ゲゲゲのブラック次元 -89ページ目

ゲゲゲのブラック次元

コッペパンと妖夢が好きなゴクウブラックと
罪のない人間と海砂に優しい夜神月と
色物揃いで最強の部下たちを従えるリボンズ・アルマークが
存在するカオスな次元です


俺たちに翼はない~AnotherStory~(アナザーストーリー)


~水鏡の塔~


「我々は、一人の英雄を失った。しかしこれは、敗北を意味するのか……否!始まりなのだ。ドルガタレグに比べ、我がグレタガルドの戦力は30分の1以下である。にも拘らず、今日まで戦い抜いてこられたのは何故か。諸君!我がグレタガルドの戦争目的が正しいからだ!一握りのエリートが、世界にまで膨れ上がったドルガタレグを支配して54年。未開の地に住む我々が自由を要求して何度敵国に踏みにじられたことか!グレタガルドの掲げる人類一人一人の自由の為の戦いを神が見捨てるわけはない!私の友、諸君らが愛してくれたユニコーン・ウッディヴィレッジは死んだ。何故だ!!この悲しみも怒りも、忘れてはならない!それをユニコーンは、死をもって我々に示してくれたのだ!我々は今、この怒りを結集し、ドルガタレグ軍に叩きつけて、初めて真の勝利を得ることが出来る。この勝利こそ、戦死者全てへの最大の慰めとなる。国民よ、立て!悲しみを怒りに変えて。立てよ国民!グレタガルドは諸君らの力を欲しているのだ!」

「例え不死鳥であろうとも、大いなるガルーダの羽搏きには敵わぬ」

「あの~、隼人先輩」

「ファルコンではないガルーダだ」

「足、足」

「ん?」


 伽楼羅は足の裏をひっくり返す。


 ポトッ


「なんだ、このダークマターのような物体は」

「Oh……成田君そりゃ犬のウ○コだぜ」

「ばふんばふん」

「いや、馬糞じゃなくて犬の糞だって」

「翔さああああああん!!」

「どうした和馬」

「さっき、海岸の方の公道を大量の車が通過したって報告が!」

「なんだと!?やつらめもう来たのか。どうするフェニックス」

「和馬、その車は何台くらいだ?」

「は、はい、少なくとも30大以上は!」

「ゲッ!30台!?」

「やはり数を揃えてきたか」
「和馬とお前らは雑魚共を足止めしてこい。頭は俺と伽楼羅で潰す」

「わかりました!行きましょうLRさん」


 和馬とLRたちは車に乗りその場を離れ、白い車の軍団へと向かう。


「翼人兵たちの数からしてこちらの戦力では圧倒的に不利だ。やつらだけで果たしてどこまでもつか……」

「俺だって伊達に部下をかき集めたわけじゃねぇ。期待にそぐわぬくらいの働きはしてくれるだろうよ」

「だといいが、やつらの普段のタルみきった様子を見ている限りでは不安しかない」

「ん?伽楼羅、アレは……」

「なにっ……!?」


 伽楼羅と翔の前に白い車の集団が停車する。車から多勢の白服たちが姿を現す。


「これはどういうことだ。なぜ貴様らがこんなに早く!」

「こんなこともあろうかと思い、二手に別れさせてもらったのだ」

「その声は!?」

「久しいな……賢者王ガルーダ」

「伽楼羅、やつは何者だ?」

「先ほど貴様に話した。翼人兵を率い、グレタガルドを滅ぼそうとした諸悪の根源。『森羅万象の二枚羽根』の一人」

「そう、我こそはプリンセス・リンダに仕えし右翼『ワイバーン・シャインホワイト』またの名を『神戸飛龍頭』」

「ワイバーン、貴様は確かにこの俺が倒したはずだ!」

「この世に再び生を受けたのが姫だけだと思うな。我ら森羅万象の二枚羽根も、貴様に復讐するために地獄の底から舞い戻ってきたのだ!行け、翼人兵たちよ!」

「ふん、兵の数の違いが戦力の決定的差でないことを教えてやる!」

「バカめ、たった二人で何ができる!」

「雑魚共に用はねぇ!」


 伽楼羅と翔は降りかかる白服たちを次々となぎ倒していく。


「ガルーダめ、奈落の闇に縛られ続けて力が衰えていると聞いていたが、今の奴の動きはまさしくかつてのガルーダ・ダークブラックそのものではないか。いったい何がやつの精神を支えているというのだ……」

(まさか、あのお方が!?あの方の存在が抑止力となってやつの意識を支えているというのか。)

「おのれガルーダ……!」

「ハッハッハァッ!これだ、これだよ俺がやりたかったのは。退屈な毎日におさらばして、戦いに身を投じることで、血に飢えた魂が活性化するのを感じる!いいなぁ伽楼羅、暴力はよぉ!!最高に高めた俺のフィールで最高の時間を味わえることを神に感謝しねぇとなぁ!」

「だがしかし、やはり数が違い過ぎる……このままではきりがない」

「多勢に無勢か」


 伽楼羅と翔が背中合わせになり白服たちに囲まれる。


「伽楼羅、お前は頭を潰せ。コイツラは俺が片付ける」

「バカな、いくら貴様とは言えど、たった一人でこの数を相手に戦えると思っているのか!」

「王の為にこの身を捧げるのが部下ってもんだろ。ほらとっとと行け」

「フェニックス、ユニコーンのことを覚えているか?」

「ユニコーン?」

「そうだ、お前と同じ、俺のかけがえのない戦友。白銀の一角獣『ユニコーン・ウッディヴィレッジ』。やつは、俺にすべての希望を託して、散った……」

(回想)

「ハァ…ハァ…ハァ……」


 ガルーダとユニコーンは無数の翼人兵たちを前に立ち尽くしていた。


「これまでか……敵の手にかかるより、最後は王として、この命を燃やしてでも敵を道連れにしてやる!」

「バカ言ってんじゃねーよ、立て」


 ユニコーンが立ち上がる。


「美しく最後を刻みつける暇があるなら、最後まで美しく生きようじゃねーか。ガルーダ、せめて死ぬ前に、エメラルド城にいる姫に逢いたくはないのか?」

「ユニコーン、貴様知っていたのか」

「友であるお前のことで俺が気付かないことがあるわけなかろう。ドルガタレグの姫君は争いを望むような方ではないと聞く。姫に逢うことができれば、この戦いを止められるかもしれん。さあ行けガルーダ!お前には新たな未来が託されている。お前は生きなければならない」

「貴様、この俺に友を見捨てて逃げ出せと言うのか!」

「ああそうだ。戦いは非情さ、それぐらいのことは考えておくんだな。お前が死んだら、我が愛する祖国グレタガルドを誰が護るというのだ。私は純粋な戦士だ、戦士は戦い続けてこそ、その存在意義がある!」

「……わかった。死ぬなよ、ユニコーン」


 ガルーダはユニコーンと翼人兵の大群に背を向け、愛馬ストレングスに乗って走り去る。


(いいぞガルーダ、走れ。決して後ろを振り返るな。お前が振り返るころには、もう俺の姿はないだろうがな。)

「このユニコーン、戦いの中で戦いを忘れた。だが、俺とて王ガルーダに仕える戦士。無駄死にはしない!よく見ておけ翼人兵たちよ、戦いに敗れるということはこういうことだ!!」


 ユニコーンの体が光に包まれる。


「グレタガルドに栄光あれー!!」


 突然の爆発に気付き、ガルーダは後ろを振り返る。


「ユニコオオオオオオンッ!!!」

(回想終了)

「俺はもうこれ以上、友を失いたくない」

「そそるじゃねぇか。だったら俺にもその美しい最後を飾らせてくれよ」

「フェニックス!」

「伽楼羅、お前はこの戦いを『聖戦』と言った。つまりこれは魂と魂のぶつかり合い。命ある限り戦い、壮絶に散る。戦わなければ生き残れない!心配すんなよ、俺は何も一人で戦おうって言ってんじゃねぇ。俺たちは共に戦ってなくても、どんなに遠くにいても、魂と魂がつながり合っている。俺たちは一人じゃない」


 そのとき、どこからともなく聞きなれたジェンベの音が聞こえてくる。


「な、なんだこの音は!?」

(来る。この2人に勝らずとも遠からぬ力を持つ何かが……。)

「この世にロックな相手が訪れしとき、必ずや現れる冷眼の暗殺者」

「レイヴン・コバルトシルバー。またの名を針生蔵人。なんてな」

「レイヴン!?なぜ貴様がここに?」

「陛下、また誘ってくれよって言ったよな?俺抜きで楽しもうなんて水臭いんじゃないかい?」

「ガルーダの新たな仲間か」

「いや、どっちかっつーと喧嘩友達だ。陛下、ここは俺とニワトリに任せてアンタはアッチの皇帝陛下と遊んできな」

「よし、任せたぞ」

「カラス、俺に貴様と組めと言うのか。どういう心境の変化だ?」

「そんなことにいちいち因縁つけるほど余裕があるのかい?何なら今ここで白黒はっきりつけましょうかコケコッコー陛下?」

「面白ぇ……コイツラをぶっ潰した後、オールナイトで付き合ってやるよ!!」


 伽楼羅と飛龍頭が睨み合う。


「ワイバーン、死してなおなぜ再び俺の下に舞い戻り、俺を殺そうとする?俺に敗れたのがそんなに悔しかったのか」

「……ならばあえて言おう。我らが姫、プリンセス・リンダを返してもらう」

「やはりそれが貴様らの真の目的か」

「それだけではない。姫の清らかな心に付け込んで、たぶらかした罪は、この世で一番重い!」

「俺が姫をたぶらかしただと!?神に誓って言おう、俺は断じてそのようなことはしていない!」

「戯けたことを!我らにとって姫は神に最も近い存在。それを貴様ごとき未開の国の王が妃に迎えるなどと、身の程を知れ!」

「未開の国だと?グレタガルドは立派な独立国だ!」

「ガルーダ、貴様はプリンセス・リンダを、林田美咲様を愛しているのか?」

「無論、プリンセス・ダヴ以上の美しさと優しさを持っておられるプリンセス・リンダは今の私にとって命よりも大切な方だ」

「何を言うか……その姫を手にかけた男が何を言うか!」

「……」

「もはや貴様とこれ以上くだらん話をしても不愉快なだけ。姫を殺めた罪その身を持って償うがいい!」


 飛龍頭は伽楼羅を殴り飛ばす。


「なぜ避けなかった?これしきの拳、避けられぬ貴様ではないはずだ」

「貴様に一発殴らせたかった」

「なに?」

「確かに、姫を殺めたことはこの命をもってしても償いきれることではない。ならばせめて……」

飛龍頭「プリンセス・リンダの右腕であるこの私に殺されることで罪を償わせてくれと言いたいのか。ふざけるな!言っておくが俺は貴様だけは簡単には死なさんぞ。無抵抗の貴様を倒したとて、そんなものが何の意味になるというのだ。立ち上がれガルーダ!貴様は戦わずして負けるような男ではない!それは貴様に敗北した俺が一番よく分かっている。貴様は姫を愛していると言ったな。ならばそれを力で示してみよ。今翼人兵と戦っているあの2人は貴様の為に命を懸けて道を切り開いてくれた。仲間の意思を無駄にしないためにも、貴様は俺と戦う囚人とならなければならない!戦え、ガルーダ!」


 飛龍頭は伽楼羅を殴ろうとするが、伽楼羅はそれを受けれとめる。


「言ったはずだ、殴らせたかったのは一発だとな!」

「ふん」

「望むところだ、俺に戦いを挑んだことを必ず後悔させてやる!」

「そうでなければ潰し甲斐がない」

「燃えろ!」

「轟け!」

「俺のホーリーランスよ!!」

「おおぉ!遂に始まったぞ、本当の聖戦が!」

「聖戦って……アレがか?」

「ヘルフレイム・インフェルノ!」

「ライトニング・サンダーフォース!」

「ポルカニック・ファイヤー!」

「ボルティック・サイファーショック!」

「スゲェ!とても俺たちが踏み込める領域じゃねぇ!」

「どう見てもただ伎名叫んでるだけにしか見えねーがな」

「何言ってんだ、ビームバンバン撃ちまくってるじゃねーか」

「ハァ…ハァ…これでは一向に決着がつかん」

「そりゃそうだろ」

「互いの力は互角というわけか」

「いやそういう問題じゃねぇって」

「よし、ならば我が最大の拳で一気に決めてやる!」

「こい!」

「おい、どこに行くカラス」

「ちょっとトイレだよ」

「トイレはそっちじゃねーだろ?」

「悪いが俺は、ごっこ遊びに付き合ってるほどの暇はねーんだよ」

「まあ見てろよ、ここからが面白ェんじゃねーか」

「大いなる聖戦があるって聞いてきたのに、ファイナルショーがごっこ遊びじゃ割に合わねぇだろ。せめて派手に殴り合ったりしてほしいもんだ」

「なるほど。伽楼羅、ウォーミングアップはそのくらいにして、そろそろ本気と行こうぜ」

「えっ、今の準備運動だったの!?」

「割と本気だったんだけどなぁ。止むを得ん、ガルーダ、貴様接近戦は得意か?」

「実を言うと、俺は魔術同士の戦いよりも肉弾戦の方が得意だ」

「ぬふん、俺もだ」


 伽楼羅と飛龍頭は互いに力の限り殴り合った。


「ハァ…ハァ…まだ続ける気かワイバーン」

「それはこちらのセリフだガルーダ。もう随分とホーリーランスが弱まってきているではないか」

「貴様とて同じであろう」


 その時、飛龍頭のケータイが鳴り始める。


「何用だグリフォン、俺は今忙しい」

「退きなさいワイバーン、今はガルーダの相手をしている場合ではありません」

「なんだと?貴様、まさか我らの目的を忘れたわけではなかろうな」

「忘れてなどいませんよ。ただ今は一刻を争う事態なのです。やつが動き出しました」

「なに?やつが!?」

「すぐに戻りなさい。お前にはやつの行動を探ってきてもらわなければならない」

「……わかった」


 飛龍頭はケータイを閉じる。


「おい翼人兵共!いつまで寝ているつもりだ!」


 白服たちが仲間を支えながら次々と起き上がる。


「こ、皇帝!」

「何が皇帝だ、貴様ら揃いも揃って相変わらず情けない。とっとと車に乗れ!」

「は、ハイ!」


 白服たちは車に乗り込む。


「ガルーダ、残念だが勝負はお預けだ。だが決して見逃してもらえたと思うな。プリンセス・リンダに仕えしもう一人の翼も、いずれ貴様を殺しに来る」


 飛龍頭も車に乗り込み、白い車の軍団はさっそうとその場を離れて行った。


「プリンセス・リンダに仕えしもう一人の翼……そいつも森羅万象の二枚羽の一人ってことか。

「グリフォン。そいつもまたワイバーン同様、この俺に勝るとも劣らんほどの力を持った強敵だ」

「クッ…クッ…クッ…まだまだ楽しい事は終わりそうにねぇな」

「翔さーーん!」

「和馬、お前らも」


 和馬とLR達が伽楼羅と翔に駆け寄る。


「なんとか足止めできました!で、敵は……」

「今宵の聖戦はここで終いだ。帰るぞ、和馬」

「えっ?は、はい」


 和馬たちが車に乗り込む。


「おい伽楼羅」

「レイヴンはどこへ行ったのだ」
 
「カラスはいつでも、お前らの傍にいる。今度は忘れずに誘ってくれよ、陛下」



~翔の白いワゴン車の中~


翔「伽楼羅、七色の派手な服を着た男を知ってる?」

伽楼羅「七色の服を身にまとった男だと。はて、身に覚えがないな」

翔「そっか、ならいいよ」

伽楼羅「その男がどうかしたのか?」

翔「実は俺、2年前からずっとその男を追っていてね。お前たち万色の四枚羽根の監視と同時進行で。んで昨日の夜、その男が黒ずくめの男たちを引き連れて俺の前に姿を現したんだ」

伽楼羅「黒ずくめ?翼人兵ではないのか。」

翔「その辺は伽楼羅の方が詳しいんじゃない?」

伽楼羅「白い翼の翼人兵たちが白服として現れたということは、その黒づくめの男たちは黒い翼を持った翼人兵…いや、そんなやつらは存在しないはず」

翔「そんな雑魚供のことなんて興味ないけど、やつらとの関係がないとも言えないよね」

伽楼羅「確かに部下を引き連れていたのならば森羅万象の二枚羽根との関連性がないとも言えんな。だが白服ではなく黒服というのが気がかりだ……。それにやつらの仲間に『七色』というキーワードを持つ男など聞いた事もない」

翔「白服が翼人兵なら、グレタガルド的に言ったら七色の翼とか」

伽楼羅「七色の翼か……グレタガルドに生息する生物の中にその特徴を持つ生物がいるにはいるのだが、その者は人間なのであろう?」

翔「やつは『コカトリス』と名乗っていた」

伽楼羅「やはりコカトリスではないか」

翔「知ってんの?」

伽楼羅「コカトリスは強力な眼を持っており、見られただけで生物は死んでしまうほか、身体には毒を持っており、吐く息で植物は枯れるというバジリスクによく似た特徴を備えている。その姿は、雄鶏の身体に蛇のような尻尾が生えた姿をしている」

翔「七色どころか翼とか関係ないじゃん……」

伽楼羅「私の確かな記憶によればコカトリスというのはそういうやつなのだ」

翔「はぁ……伽楼羅に聞けば何かわかると思ったんだけどなぁ。……仕方ない。伽楼羅、今日もうちょっとだけ時間借りられるかな」

伽楼羅「よかろう。考えてもみれば姫は無断外泊をするなと言っただけで、早く帰って来いとはおっしゃっていなかったのだからな」

翔「屁理屈もうまくなったね」

伽楼羅「世辞はいらぬ、俺に何をしろというのだ?」

翔「伽楼羅に見てもらいたいやつがいる」

伽楼羅「見てもらいたいやつ?」


~鳳家(兄)~


翔「ようこそ、鳳家へ」

伽楼羅「ほう、ここが貴様の現世においての城ということか。そういえば地下にある大きな若者たちが集う踊り場があったな」

翔「ヘテロのこと?あっこは前戦指令室みたいなもんだから」
伽楼羅「そうであったか。しかし生意気に我が城より大きくこじゃれているではないか。相変わらず貴様には主君の顔を立てようという心構えはみじんもないようだな」

翔「そりゃどうも」

伽楼羅「妹と別居しているというのは誠であったのだな。ファルコンの記憶によれば、貴様の妹の家は風見ヶ丘のマンション……」




伽楼羅「ん?風見ヶ丘のマンション?知らん。ファルコンはそんなところには行っておらんはず……」

翔「どしたん伽楼羅」

伽楼羅「いや、どういうわけか最近、覚えているはずのない記憶が私の精髄を通して記憶領域に入ってくるのだ。そうだ、そう言えばあの時も……!」

(回想)

少年「おねえちゃんしましまだね!おねえちゃんしましまだね!」

美咲「ひやあああっ!えええっ!?だめーっ!

だだっ、だめっ、やあめてえーっ!」

(回想終了)

伽楼羅「(なぜ小鳩様の光景が美咲様と重なって見えたのだ。あの時に至っては誰の記憶なのかさえ分からない。いや、そもそも誰の記憶でもない。姫にもしそんなことが起こったのであれば、この俺が忘れるはずないではないか。するとやはりただの幻覚……。もしそうだとしてもなぜあんな幻覚を見てしまったのだ。)」

翔「伽楼羅」

伽楼羅「ん?」


 伽楼羅が顔を上げるとそこは既に扉の前だった。


翔「入るよ」

伽楼羅「あ、ああ」

翔「ただいま」


 翔が扉を開ける。


?「おかえりカーくん!」


 紅い瞳の少女が翔を出迎える。


翔「だから……人前でその呼び方止めてくんない?」

?「あ…お客さん……?」

翔「ああ、とびっきりのスペシャルゲスト。我が友ガルーダ・ダークブラック、またの名を伊丹伽楼羅だ」

伽楼羅「おっ」

?「っ……」

翔「おい、自己紹介ぐらいしろよ。こいつは俺の主君でもあるんだからさ」

琴美「澄音琴美です……」


 琴美に合わせて伽楼羅も軽く会釈する。


琴美「どうぞ、上がってください」

翔「悪いね、あいつ俺以外には懐かないんだよ」

伽楼羅「俺に見てもらいたいやつとは彼女のことか」

翔「そっ。どう?なんか感じる?」

伽楼羅「彼女のホーリーランスは常人のそれを明らかに凌いでいる。我々と同じ、ただの人間ではなかろう」

翔「やっぱりか」

伽楼羅「ただ貴様の言うコカトリスという男との関連性はつかめない。それに彼女はグレタガルドの人間ではない」

翔「じゃあドルガタレグとか?」

伽楼羅「いや、あのタイプのホーリーランスはグレタガルドとドルガタレグのどちらにも該当しない。」

翔「そっちの世界って、その2国しか国ないの?」

伽楼羅「ないこともない。例えば、グレタガルドの真西に位置する小さな国がある。彼女はその国の住人かもしれん。はて、なんという国だったか……」

翔「何とか思い出せない?」

伽楼羅「ん~……私とてグレタガルドにいた頃の記憶すら完全にとどめているわけではないからな。その上他の国のことまで聞かれても……」

琴美「すみません、お茶でいいでしょうか」

翔「ああ大丈夫大丈夫。こいつなんでも飲めるから」

琴美「へっ?」

伽楼羅「おい!」

翔「だって伽楼羅、ムコウにいた頃ワニと一緒に川の水飲んでたんでしょ?お前なら下水でも飲めそうじゃん」

伽楼羅「貴様主君をなんだと思っておるのだ!」

琴美「あのぅ……」

伽楼羅「おっと、これは失敬」


 伽楼羅は琴美の持っているお盆の上から麦茶を取り、琴美は翔に水を出す。

 琴美は会釈して台所へ戻っていく。


伽楼羅「美しいな……」

翔「は?」

伽楼羅「彼女、どこかの国の姫君ではないだろうか」

翔「ハッハッハッ!ないない。伽楼羅、それ真面目に言ってんの?冗談でしょ」

伽楼羅「俺が冗談など言える男に見えるか?」

翔「そりゃまぁ信じらんないけど」

伽楼羅「フェニックス、俺はまだ貴様から肝心なことを聞いておらん。彼女といつどこでどのように出会った?」

翔「……あれは、ちょうど2年前の同じ時刻だった。柳木原の未開発地区で俺たちYFBが屯していると、俺は黒づくめの男たちが一人の少女を追いかけているところを目撃した。好奇心に駆られた俺は、先回りしてやつらが追っている少女に逢いに行った。その少女が澄音琴美。そして俺は、そこであの男と出会った」

(回想)

?「貴様、やはり生きていたのだな。フェニックス・フレアゴールド」

翔「なぜその名を!?俺をフェニックスと呼ぶのは伽楼羅だけだ。なぜ貴様がその名を知っている!」

?「クックック……ガルーダ・ダークブラックか。貴様はやつの復活を心待ちにしているようだが、貴様がどれだけ待ち続けてもやつが蘇ることはない。なぜだか分かるか?」

翔「なに?」

?「やつの体は今、3つの異なる人格によって支配されている。その3つの人格が誕生したことによって、ガルーダは奈落という魂の牢獄に縛られることとなった。だが、やつを蘇らせる方法が一つだけあるとしたら?」

翔「あるのか!伽楼羅を目覚めさせる方法が」

?「教えてやろう。今やつの体を支配している3つの人格の内いづれかから、怒り感情を呼び覚ますのだ。」

翔「怒りの感情だと……」

?「やつの存在意義は憎悪と怨嗟。即ち『誰かをやっつけてやりたいと思う心』。ホーク、イーグル、ファルコンの中に眠るそれと同じ感情を呼び覚ませば、自動的に肉体が伊丹伽楼羅という存在を必要とし、奈落に大いなる風が起こりガルーダは再び玉座を掌握することができるというわけだ。さあ、得になる情報を提供してやったのだ。澄音琴美をこちらに渡してもらおうか」


 翔が後ろの琴美に目を向ける。


翔「お前の名前か。……琴美、俺の一部になれ。俺から決して逸れるな」

琴美「えっ」

翔「お前は伽楼羅と同じだ。争いの火種を生んでくれる!」

?「……殺れ。」


 黒づくめの男たちが翔に殴りかかる。

 翔は男たちを蹴り、殴り倒す。


?「ふん、馬鹿め。元々貴様も我らにとって邪魔な存在なのだ。その小娘はとりあえず貴様にくれてやろう。次に会ったときは必ずやその翼むしり取ってやる。せいぜい蹴爪でも研いでいることだな。我が名は『コカトリス』不死鳥に死を与える者だ。しっかりと己の歴史に刻んでおけ」


 コカトリスと名乗る男は翔と琴美に背を向け歩き出す。


翔「待てよ」


 翔はコカトリスに殴りかかり、コカトリスは飛んできた翔の拳を受け止める。


翔「俺の名も貴様の歴史に刻んでもらおうか、鳳翔という名を!!」

(回想終了)

伽楼羅「貴様は意図的にファルコンを煽り立て、余の復活を企てた。そのための条件をなぜ貴様が知っていたのかと少し疑問を感じていたが、そのコカトリスという者から教えられたのか」

翔「やつの言ったとおりにやったら本当に伽楼羅が出てきてくれたから、正直やつにはお礼の一つでも言ってやりたいぐらいだ」

伽楼羅「しかし、何故その者は俺の秘密を知り、彼女の命を狙っているのだ」

翔「それが分かんないから伽楼羅に聞いてんじゃん」

伽楼羅「彼女の身内は?」

翔「殺られたらしいよ、やつらに二人とも」

伽楼羅「そうか……では貴様は彼女の親代わりになったというわけか」

翔「まあそういうことになんのかな。最初はアイツのこと、やつをおびき寄せるための餌としか思ってなかったけど、家のこと全部切り盛りしてくれるし朝飯も作ってくれるし、いつの間にかこの俺でもアイツにだけは頭が上がんなくなってたわけよ。実際、アイツの方が俺の保護者みたいな感じになってんだよね」