空が白み始める少し前
波の音だけが静かな空間を支配していた
「海………」
潤は初めて見る何処までも広がる水平線に
魅了されていた
藤の国は大きな山々の麓にある国
その山々の豊かな資源で栄えてきた国である
唯一、海に面している所も輸出入の為の港として使われている為、砂浜はない
秀明が教えてくれた日の出が1番綺麗に見えるポイント
流木の上に腰を下ろし、ただただ海風を感じていた
空が少しづつ白み始めた時、後ろから砂浜を誰かが歩く音がした
その足音はゆっくり潤の元に近付いてくる
「もしかして………」
潤の心は『現れる紅』に鼓動が大きくなっていく
波音と足音
それだけの空間に少しづつ空の明るさが加わりつつある頃
「……君かな?」
低めの声で囁くような優しい声
初めて聞く声に何故か安心感を覚える潤
ゆっくりと振り向けば、ハニカミながらまっすぐに潤を見つめる瞳
「………はい」
自然と出た返事に何の違和感を感じる事もなかった