えない。バットを持てばヒットやホームランを打ちたいと考えるのが自然だろう。だから、素振りを何度も行って技術を身につける。投げるのも、受けるのも然り。地道な練習、トレーニングを積み重ねて技術を身につける。少なくとも最低限の技術が伴った上で試合をすると楽しいだろう。しかし最低限では勝てない。負けが続くと楽しくもない。だから練習をする。野球に限らず、どのスポーツも、音楽も、演劇も、ゲームも、勉強も、同じ理屈なんじゃないかなと思う。


吹奏楽に当てはめると、音程も合わない、アインザッツや音形も合わない、つまりアンサンブルができないレベルで、いくら作曲者の意図はこうだからこのように吹こうとか、ここは盛り上げようとか、ここは悲しさを表現しようとか、指揮者が指示しても、自己満足は出来るかもしれないが、本当の音楽の楽しさは得られないと思う。


指揮者が表現したい事を表現できる技術が必要だと思う。それがロングトーンであり、タンギング、スケール、リップスラーなどの個人の基礎的な技術。次に合奏体としてアンサンブルをする技術。一口にアンサンブルというが、これが難しい。ここを克服するために車田氏がヨシとしない技術ばかりを追うというように見えるのだろう。


でもアンサンブルができないと、仮に小澤征爾さんが指揮してくれても、小澤さんが求める表現はできないと思う。指揮者の指示に応えられるための技術が必要で、指揮者が求める音楽が高度であればあるほど、比例して技術も必要になる。


そうすると技術の練習、トレーニングが中心となって、こんなの音楽じゃないじゃない?楽しくないんじゃない?って言うのが車田氏の主張だと思うんだけど、僕はアンサンブルもできないのに本当に楽しいの?って思ってしまう。


仰る通り、技術の練習って辛い、面白くない!これは同意。でもね、ここ目を瞑っちゃいけないところだと思う。


要は程度の問題。音楽するのも色々な場面がある。楽器を始めたばかりの一年生たちの合奏もあれば、10数曲を一つのステージでこなすような演奏会、そして12分に凝縮したコンクール。目的も状況も違えば、それは取り組み方、時間の掛け方が違うでしょう。そのバランス感覚が人によって異なる。そこに考え方の違いが生まれて、学校や団体によって取り組み方が違ってくる。


「中高生が何故音楽で勝ち負けに拘るのか」。中高生に限らないし、音楽だけに限らないと思うんだよね。多くの人は向上心があり、認められたいという気持ちがあるように思う。そうすると、何らかの形で評価が見えると、よりヤル気が出てくる(悪い評価だとヤル気なくなるけど。。。)。例えば、期末テスト、クラスで10位から5位に上がった、じゃ、次は3位以内を目指そうとか思うでしょう。マラソン大会でもそうだし、野球だって甲子園目指して〜なんてやっている。そうやって競争することによって切磋琢磨し伸びていくっていうのが多くの人なんじゃないかと思う。


だから、音楽にだって勝ち負けはあっていいと思うし、コンクールって評価という意味で分かりやすいから全国的に中高生は熱中するんじゃないかと思う。勝ち負けのない発表会だったらこんなに夏は盛り上がらないんじゃないかな。


学校、団体によってコンクールに対する熱量は違う。中学生は選択が難しいでしょう。多くが自宅近くの中学校に通うことになる。でも、高校に於いてはある程度自分で選べる。高校生活は吹奏楽に賭けるんだという人は熱量の高い高校に進学すればいいし、勉強も趣味もバランスよくっていう人はそういう学校に進学すればいい。一般バンドの然り。


練習過多でブラック部活と呼ばれることもある吹奏楽部。でも練習量ややり方だけでブラックって判断できないと思う。要は本人がどう考えるか。学生だと本質が見えないことも多いだろうけど、卒業する時に、吹奏楽やってて良かったって思えたら最高なんじゃないかな。


「苦なくして楽なし」。技術のトレーニングは面白くなく辛いかもしれないけれど、その先に本当の音楽の喜びがある。喜びを感じられた結果、コンクールでいい成績が取れたら最高だと思う。そんな考え方で数十回コンクールを楽しんでいる。(ストイックなのかなぁ。。。)