本を読むとはどういうことか。自己紹介の場で「趣味は読書です」と言う人がいる。世間一般では通じるので、それはそれでいいのだが、私は少々違和感を持っている。
そもそも読書というのは小説を読んだり、参考書や解説書を読んだりと射程が広い。例えば私はアート鑑賞が好きなのだが、アートについてもっと知りたいがため美術書を読むことがある。この場合、本は手段でしかない。手段としての読書である。これは読書好きとはいわない。
他の例をあげれば私は政治学について、あれやこれや考えることが好きで、YouTubeや SNSからも情報を得るが、やはり本も欠かせない媒体である。政治学を専攻していた学生時代を思い出すが、これも本が好きなのではなく勉強のために必要だから読んでいるだけなのである。
なので読書が好きとある人が発した場合、私は「本でしか得られない要素を愛しているかどうか」を見極めたい。小説が好きといっても、話を聞いていくと単に面白い物語が好きなだけということがある。それであれば映画やアニメーションで代用できる。そうではなくて、例えば本の主役である文章でしか味わえない美しい情景描写や深い心理描写。巧みな言葉の扱い方といったもの。これらが好きなのかどうか。
私も読書好きを宣言することに自信がないが、単行本でじっくり書物をめくっている時間が好きである。文庫は嫌いだ。
とはいえ、読書が好きという言葉に対してそこまで考えるほど暇な人はいないので、大人しく世間に従おうと思うが、せめての抵抗で私は読書好きとはいわず、趣味を聞かれた際は「文学鑑賞」という言い方にしようと思う。