東京生まれ、東京育ちの僕が
北海道で獣医になろうと思ったのは
高校時代のホームスティで羊の出産を手伝ったのがきっかけだった。
生まれたばかりの、濡れた、小さな命が
懸命に立とうとしている、生きることに必死になっている
その光景が忘れられなかった。
まだまだ研修医の出来ることは少ない。
昨日は交通事故にあった猫を死なせてしまった。
そんな日は下宿に帰ってもぼんやりして何も食べたくない。
一人の身軽さで
気づくと一日コーヒーしか飲んでないこともあったりして
こういうのって自由っていうのかな。
「嫌になっちゃうな…。」と思わずつぶやいて
苦笑した。
生き物は生まれるし死ぬ。
獣医はそういうことに慣れていかなくちゃいけないんだけど
僕にはまだまだ勉強が必要だ。
久しぶりの休みに
思い切って羊が丘公園に来てみた。
湿度のないさらさらした風が吹く。
今頃東京はアジサイが咲いて雨が降り
じめじめした身体にまとわりつく空気なんだろう。
空が高い…。
東京にもずっと帰ってないな
胸がちくりと痛んだ。
羊と雲が良く似てる
ふわふわしてる
東京の動物園に羊いたっけ?
動物園に行こうっていったのは僕のほうだっけ?
胸が痛いのは
ごめんを言えてなかったからなのかな。
それとも
僕が淋しいからなのかな。
羊と雲が良く似てる。
ふわふわしている。
ふわふわしたものが走ってくる
羊かな?
違う
ふわふわした髪型はそのまんまで
笑顔もそのまんまで
違うのは
あのころは僕の後ろを歩いていたのに
今日は僕に向かって走って来てくれている
きみ